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旭川ダンジョン対策班、出動! ――水が消える川と時代変化ダンジョンを攻略せよ  作者: 戌葉
第3章 河川管理上の支障認定 ―河川安全事務所・三浦
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3-13 決行準備完了

 急遽決まった夜間攻略の日だ。

 外では、雨が本格的に降っている。久しぶりの雨だ。水量が増えて、河川安全事務所はピリピリしている。

 ただ、晴れよりは、避難指示を出しやすい。それだけは助かった。


 対策本部となる会議室には、大型モニターがいくつも並び、水位計の値やダム、水門の様子などが映されている。


 そこに集まった自治体、河川安全事務所、そしてフロニクス社の関係者のあいだには、どこか冷めた空気が流れている。

 タイミングはこちらに任せると言っていたのに、異常空間対策庁に押し切られたからだ。

 しかも、昨日の今日だ。本部の設置すら、まだ現在進行形で進められている。


「ダンジョン番号三十一、旭川ダンジョンの破壊を命ずる」


 異常空間対策庁の担当者が運んできた命令書を受け取った。受け取りたくなどなかった。けれど拒否権はない。

 命令書に続いて、黒瀬にハンマーが渡された。


「それってなんですか?」

「コアを破壊できる武器」

「特殊な金属でできてて、異対が管理している」


 こっそり黒瀬に尋ねると、コアが簡単に破壊できるハンマーだと教えてくれた。異常空間対策庁が管理しているらしい。と言っても、黒瀬も見るのは初めてだそうだ。


 これでコアにたどり着きさえすれば、コアを壊すことは可能だ。

 夜に向けて、相良と田嶋が宝珠を回収してくれている。


 だが、干潮から、時代がリセットされて宝珠が龍ノ口山に戻る日の出まで、10分程度しか猶予がない。

 その時間内に小舟に乗ってコアのもとまで行き、破壊しなければならない。


 しかも現実世界ではかなり雨が降って、増水している。ダンジョンの破壊で大量の水が流れれば、越水するかもしれない。

 ダンジョンが吸ったと思われる水の量だけなら、シミュレーションでは問題なく児島湾に排水できるはずだが、計算どおりにいくとは限らない。

 決して、準備万端ではない。

 それでもやるしかなかった。



 会議室を出ようとしたときに、本部に駆けつけてきた高原の姿が見えた。


「よかった。間に合いました……。皆さん、気をつけてください」

「高原さん、大丈夫?」

「大丈夫です。皆さんに比べたら、住民からの文句なんて……!」


 目の下に隈ができている。昨日の会議後から避難指示の予告をしていたので、市民からの苦情の対応に追われているのだろう。昨日から、ほとんど寝ていないのかもしれない。


 その避難指示は、自分の行ったシミュレーションに従って出された。

 これで計算が間違っていて空振りだったら、と思うといまから胃が痛い。高原たちが浴びた苦情も非難も、すべて無意味なものになる。


「荒手で工事をするから、少しの水の増量でも危険があるってことにしてるんですよね?」

「はい。工事がなんで夜なんだとか、梅雨が明けてからでもいいだろうとか、いろいろと……」


 ダンジョンは存在自体が伏せられているため、本当のことが言えない。だから工事ということになっているのだが、当然納得してもらえない。

 市役所には苦情の電話が鳴りっぱなしだそうだ。


「児島湾の干潮の時間との調整で、どうしてもこの時間なんですって説明してます。これだけは嘘じゃないから」

「ありがとうございます」


 ダンジョンの最前線にいるのは黒瀬たちだが、住民との最前線にいるのは高原たちだ。

 それだけでなく、ダムの放水量の調整など、多くの人が流域の安全のために、力を尽くしている。


 河川に携わる者のプライドにかけて、ダンジョンによる洪水は起こさせない。

 そう心に固く誓った。


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