4-1 夜間現代層突入
ダンジョンに入り、森の中で待機しているが、こういう日に限って、なかなか現代層にならない。時代が揺らいでいる。
出だしでつまずくと、すべてが上手くいかないような気がしてしまう。
頭を振って、嫌な考えを追い払う。
「黒瀬さん、ダンジョンコア、破壊したことありますか?」
「ない。だが破壊の手伝いをしたことはある」
「ダンジョンが崩れるって、どんな感じなんですか?」
「そこは建物の中のダンジョンだったから、天井が崩れてきたな」
「ここってどうなるんでしょうか……」
嫌な予感しかしない。大洪水だろうか。
どうやって入り口まで帰ればいいのか、考えるのはやめておこう。
「僕って、来る必要ありました?」
「まあ三浦が現場責任者だし? 命令書受け取っただろう?」
「足引っ張る気しかしないんですが」
「放流とか、俺たちじゃ決められないからな」
上に行けと言われたら行くしかない。公務員になった以上仕方がない。
「変わったな」
「はい」
完全に現代層に変わった。時間がかかったのは、外の雨の影響だろうか。
「こちらダンジョン班。現代層に変わりました。攻略開始します」
『本部了解。健闘を祈る』
しかし、山を下りてすぐ、異変に気付いた。
ヌートリアが大量発生している。
「まさか、ここにきてモンスターか? なんだあのでっかいネズミは!」
「ヌートリアです! 堤防の敵です!」
「やばい、用水路から水があふれてる」
こんな数、現実じゃありえない。ダンジョンが増やしているとしか思えない。
そのヌートリアが、田んぼの畔や用水路の護岸を削って崩している。
「まて、そこの護岸を壊すな! そこ重要なんだよ! あっ!」
「洪水発生。下がれ!」
いつもより用水路の水位が高いので、ヌートリアのせいで、あちこちで水が道路にあふれている。
「邪魔!」
そう言いながら、黒瀬が剣でモンスターを切ると、光になって消えた。
そういえば、黒瀬たちは探索者だった。武器を持っているところを見たことがなかったので忘れていたが、装備していたのか。想定外の事態だが、心強い。
洪水から逃げていると、何かが肩に当たった。
「うわっ」
「三浦!」
「大丈夫です!」
飛んできたヌートリアだった。当たったのはもふもふの身体だったので、怪我はない。
だが、ヌートリアって、こんなにアクティブでアグレッシブだったか? 宙を飛ぶヌートリアなんて、現実では見たことがない。
相良が、銃を構えて一匹ずつ撃っているが、多すぎて減っているように見えない。ここにきて相良がスナイパーだと初めて知ったが、驚く暇もない。
「モンスターっていうか……ただの害獣だろ、これ!」
「なんで今日に限って!」
「外の雨か?」
こちらを狙っているのではなく、田んぼの畔や護岸を壊しているので、現実の害獣の再現だ。
用水路があちこちであふれているので、なかなか進めない。
「ドローンを上げている余裕がない!」
「戦闘は任せてそっち優先しろ」
「下手に出せば、ヌートリアに壊される」
「水はどっちに行くか分からん!」
「左へ! その先しばらくまっすぐ。それから右!」
頭の中に地図を浮かべながら、道案内をする。このあたりは江戸層で何度も見たから、あふれた水がどこへ流れるかはだいたい分かる。
護岸がしっかり整備されても、水の流れはそんなに変わらないはずだ。
「三浦ちゃん、右はあふれてるよ?」
「少しだけです。越えられます!」
「信じるから!」
水のあふれていない道がないのだ。道路が濡れているだけなら、突破できる。水たまりを踏まないように、飛び越えていくしかない。
さらにそこに、ヌートリアのもふもふアタックがくるのだ。うっとおしい。
「次はどっちだ?」
「まっすぐ!」
とにかく進むしかない。時計を見ている余裕がない。
「こちらダンジョン班。異常事態発生。用水路からの越水、ヌートリア大量発生につき、時間通りに児島湾に到着できるか不明!」
それだけ無線機に叫んだ。なにか応答は返ってきたが、聞く余裕がなかった。




