EP.12 見えない敵
「とんだハズレを引いちまったかもしれないな」俺はライフルを握りしめて、走りながら言った。
タッキーの手綱を引きながら走るアナが言う。「伝説の手がかりは必ずここにあるわ」
「その手がかりってやつをこの目で見るまでは、とてもじゃないが信じられない」俺は階段を一気に駆け下り、目の前の柵を蹴破った。「死んでたまるか!」
「アンタがどう思ってるか知らないけど、私たちは本気だから」
苦しみから解放された世界なんて、俺には想像できない。
「お前だって死にたくないくせによ」
アナは何も言わなかった。
ただ、彼女が握る手綱の革がギチリと鳴った。
寄せては返す波のように、弾丸の破裂音が白い大廊下に反響する。
「あっちから銃声が聞こえるわ」
「近いな。———準備しておけ」
俺は肩からライフルを下ろして、ぐっと構えた。冷たい金属が肌に触れる。
「言われなくても分かってるわよ」と低い声で言うアナ。
彼女は使い古されて表面が黒光りした木製のライフルを握り、ハンドルを引き上げ、引き、押し込んだ。
壁沿いに走る俺の後ろに、アナとタッキーと、それから意識の無いダンカンが続く。
冷えた空気の中に、スカベンジャーたちの怒号がわずかに混じっている。
俺は足を止めて「止まれっ」と後ろに叫んだ。
「急に何よ」
「黙れ」俺は振り返らずに一喝した。
音が、近づいてくる。
硬く閉じた扉に顔を食い込ませるように耳を押し当てた。
「なに、なにか聞こえるの?」
アナの言葉を無視して、扉の奥の音に集中する。
初めは自分の脈が聴こえた。
それが次第にノイズに飲み込まれて、ノイズはやがて輪郭を帯びた。
地を這うような轟音。いや、人の悲鳴か。
銃声や爆発音に混じって、無数の足音がこちらへ向かってくる。
———この扉に向かってる
「離れろ、何か来る!」
「敵?」
「とにかく離れろっ———はやく!」
俺は扉から離れて、瓦礫の裏に飛び込んだ。
アナとタッキーも同じように物陰に隠れる。
ライフルを体に引き寄せて、息を飲んで扉を覗いた。
雑多な音が辺りを圧迫する。振動する小さな瓦礫。
扉の向こう側、俺には関係のない恐怖が、境界線を越えた。
次の瞬間、巨大な扉が砕け散って、遅れて爆音と熱風がこちらへ押し寄せた。
瓦礫の裏で身体を丸めて必死で身を守る俺。
———またこれか
間違いなく俺はハズレくじを引いたんだ。
込み上げてくる怒りを胸の奥に抑え込んで、歯を食いしばる。
一発の弾丸が、俺の頭上を掠めるように飛んだ。
弾丸が風を斬るたびに、スカベンジャーの悲鳴が上がる。
俺は激しい銃声を浴びながら、ゆっくりと瓦礫の向こう側を覗いた。
血と塵が舞い散っている。
発砲炎が濃い煙を絶え間なく切り裂き、その奥に、何かがいた。
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