表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旭川ダンジョン対策班、出動! ――水が消える川と時代変化ダンジョンを攻略せよ  作者: 戌葉
第2章 異常空間内部調査結果 ―探索者・黒瀬
PR
5/37

2-2 ドローン調査

 ダンジョン探索二日目は、ドローンを投入して、地図作成だ。

 飛ぶモンスターもいなそうなので、壊されることもないだろう。


「おはようございます」

「来たのか」

「現場責任者ですので」


 律儀に顔を出すとは、本当に仕事熱心だ。だが、その熱心さで現場をかき乱さないでほしい。

 歓迎されていないと思ったのか、三浦は声を落として、聞いてきた。


「あの……、オフレコで、正直ベースで聞きたいんですが」

「なんだ?」

「こういう場合、いたほうがいいんですか? いないほうがいいんですか? 異常空間対策庁っていつもどうしてます?」


 ぶっちゃけすぎだろう。

 昨日のダンジョン探索で、信頼を勝ち得たのだと安堵するが、さすがに気の毒になってきた。

 何も知らずに現場に放り込まれれば、無理もない。

 向こうは川の専門家で責任者。こっちは民間大手のダンジョンのプロ。むしろ向こうのほうが、やりづらいだろうな。


「状況による、としか」

「ですよね……。お手伝いできることありますか?」

「今日はドローンで地形を見る。ダンジョンの全体の地形が、夕方には報告できると思う」

「ドローン、中で使えるんですね。すごいなあ。それって見せてもらえますか?」


 反応が、完全に素人だ。


「残念だが、ドローンの映像は、中でしか見られない」

「え?」

「ダンジョン内の電子記録は、持ちだしたら消える」

「消える?」


 驚きすぎだろう。口を開けたまま、固まっている。


「昨日スマートフォンで撮影しようとしていなかったから、知っていると思っていた」

「あれは、ここが機密事項だからです。流出すると大変なので」


 なるほど。とてもお役所らしい理由だ。


「となると、カメラ貸与の申請は取り下げか」


 ひとりごとをこぼしたが、中を撮影する気だったのだろう。無駄足にならなくてよかったな。


「まあ、そういうことなので、夕方口頭で説明する。しばらくは、地図作りだ」

「分かりました。簡単な測量ならできますので、必要でしたら手伝います」

「……そのときは頼む」


 通常ダンジョンで精密な測量など行わないが、この技官ならやりそうだ。


「では、16時ごろプレハブでいいですか?」

「ああ」

「市の高原さんにも連絡しておきますね」


 もう少し調査したい気もするが、公務員に残業させるわけにもいかない。

 午後4時までに戻ってくるようにしよう。



 ダンジョンに入ると、やはり石門は苔がついていない。


「相良、さっそく頼む。昨日の見晴らしのいいところから、飛ばそう」

「了解」


 相良がドローンを準備し、上空へと飛ばした。みなで映像をのぞき込む。


「南が海、北が陸、ここは沿岸だな」

「どっちに行きますか?」

「海で」


 ドローンは海の上を飛んでいく。穏やかな海に、緑の島が浮かんでいる。


「モンスターはやはりいないか」

「低く飛ばせば、あるいは」

「必要ない。いまドローンを失うわけにはいかない」


 海の中のモンスターが飛び出してきて、ドローンを落とされてはたまらない。

 だが、海は凪いでいて、平和そのものだ。モンスターの出てくる気配もない。


「引き返します」

「大体島までの半分くらいか?」


 海の真ん中で、ドローンが回転して周囲を映すが、ざっと見て陸と島のちょうど真ん中くらいだろう。

 島までいけば、帰ってくるバッテリーが足りなくなる。


「起点より南に5キロまで調査。引き返す。約10キロに大きな島。手前に見えるものはなし」


 相良のポイントごとの報告を、田嶋がスケッチブックに書き写す。


「ここは、本当になんなんだ?」

「平穏なのが……不気味です」


 普通ダンジョンは、なにかしら引っかかるところがあり、それが隠れモンスターを探し出すための鍵だったりもする。けれどここは、引っかかりが何もない。まるで、映画の舞台セットに紛れ込んだような、自然だが不自然、というなにかがしっくりこない、そんな空間になっている。


 戻ってきたドローンを回収し、バッテリーを取り換えてから、今度は陸側へ向かわせる。

 陸の上を20分ほど飛ぶと、山の上空に着いた。


「起点より北に3キロのところに山。高さは300メートル弱。その間は平地」

「このまま山の上を東に飛んで、戻ってきてくれ」

「了解」

「戻ってきたら昼休憩にして、午後は二回飛ばそう」


 今日一日は、ドローンの画面を見るだけの、地味な調査日だ。

 世間では、探索者と言えば、高額なドロップを手にして成り上がる派手なイメージがあるが、実際はこういう地味な作業が多い。

 派手に稼ぐためには、地道な準備が重要なのに、最近は勘違いしている者が多くなった気がする。

 それは、こういう内部の映像が一切外に出ないから、というのもあるのかもしれない。武勇伝ばかりが独り歩きする。


 午後は、東と西にドローンを飛ばした。

 その最後に、相良が気になることを言った。


「ちょっと、地形が変わっている気がします」

「どこだ?」

「このあたりですが、朝は海だったような……」


 朝、南に飛んだときに少しだけ見えていた辺りの地形が変わっているという。

 田嶋がダンジョン内でしか見られない朝の映像をタブレットに映して見比べるが、遠くに少し写っているだけなので、よく分からない。


「今日は時間がない。継続調査にしよう」

「はい」


 そしてダンジョンを出るときに石門を見ると、やはり苔が生えていた。

 時間で何かしら変わっているのは間違いない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ