EP.10 黒煙の中の閃光
耳の奥がはち切れそうなほど痛む。耳鳴りのせいで何も聞こえない。
俺は両手を床につき、無理やり上体を起こした。
背中や後頭部に積もったガラス片が床に滑り落ちていく。
俺は歯を食いしばり、肺を焼くような空気を吸い込んだ。そして片足ずつゆっくりと立ち上がる。
辺りは滅茶苦茶になっていた。
槍のように床に突き刺さった鉄の部材。爆心地の方から飛んで来たんだろう。
俺は自分の身体が無事かどうか確認した。
幸い、目立った外傷はない。頬から血が垂れていたが、ガラス片に当たってできた小さな切り傷だ。
アナが視界を勢いよく横切った。
床に横たわったダンカンのもとへ駆け寄り、その肩を掴んで何かを大声で叫んでいる。
何も聞こえない。
ダンカンは動かなかった。
顔を真っ赤にして叫んでいたアナが、俺の方へ振り返る。
俺は彼女の声を聞く前に駆け寄った。地面に膝をつき、ダンカンの首筋に指を当てる。
後頭部からの出血。だが、息はある。大した出血でもない。
「気を失っているだけだ」
アナが眉をひそめた。耳鳴りで自分の声すら遠い。
俺は彼女の顔を覗き込み、ゆっくりと、大きな声で繰り返した。
「気を、失っている、だけだ」
アナは口を半開きにしたまま、何度も頷いた。震えが収まってゆく彼女の手。
耳鳴りがさっきよりマシになっていく。
その時、何かが俺の背中を小突いた。
振り向くと、タッキーがいた。
タッキーは前足を折って体勢を低くしている。
———背中に乗せろってことか
俺は立ち上がり、アナと視線を交わした。
ウスマンが調整した左腕に力を込める。義手はすこぶる好調だった。
ダンカンの重い上体を力づくで持ち上げて、彼の太い胴を抱え込む。
無駄な装備を身に着けているせいで余計重い。
一歩ずつ床を踏み締め、大男をタッキーの背中へ、干された布団のように寝かせた。
外の強風に乗って焦げ臭いにおいが鼻を撫でる。
今の爆発、一体全体何があったのか。眉をしかめても全く見当がつかない。
遠くから、乾いた発砲音が届いた。
ガラスの散らばった床を走り、割れた窓から身を乗り出す。
爆心地を覆う黒煙の中で、絶え間なく小さな閃光が弾けていた。
後ろからアナが聞く。「なんなの」
「銃撃戦だ。なんだか知らないが、あっちの連中が戦ってる」
「相手は誰?」
「ここからじゃ分からない」俺はアナたちのもとへ戻り、自分の銃を肩にかけ直した。「とにかく、他の班と合流しよう。こんな所に取り残されたくないからな」
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