★第11話 無名の深淵
多重階層都市ソラリス。その中層域にあるセクター16の広域避難シェルター。
都市保安隊(CSF)の防衛線と、第7独立遊撃部隊「ノヴァ」の限界を超えた精神同調戦術「シンクロニシティ」の死闘によって、数万人の市民が立てこもるドーム状の壁は、辛うじて怪物の牙から守り抜かれていた。しかし、周囲に散らばるヴォイドの死骸である紫色の結晶片が星屑のように虚しく輝く中、彼女たちに勝利の余韻に浸る時間など、一秒たりとも残されてはいなかった。
大気を激しく引き裂くような高周波のアラート音が、ノヴァの戦術端末から絶え間なく流れ落ちていた。人工太陽の光が完全に遮断され、不気味な紫色の暗雲が渦巻く空を見上げながら、リナは自身の細剣を強く握りしめていた。細剣の刃は、これまでの過酷な連戦によって微かに刃毀れしており、彼女の衣服もまた、怪物の紫色の返り血とコンクリートの粉塵によってボロボロに変色していた。
「アリア、全セクターの状況はどうなっているの?」
リナが荒い息を吐きながら問いかける。彼女の銀髪は汗で額に張り付いていた。その横では、桃色のツインテールを激しく乱したモモが、重い大剣「イグニス・ゼロ」を地面に突き立てて辛うじて身体を支えており、緑髪の槍士、クロエも白銀の槍を握ったまま、激しく上下する肩を落ち着かせようと深く息を吸い込んでいた。
四人の中心で、眼鏡のレンズに大きなヒビを入れたままの参謀、アリアが、情報端末の画面を凝視していた。彼女の周囲を浮遊する三機のドローン「アイリス」「ルナ」「セレネ」は、過負荷による火花を散らしながら、辛うじて空中にその位置を留めていた。
アリアは全階層のゲートから逆流する広域エーテル波形を独自に逆位相解析し、今回の未曾有の大規模侵攻を背後で統率するヴォイドの明確な知性体――最上位個体、仮称「王」の存在を、完全に独力で突き止めていた。
「王の居場所は、やはりこの真下……ソラリスの最下層、未開発の暗黒区画の最深部です」
アリアがホログラムスクリーンに都市の多重構造立体マップを投影する。
「王はそこから都市のエーテルシステムを逆流させ、無限に怪物を吐き出しています。……リナさん、都市を覆う第一種防衛結界の残存出力は、すでに12%を切りました。あと数十分以内に王の核を完全に破壊しなければ、結界は崩壊し、ソラリスは多重台地の自重に耐えかねて崩落、数百万の市民もろとも異次元の深淵へと沈むことになります」
「一刻の猶予もない、ということね」
クロエが槍の柄を強く締め直した。勝利への道は一つ。最下層へ潜り、王を討つこと。四人の精神はシンクロニシティの鎖を通じて、すでにその覚悟を共有していた。
「大隊本部、こちら第7独立遊撃部隊、ノヴァ! 隊長のリナです! 緊急入電を聞き入れてください!」
リナは端末の通信スイッチを押し、ノイズの激しい無線に向かって叫んだ。アリアが特定した王の存在と所在地を報告し、最下層への派遣を意見具申するためだった。しかし、スピーカーから返ってきたのは、強烈な電磁障害のノイズと、完全に物理的切断された無音の静寂だけだった。
「……ダメです、通信は完全に不通。地上の基地局が破壊されたか、アビスの濃度が高すぎて、中継回線が完全に焼き切れています」
アリアが静かに首を振った。衛士隊司令部、その直轄部隊である独立遊撃大隊の本部は広域の混乱に陥っており、今回の侵攻の元凶たる「王」の存在自体、未だに把握していないはずだった。
「通信が繋がらないなんて……。じゃあ、あたしたちはどうすればいいの!?」
モモが叫び、地面を強く蹴った。
時間が刻一刻と迫る中、リナは猛烈な葛藤の渦に突き落とされていた。隊の規則に従うならば、このままセクター16の持ち場を死守しつつ、本部との通信が回復し、正式な「指揮」と許可を得られるまで待機すべきだ。
しかし、それでは結界の崩壊に間に合わない。逆に、独断で最下層へ降りて王を討伐すれば、持ち場の無断離脱で明らかな隊規違反、命令無視となる。さらにもし討伐に失敗すれば、ただの犬死にとして処理されるだろう。
(私は……どうすべきなの? 命令を待って破滅するか、独断で深淵へ潜るか……)
リナは自分の刃毀れした細剣を見つめた。かつてマヤから突きつけられた「隊長の決断の重さ」という問いかけが、再び彼女の胸を重く締め付けていた。三人の仲間は何も言わず、リナがどちらの未来を指し示すのかを、絶対の信頼の眼差しで見つめていた。
「そこまでよ、リナ」
突如として、シェルターの背後にある瓦礫の山から、聞き覚えのある凛とした声が響いた。
リナたちが弾かれたように振り向くと、そこには、制服を激しく損傷させながらも、圧倒的な威圧感を放つ四人の女性衛士――第3部隊「ヴィクトリア」の姿があった。
隊長のマヤは、腰にある二振りの直剣のうち一振りを手にしたまま、血と硝煙にまみれた戦場を堂々と歩み寄ってきた。
「マヤさん……! 第3部隊、なぜここに……!」
リナが驚愕の声を上げる。マヤはリナの前に立つと、静かに言った。
「セクター04の敵はすべて排除したわ。それよりリナ、何をそんなに迷っているの?」
リナは意を決し、本部との通信が途絶していること、そしてアリアが独自に解析した「王」の存在と、それが最下層の暗黒区画に潜んでいるという事実をすべて打ち明けた。
話を聞いた第3部隊の参謀、光魔導師のリリスが即座に動いた。彼女は自身の杖を掲げ、アリアの情報端末へとエーテルパスを繋いだ。
「データ、同期完了。……アリアさんの解析結果を私の魔術回路で追確認しました。裏付けは取れたわ、マヤ。誤差0.02%以下。間違いなく、侵攻の元凶たる『王』が最下層のエーテルを反転操作しているわ」
リリスの冷徹な言葉に、マヤの瞳が鋭く光った。
「そう。元凶の居場所がわかったのね。……リリス、サラ、ルウ。行くわよ。私たちが最下層へ降りて、その王とやらを直接叩き潰す」
マヤが双剣を握り締め、最下層へと続く重厚な地下ハッチへと歩を進めようとした。
その瞬間、「待ってください!」と、リナがマヤの前に立ちはだかり、その進軍を遮った。
「マヤさん、最下層へ行くのは、私たちに行かせてください! 第3部隊は、衛士隊の絶対的な象徴であり、このソラリスに生きる市民全員の最後の希望なんです! もしマヤさんたちが誰もいない暗闇の底で万が一のことがあったら、地上の防衛線は一瞬で崩壊します!」
リナは血の滲む唇を噛み締め、必死の思いで訴えかけた。
「最下層の闇へ降りるのは、新人の私たちで十分です。……私たちはまだ、戦績もない、誰にも知られていない新人部隊です。もし、私たちが王に敗れて深淵の底で灰になったとしても――衛士隊の誰も、市民の誰も、私たちのことなんか惜しまない。だから、私たちに行かせてください!」
それは、リナがチームを、そしてこの都市の光を護るために絞り出した、悲痛な自己犠牲の叫びだった。
パァン!!!
ふいに激しい硬質な音が、戦場に響き渡った。
リナの身体が横に僅かに揺れた。マヤが、リナの白い頬を、容赦ない力で平手打ちしたのだ。
「……ふざけないで、リナ!」
マヤの直剣を握る手が、激しい怒りと、それ以上の情念で小刻みに震えていた。彼女はリナの胸元を強く掴み、その銀色の瞳を至近距離から真っ直ぐに睨みつけた。
「第7部隊を失って、惜しまない者なんか、この都市に一人だっているわけがないでしょう! あなたたちは使い捨ての駒じゃない。この街の明日を生きる、大切な若き戦士たちよ! 自分の命を、仲間たちの命を、そんな風に安く見積もるんじゃないわ!」
マヤの叱責。それは、三年前の旧第7部隊の全滅を目の前で見て、誰よりも仲間の命の尊さを知る彼女だからこその、魂からの怒りだった。リナは目を見開き、マヤの瞳の奥にある、押し潰されそうなほどの深い愛と情熱を、確かに受け止めていた。
マヤはゆっくりとリナの胸元から手を離し、フッと息を吐いて不敵な笑みを浮かべた。リナの背後にいるモモ、クロエ、アリアの三人を見る。彼女たちの瞳には、恐怖など微塵もなかった。ただ、隊長と共に深淵へ挑むという、揺るぎない絶対の覚悟だけが宿っていた。
「でも……いい目ね。全員、死ぬ気なんかさらさらない、最高の顔をしてるわ」
マヤはそう言うと、自身の銀青の制服の襟元にある、燦然と輝く「太陽の意匠」を施された金色の特殊バッジに触れた。それは、五年以上のキャリアを持ち、数々の最高位任務を完遂してきた部隊の隊長にのみ与えられる衛士隊の絶対的な特権の象徴だった。
「大隊本部や司令部との通信が途絶している今、この戦域の最先任者は私よ。……これより、衛士隊規に基づく『緊急現場指揮権』を発動する」
マヤの声が、周囲一帯に響き渡る。
「第7独立遊撃部隊、ノヴァ。あなたたちに、現場最先任指揮官としての命令を下す。これより、完全閉鎖されたインフラ通路を開放し、最下層の暗黒区画への『強行偵察』を実施、元凶たる王の核を完全に破壊しなさい。……これは正式な命令よ。あなたたちの行動の全責任は、この私が、第3部隊の隊長であるマヤが、すべて引き受けます」
「マヤさん……!」
リナの声が震える。マヤはリナの前に屈み込み、その細剣の柄を強く握らせた。
「ただし、絶対命令が一つあるわ。……必ず、生きて私の前へ戻ってくること。いいわね、リナ?」
「……はい! 命令、受領しました!」
リナは涙を拭い、力強く頷いた。独断専行の恐怖は消え去り、彼女の細剣にはいま、最高の先輩から託された未来への「現場指揮権」という、絶対的な大義の光が宿っていた。
第7部隊が最下層へのインフラハッチへと向かおうとしたその瞬間、セクター16の大通りから、強烈な光の粒子が炸裂した。
「遅くなってごめん、クロエ! でも、美味しいところは渡さないんだから!」
聞き覚えのある不敵な叫び。大通りを遮る怪物の群れを、何百発ものまばゆい青白いレーザーが一瞬でなぎ払った。現れたのは、青黒い髪を激しくなびかせ、最新鋭のエーテル兵装「アグライア」を構えたエレナ率いる第8部隊だった。
「エレナ……! なぜここに!?」
クロエが槍を構えたまま驚きの声を上げる。エレナはアグライアの駆動回路から激しい火花を散らしながらも、最高にプライドの高い笑みを浮かべていた。
「第3部隊が現場指揮権を動かした形跡を、私たちの新端末が傍受したのよ! 第7部隊が勝手な面白いことを企んでるってね。なら、私たちが、その背中を護ってあげるのが筋でしょう! これが最新兵装の、極限駆動よ!」
エレナのアグライアからパージされた無数のエーテルビットが、空間を縦横無尽に駆け巡り、押し寄せるスカベンジャー級の群れを次々と光の網で焼き尽くしていく。
さらに、彼女たちの背後からは、何十台もの半壊した装甲車を並べ、重機関銃を狂ったように連射する都市保安隊(CSF)の増援連隊が到着した。彼らは泥と血にまみれ、ライフルの銃身が焼け落ちるのも構わず引き金を引き続けていた。
「衛士の嬢ちゃんたちを行かせろ! 弾薬がある限り撃ち尽くせ! ここに鉄の壁を築くんだ!」
連隊長の怒号が響き渡り、実弾兵器の圧倒的な弾幕が、紫色の闇を切り裂く曳光弾の川を作り出した。
「マヤ、リリス、サラ、ルウ……行くわよ! 第3部隊、最終防衛行動!」
マヤの号令と共に、最強の四人が前線へと躍り出た。ルウの黄金の盾がシェルターの正面に聳え立ち,リリスの放つ光の幾何学魔法陣が戦場全域の電磁ノイズを力づくで弾き返す。その完璧な防壁の隙間から、サラの長槍が電光石火の速度でプレデター級の核を射抜き、マヤの双剣が嵐のような連撃となって、漏れ出た怪物の群れを瞬時に細切れの結晶へと変えていく。
それら人類の全火力が融合し、かつてない「光と鉄の火線」が構築された。彼らは自らが肉の壁となり、すべての敵の注意を地上へと引きつけることで、第7部隊が誰もいない深淵へと潜るための、完璧な一瞬を作り出していた。
「みん、な……!」
リナは、その圧倒的な光景を瞳に焼き付けた。
能力のある者も、ない者も。先輩も,同期も、兵士たちも。すべての者が、自分たちに未来を託し、その背中を命懸けで守ってくれている。そのすべての意志が、精神同調の鎖を通じて、リナの細剣へと、四人の魂へと、爆発的な力となって流れ込んできた。
「ハッチを開放します! 残存エーテル、すべてを作戦ルートの維持に投入!」
アリアが端末を叩き、固く閉ざされていた鋼鉄のインフラ扉が、激しい金属音と共にゆっくりと左右に滑り出した。その向こう側に広がっていたのは、ソラリスのすべての繁栄から切り離された、人工の光すら一切届かない、漆黒の深淵だった。
「ノヴァ……いくよ!」
リナの細剣が、暗闇の先を真っ直ぐに指し示した。
「うん、隊長! 深淵の底まで、あたしが道をこじ開けてあげる!」
モモが大剣を力強く担ぎ上げ、不敵に笑う。
「……外すわけにはいかないわね。これだけのものを、託されたのだから」
クロエが槍を水平に構え,その眼差しを闇の奥へと向けた。
「論理的成功確率は、今、100%になりました。……行きましょう」
アリアがヒビの入った眼鏡の位置を直し,静かに微笑んだ。
四人は、互いの手のぬくもりを、精神のリンクを通じて確かに感じ合っていた。もはや全滅への恐怖も、隊長としての孤独もない。彼女たちは、この都市に生きるすべての抗う者たちの意志を宿した、最強の「剣」だった。
四人は振り返ることなく、地上のまばゆい光と鉄の火線を背にして、誰もいない最下層の暗闇へと、迷いなくその身を投じた。
ゴォォォォォン――。
重厚な鋼鉄のインフラ扉が、リナたちの背後で完全に閉鎖され、ロックされる鈍い金属音な鳴り響いた。その瞬間、地上を埋め尽くしていた絶え間ない重機関銃の発砲音も、マヤたちの放つ激しいエーテルの爆発音も、エレナのビットが描く青白い残響も、すべてが嘘のように遮断された。
あとに残されたのは、完全なる静寂と圧倒的な漆黒の闇だった。
「……すべての外部通信、完全に沈黙。司令部の広域ノイズすら、ここには届きません。私たちは今、世界のすべての論理から切り離されました」
アリアの静かな声が、冷たいコンクリートの壁に反響した。彼女の操る三機のドローンが放つ、微かな青色の探索光だけが、四人のボロボロの制服と、泥にままみれた横顔を薄暗く照らし出していた。
四人は、垂直に数千メートル下へと続く、放棄された旧式のインフラシャフトを、背中に背負ったエーテルブースターを限界まで逆噴射させながらゆっくりと降下していた。周囲の壁には、ソラリス建造初期の剥き出しの鉄骨や、錆びついた配管が怪物の肋骨のように不気味に並んでいた。最初から光など存在しないかのような暗黒の世界。
「……冷たい、ね」
モモが、大剣「イグニス・ゼロ」を抱きしめるようにして呟いた。その声は微かに震えていたが、精神同調の鎖を通じてリナの胸に届いた彼女の心拍は、驚くほど力強く、そして穏やかだった。
「夢で見たプリンよりずっと過酷だけど、怖くないよ。隊長の心の中が、すっごく温かいから。……みんなが、一緒にいるのがわかるから」
「ええ。私も、同じよ」
クロエが槍の柄を握ったまま、闇の先を見据えた。
「……上層の綺麗なお店も、中層の賑やかな広場も、ここには何もない。でも、私たちが守りたいものは、全部この先にある。私の槍は、そのためだけに研ぎ澄まされてきたわ」
リナは、暗闇の中で自らの細剣の柄に触れていた。細剣は光を失い、冷たい鉄の塊に戻っていたが、彼女の魂の奥底にある「太陽」は、かつてないほど眩く、そして熱く燃え上がっていた。
(マヤさん。私は孤独じゃありません。この最高の仲間たちが、私の両隣にいてくれる。そして、私たちの背中には、地上のすべての戦士たちの祈りが宿っているから)
挫折を知り、己の未熟さを痛感した銀髪の隊長は、今、誰も知らない深淵の底で、真の意味で完成された戦士へと脱皮を遂げていた。彼女たちが選んだこの道は、公式の記録に載ることはなく、市民がその活躍を知ることも決してない。もしここで敗北すれば、誰に看取られることもなく、ただの無名の残骸としてこの暗闇に埋もれるだけだ。
しかし、彼女たちにとっては、それで十分だった。守るべき人々の笑顔が、明日もあの光の下で続いていくならば、自分たちはこの誰も知らない無名の深淵で、絶望の元凶を穿つ、唯一の鋭い剣になればいい。
「……着地まで、あと十秒。エーテル波形の異常な高密度集積を感知。王は、この扉のすぐ向こう側にいます」
アリアの眼鏡の奥の瞳が、青いデータの光を反射して鋭く輝いた。
降下速度がゼロになり、四人の足が、最下層の泥と鉄にまみれた鋼鉄の床へと着地した。目の前には、異次元のエネルギーによって赤黒く腐食し、不気味に脈動する、巨大な最深部ブロックの隔壁が聳え立っていた。壁の隙間からは、周囲の物質をすべて消滅させようとする、アビスの紫色の霧が漏れ出している。
「ノヴァ。……これが、私たちの、最後の任務よ」
リナが細剣を真っ初ぐに構えた。彼女の身体から、これまでにないほど純粋で、強烈な銀色のエーテルが溢れ出し、絶対的な暗黒の世界を真っ二つに切り裂いた。その光に導かれるように、モモの大剣が青白い火花を散らし,クロエの槍が鋭い緑色の閃光を放ち,アリアのドローンが戦闘機動のハミングを鳴らし始めた。
四人の精神は、極限の同調の彼方で、完璧に一つの大きなな太陽へと昇華されていた。
「……いこう。私たちの、明日を取り戻すために」
少女たちの力強く確実な足音が、ソラリスの最底辺の床に、宣戦布告の地響きとなって響き渡った。誰も知らない最終決戦の幕が、この質量を持った暗黒の深淵の底で、静かに、しかし決定的に、いま切って落とされようとしていた。




