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旭川ダンジョン対策班、出動! ――水が消える川と時代変化ダンジョンを攻略せよ  作者: 戌葉
第3章 河川管理上の支障認定 ―河川安全事務所・三浦
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3-2 自治体との臨時会議

 翌日の会議は、いつもの自治体の河川関連メンバーでの開催だった。ただ、いつもと違うのは、そこに相良とフロニクス社の岡山支社長がいること、そして白石とその担当教授がいることだ。


「昨日の旭川の水位上昇について、河川安全事務所より説明をお願いします」

「4月3日、旭川の荒手に、ダンジョンが発生しました」


 上司の発言に、ざわめきが広がる。だれかの「そんなに前だったのか」という声が聞こえた。


「河川安全事務所では、異常空間対策庁の依頼により、市役所の土木課、ダンジョン探索会社のフロニクス社と協力して、ダンジョン内部の調査を進めてまいりました」


 いつもはいない相良たちに視線が集まる。

 上司は資料に従って、淡々と説明を続けた。


「ダンジョンが昨日吐き出した水は、発生以来取り込んだと思われる水の総量と、ほぼ一致します」

「予兆はなかったのですか?」

「ありませんでした。異常空間対策庁にも逐次報告しておりますが、注意喚起等はなく、予測は不可能でした」


 市長が先に可能性だけでも知らせてほしかったと言っているが、想定外だったのだ。

 水を吸うダンジョンという前例がないものが相手なのだ。


「もっと増員できないのか?」

「フロニクス社との契約は、異常空間対策庁が行っています。現場から増員の要望はあげてはおります」


 あげているのだが、モンスターがいないダンジョンに対して、異常空間対策庁は追加予算を払う気はないらしい。


「いつ調査が終わる?」

「それに関しては、フロニクス社よりご説明をお願いいたします」

「現在調査は進めておりますが、まだ当分かかる見込みです。このダンジョンは通常のダンジョンと異なるため、難航しております」


 黒瀬がいれば話したのかもしれないが、まだダンジョン内だ。


「なぜだ? 通常は一ヶ月もあれば調査は終わると聞いたが」

「それは通常のダンジョンの場合です。コアに近づくほどモンスターが強くなるため、だいたいの方向が分かるのですが、このダンジョンはいません。コアを探す手がかりが少なすぎます」


 モンスターがいないから危険がない。だから要員追加が認められない。

 モンスターがいないからコアの手がかりがない。だから要員を追加してほしい。


「ならば増員してでも早く見つけるべきでは?」

「公開前のダンジョンに入るには、異常空間対策庁の許可が必要です。その許可が下りません」


 市長のため息が重い。


「ダンジョン内が岡山の地形の時代による変化を模しているため、郷土史の専門家の先生にもご協力いただいております」

「そうか……」


 手をこまねいているわけではない。やれることはやっているのだ。


「こちらから、異常空間対策庁に状況の説明をお願いしてみる」


 流域住民の安全がかかっているから、なんとか増員を認めてほしい。


「上流ダムの担当ですが、今後の放流の運用について、別途ご相談させていただきたい」

「お願いします」


 昨日は晴れていて、もともとの流量が少なかったから、持ちこたえられた。もし雨だったり、放流中だったら、越水したかもしれない。

 晴れ、放流なし、満潮でない、その条件が重なって、奇跡的に無事にやり過ごせたのだ。


「それで、このダンジョンから、レアメタルが採れる可能性は?」

「いまのところありません」

「児島半島へは行っていないようだが?」


 資料をぱらぱらとめくっている。自治体として一番気になるのは、そこだろう。

 レアメタルが出るかどうか、それがどんなものかは、今後を左右する。


「朝になれば退路が断たれる児島へ侵入するには、もう少し調査が必要です」

「それだけでも先に調べられないのか?」

「調査員の安全が確保できません。現在も、突然の増水で入り口が水没したため、ダンジョン内に当社の調査員が取り残されています」


 それを聞いて、レアメタル調査に前のめりだった自治体の関係者が、息を止めた。


「もう出入りは安全にできるのでは?」

「流された目隠しが今日にはできるとのことですので、工事が終わってから帰還します」


 昨日の事態で、荒手で水が渦を巻いている様子がネットに投稿されているいま、注目を集めたくない。


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