2-17 石碑
登山道を三十分くらい登ると、開けた見晴らしのいいところに出た。道はここまでだ。
「展望台か」
「瀬戸内海が見えますね」
「奥に何かあるぞ」
木に隠れたところに、何かがある。
相良と二人で警戒しながら進むと、そこには石碑と、そしてその横の小さな台座に水晶玉のようなものが置かれていた。
「これか」
「そのようですね」
「やっとだな」
これを見つけさせるための、道だったのだ。
石碑には文字が掘られている。古墳とは違う、人工的なものだ。ダンジョンが意図をもって用意したものだろう。
やっと、本当にやっと、ダンジョンの意思らしきものを発見できた。
「触れてみます」
「しかし」
「白石さんが大人しくしていると思えませんので」
「……そうだな」
きっと興奮して触りまくるだろうな。
それに、いつかは触れる必要がある。
「田嶋、聞こえるか」
『はい』
「石碑を発見。これから調査する。三十分待って連絡がなければ、ダンジョンを出ろ」
『了解』
相良がまず手持ちの道具で石碑と台座、そして玉に触れたが、何も起きない。
次に、素手で一つずつ触れていく。
「石碑、特に反応なし。台座、反応なし。玉、いきます」
「ああ」
少し震える指先で、相良が光る玉にそっと触れた。
「何も起きません」
ふうっとため息が出る。
「持ち上げます」
「頼む」
手のひらからはみ出るくらいの玉をつかんで持ち上げたが、何も起きなかった。
そして戻してみても、何も起きない。
「少しなら動かしても、問題ないようです」
「これは何かしら攻略への鍵だな」
その鍵は、この石碑にかかれている文字だろう。それには、白石が必要だ。
「異常なし。二人を連れてきてくれ」
『了解』
三十分ほどで登ってきた三人は、南を振り返り、そして感嘆の声をあげた。
「すごいです! 海が見えます!」
「あれが、児島ですね」
おそらくここから見渡せるどこかに、コアがある。でないと、この展望台の意味がない。
となると、やはりコアは南側だ。
「石碑っていうのは?」
「こっちだ。白石、出番だぞ」
「触れても問題ないことは確認してあります」
二人を石碑の前へと案内すると、案の定、白石が飛びついた。
石碑と玉の周りをぐるぐると回っている。
「ほんとに石碑だ! すごい発見ですね!」
「ということで、読んでくれ」
古文書のような書体で書かれているため、読めないのだ。
「えっと……」
しばらく石碑を見ていた白石は、内容を読み上げていく。
「日輪の子、光にて生まれ、影にて還る。だと思います」
「……意味は?」
「そうですねえ。太陽の子は、光にて生まれて、影にて還る、ですね」
「太陽の子はコアか……?」
コアの手がかりであってほしい。けれど、三浦は違う意見のようだ。
「光る球体ってことで、その水晶玉っぽいのじゃないですか?」
「じゃあ、コアはどこにあるんだ?」
「でもその水晶玉、龍神さまの宝珠みたいですよね」
そうだったな。お前は龍神推しだったな。
「つまり、石碑が他の場所にもありそうで、この玉はキーか」
一気にコアまでたどり着けるかと思ったのに、そう簡単ではなかった。
「潮満珠、潮涸珠という珠が神話に出てくるんですが、潮を満ち引きさせると言われています。それ関係ありますかね?」
「潮の満ち引きとなると、児島湾か」
いまは何でもいいから情報がほしい。
「影にて還るってどういう意味でしょう?」
「分からん。せっかく手がかりだと思ったのに、不親切すぎるだろう」
三浦は書き留めた文章を見ながら、推理している。
「日が当たらないと消える? あるいは日が当たらないと元に戻る?」
「日陰に置いてみるか」
玉をしばらく日陰に置いているが、何も起きない。
「となると、夜?」
「可能性はあるな」
だが、夜までここにいるわけにはいかない。
「そろそろ引き上げるぞ。百間川ができたら面倒だ」
「この宝珠、持っていきましょう!」
「ダメだ。明日、俺たちだけで確かめてみてからだ」
「なんでですか?」
「ここから持ち出したら何か起きる、そんな可能性だってある」
このダンジョンでは可能性が低いとは思うが、それでもギミックに油断は禁物だ。何をしてくるか分からない。
やるべきことは、玉の持ち出し可能範囲の調査、他の石碑の探索。
こんな調子で、コアにたどり着けるのは、いつになるのだろうか。
それでも、一歩進んだ。




