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EP.11 いつかの記憶、砂の下へ

今日のダンジョンはいつもより砂埃が舞っていた。きっと昨日の砂嵐のせいだろう。憎たらしくあちこちに積もった砂漠の砂が、俺達の仕事を邪魔する。


「おい、ファーリス、何か見つかったか」


「いいや、サウル、売れそうな物は何もない」


「あぁ、もうッ!」サウルは苛立たしげに声を張り上げた。「砂が邪魔で何も見つからない!」


「よっこらせ」俺は手を止め、コンクリートの壁際に腰を下ろした。「砂のせいじゃないさ。この辺で金になりそうな物は粗方持ってかれちまってる。俺達もそろそろ場所を移すべきだ」


サウルが俺の横に座り込む。「でもよ、結局場所を移したって、大して金にならないガラクタしか出ねえんだよな。———どっかにお宝の山ねえかなぁ」


俺はボロっちいカバンをまさぐり、錆びついたジッポと折れ曲がった煙草を一本手に取った。そうして火を点け、最初の煙を吐き出してから口を開く。「そういうのは全部、ギルドの連中が持ってっちまうだろ。俺達は一生その残りかすを拾い集めて生きていくんだよ」


「お前、また煙草を吸ってやがるのか」サウルは頭を掻きむしった。「むしゃくしゃするぜ。俺達みたいなゴミは、一生ゴミ拾いしてろってか!?納得いかないぜ。なあファーリス、お前もそう思うだろ」


「さあな」


「なっ」引き攣った顔をするサウル。「なあに気取ってるんだよ、お前が一番この暮らしに満足してないってことくらい分かってるんだからな」


「サウル、お宝の山ならすぐ近くにあるかもしれないぜ」


「はあ、何言ってんだお前、どう見たってこの辺に宝なんかねえぞ」


俺は首を横に振り人差し指で下を指した。「ダンジョンの地下だよ」


数秒の間の後、サウルは目を丸くしてこちらを見た。「マジで何言ってるんだよお前!確かに地下には金目の物が沢山残ってるけどよ、そりゃお前、地下には獣がうじゃうじゃいるからで」


古代人が建てた巨大な建造物は全て砂に埋もれた。それがダンジョンだ。

この砂漠の大地の地下にはそういうダンジョンが数多く残っている。地下のずっと深くまで続くダンジョンには、地上の灼熱から逃れてきた獣たちが巣くっているんだ。


死ぬことを恐れたガラクタ漁り達は、決して地下に足を踏み入れようとしない。


「宝の山を見つけたいんだろ、サウル」


「そりゃそうだけどよ、死んじまったら意味ねえじゃねえか。やばいのに出くわしたらどうするんだ、お前の腰にぶら下がったその欠けた短剣で戦うってか」


煙草の煙をゆっくり肺に入れて、そして長く吐き出した。

濃い煙が俺たちを囲う。


「地下の獣は目が悪いらしい。足音さえ殺せばいける。得意だろ、そういうの?」


「チッ」サウルは大きく舌打ちをした。「マジかよお前。———死んだら呪うからな」


短くなった煙草を、積もった砂へ投げ捨てた。吸い殻は風に吹かれ、瓦礫の奥へと消えていく。


俺は拳を握り、サウルの方へ突き出した。「交渉成立だな」


サウルは俺の拳から目を逸らし「クソ気乗りしねえ」と吐き捨てて立ち上がった。「早く行こうぜ、ファーリス」


「ああ、———とっとと終わらせよう」

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