3-11 コア発見
小舟は音もなく進み、岩の前で止まった。
田嶋はカメラを構え、相良は地上から3メートルくらいのところからドローンで撮影している。
「これから、台座に玉を置くぞ」
大声で話せば届く距離だ。
固唾をのんで見守る中、黒瀬が宝珠をそっと台の上に乗せた。
だが、何も起きない。
他にも必要なものがあったのか?
そう思い始めたころ、台座の土台の部分が淡く光った。
どこかでガシャンという音がした。
「コアが現れた……」
浜からは見えないが、青い光が下の方向から黒瀬の顔を照らしている。
「記録したか?」
「ドローンが落ちました」
その声に相良のほうを見ると、浜に落ちたドローンが見える。さっきのガシャンという音は墜落したときの音だったようだ。
「田嶋?」
「撮りましたが、撮れているかは分かりません」
デジカメの画面がうまく映らないらしい。コアの波動が干渉しているのだろう。
「じゃあ、玉を取るぞ」
黒瀬が台座から宝珠をそっと外すと、青い光は弱くなっていって、やがて消えた。
ほっと息を吐いて、かなり手に力が入っていたことに気づいた。
波の音しかしない中、遠く、操山や龍ノ口山を見る。
コアが見つかった。
胸に湧き上がったこの感情は何だろうか。
しばらくみな無言だ。
「なあ、これ、どうやって帰るんだ?」
岩の前で動かない小舟の上から、黒瀬が叫んだ。
「潮が満ちてきたら、あの舟戻ってきますかね?」
「……」
隣の田嶋に話しかけるが、返事はない。
あの小舟には動力がないので自力で進めない。いい案が思い浮かばない。
「田嶋、受け取れ」
そう言うと、黒瀬は宝珠をこちらに向かって、思いっきり投げた。
すると、小舟は珠を追うように、陸地に向かって進み始めた。
まさかの腕力で解決とは。
「三浦のおかげだな」
「え? 僕何かしました?」
「投げて乗せるのかって言っただろう。だからその逆を試してみた」
戻ってきた黒瀬が笑っているが、ずいぶん大きな賭けだ。取り残されたらどうするつもりだったんだろう。
「考えたって、どうにもならないときはならない」
「でも、舟が消えて水面に触れて、どこかに飛ばされたりしたら」
「ダンジョンでは、直感が大切なんだよ」
いままでそうやって切り抜けてきたのだと、黒瀬は笑った。
小舟は浜について黒瀬が降りてからも、そこに止まっている。田嶋が宝珠を持って動くと舟も動くので、追いかけているのは間違いない。
「私も行きたいです!」
「どうする?」
「……許可したくありませんが、ここまで協力してもらいましたので。三人で行けますか?」
「まずは相良と行くか」
必ず無事に帰ってこられる確証がないのだから、行かせたくはないが、ここまで協力してもらっている。見たいという願いを無下にもできない。
黒瀬と相良の二人、自分を合わせて三人で岩までの往復を確認してから、やっと黒瀬が白石を乗せた。
白石とともに乗り込んだ小舟は、ゆっくりと岩に向かって進む。
そして、黒瀬が台座に玉を乗せると、台座の下の岩が、少しずつ消えていき、コアが見えるようになった。最初からそこにあったのに、岩に隠されていた。
「これが、コア……」
岩に空いた穴の中、半分水の中に沈んでいる。
大きさは、バスケットのボールくらいだろうか。青くてきれいなのに、水で揺らいで、どこか不安になる輝きだ。思わず、チェレンコフ光を連想してしまい、頭を振って追い出した。
「ダンジョンコアって、みんな光っているんですか?」
「俺も何個かしか見たことがないが、光ってるな」
「簡単に壊せそうですね」
「普通のダンジョンは壊せないように、異対が対策してる」
ダンジョンは、言うなればレアメタル鉱山だ。勝手に壊されては困るからだろう。
「朝になったら、異常空間対策庁にコア発見の報告をします」
「頼む」
やっと、やっとここまでたどり着いた。
そういえば、白石が大人しい。もっと叫ぶかと思っていたので不思議に思って見ると、狭い小舟の上で何とか台座や岩を見ようと、背伸びしたりしゃがんだりしていた。
「白石さん? どうしました?」
「鱗はどこですか? 龍神さまの鱗です。見つけられない……」
ああうん、そうだった。白石は龍神推しだった。見たかったのはコアではなく、鱗のほうだったのか。
「ないな」
「そんな……。ここまで来たのにー!」
久しぶりに白石の叫びを聞いた。




