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旭川ダンジョン対策班、出動! ――水が消える川と時代変化ダンジョンを攻略せよ  作者: 戌葉
第2章 異常空間内部調査結果 ―探索者・黒瀬
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2-9 岡山城

 翌日は、山から北側に降りて、同じ方向に一周する。時間が変わると、モンスターが現れる、というようなことがあると困るからだ。


「三浦、悪いな。三人だとどうしても動きづらくてな」

「問題ありませんよ。一応責任者ですから」


 三浦は頭をかきながら笑っている。

 嫌味でもなんでもなく、本当にそう思っているのだろう。


 モンスターがいないとはいえ、まだよく分かっていないダンジョン内で単独行動はできない。

 だが、森の外の確認と並行して、時間による時代の特定をしたい。

 それで、三浦に助けてもらうことにした。相良と二人で、森からドローンを飛ばしての調査だ。

 森の、ドローンを飛ばす起点としているところは、ダンジョンの入り口から近い。そこなら、相良だけで三浦を入り口まで守って進むことができる。


 ドローンは、一時間おきに軽く飛ばす。

 チェックするのは、岡山城、百間川、海岸線の位置の遠景だ。

 この情報を渡せば、白石がだいたいの時代を割り出してくれるだろう。


「相良、何かあれば撤退。無線で連絡してくれ」

「了解」


 昨日と同じように、田嶋がロープを張って、降りる。今回は北側で、降りたところが湿地だ。


「全体的に、朝は水が近いんだな」


 田嶋がうなずくだけでしゃべらないので、独り言になってしまう。

 結局ぐるっと一周して元の場所に戻ったのは、午後2時だった。


「お帰りなさい。どうでしたか?」

「変わりはないな。これから昼だが、陸が見えるところに行って、食べながら、岡山城ができるところ見てくるわ」

「それ、すごく見たいです」


 自分で言っていて可笑しいが、どんなふうに出現するのか興味はある。

 だが、三浦を連れていくなら、別行動はできない。


「相良、行けるか?」

「行けます。次の観測は3時なので、間に合います」

「じゃあ、全員で行こう」


 以前に相良が見つけた市の中心地側に開けた展望のいいところに向けて進んだ。


「昨日、百間川が出現したときの話を相良さんから聞きました。4時半ごろですよね。そこが江戸中期ですね」

「岡山城は?」

「それより前です。岡山城を作るときに、旭川を西に動かしたので、それで洪水が起きるようになったそうです」


 見晴らしのいいところに着いたので、食事をしながら、三浦と話している。

 川に関する知識は、おそらく白石に負けないのだろう。

 岡山城も川に関わっているなら、コアの候補に入れておいたほうがいいかもしれない。


 しばらく取り留めのない話をしていると、風景の一部がふっと揺らいだ。


「始まったぞ」

「え? あれ、ですか……?」

「そうだ。見えたり、消えたり、時代が定まらない感じになる」


 岡山城が現れては、しばらくして消える。蜃気楼のようだ。


「川も動いていますね」


 岡山城に気を取られていたが、新たな流れができたり、消えたりしている。

 しばらくすると、岡山城が固定され、しっかりと実態を持った。

 周りを見ると、田嶋もじっと岡山城を見ている。相良だけが、ちょうど定時観測の時間でドローンを操作して、動いている。


「3時か」

「時代の進み方がが一方向じゃないって、不思議な空間です」


 心ここにあらずと言った感じで、三浦がつぶやいた。

 しばらくは、そのままにしておこう。


「定時観測は終わりました。いつでも移動できます」

「戻るか」


 三浦をダンジョンから出そう。

 今日は夜まで観測する予定なので、付き合わせられない。


「岡山城の築城と百間川の作成で、時代と時間の進みは割り出せるか?」

「時代の流れが一定なら。ですが、あれを見ると、怪しい気がします」

「大体目安が分かれば、やりやすいんだが。児島に向かっている間に、海に戻られたら、流される」


 これは船の用意も必要だな。


「そういえば、この森の木って成長しませんね」

「ダンジョンの植物は、基本的に成長しないものが多い」


 たとえば果物のなる木があるとしたら、常に果物がなっている。

 古墳についている苔も、成長しているのではなく、あるか、ないか、なのだろう。小さすぎて現れる瞬間に気づけないが。


「今夜は遅くまで調査されるんですよね。気をつけてください」

「ああ。付き合ってもらって悪かったな」


 少しずつ、ダンジョンの姿が見えてきた。

 コアを見つけて、調査を終わらせたい。



 ダンジョン内で夜を迎えるのは初めてだ。

 日が落ちたのは、19時前。そこから先は、未体験ゾーンだ。


「暗くならないのか」

「そこはダンジョンなんですね」


 ほとんどのダンジョンは、なぜか知らないが常に明るい。

 そもそも太陽があって、光が変わるダンジョンのほうが珍しい。

 日が沈む前、少し薄暗くなり、赤っぽい空だったが、いまは灰色の空だ。星は出ていない。


「白夜」


 田嶋がつぶやいたが、確かに白夜のような雰囲気だ。


「まさか、ここからがモンスターの時間か?」

「気配は感じませんが、ドローンを飛ばしますか?」

「いや、定時でいいだろう」


 出口まではすぐ。いざとなったら逃げられる。


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