5−10 笑顔と、困惑と
翌日。
私は七香を呼び出した。昨日の夜七香にはおおまかに伝えたが、やはりちゃんと話したほうがいい。
数日前のはしゃいでいた姿はなく、バツが悪そうにしていた。
「七香、これパパの言っていたことなんだけど」
私はBeReal.の事件の話を、七香にもわかるように伝えた。
制限時間による焦り。背景への注意散漫。そして、切り取られた一瞬が、真実とは違う物語を勝手に作ってしまう怖さ。
「実際は、進路相談のために校外で会ってただけなんだって。それが真実」
「そっか……私、いつもの噂話ぐらいにしか考えて無くて……」
しおしおに萎れた七香を見て、ちょっとかわいそうになってきた。でもここはしっかり言っておかないと。
「そうだね。間違った情報で、先生だけじゃなくて、隣のクラスの子もショックを受けたと思うよ」
「……うん。ごめんなさい」
素直に反省してシュンとしている七香は、ちょっと可愛いかも。
「でもさ、今からでも七香にできることあるでしょ?」
「私に?どんな?」
「七香の顔の広さは学校内随一だし、みんな信頼してくれているから。七香が訂正情報を出せば、みんな信じてくれるんじゃない?」
七香の顔が、ぱあぁってなった。ホント現金な子だ。
「私、誤解だって広めてくる! 私の情報網なら、訂正も秒で広まるし!こう見えても私の情報の信頼度高いからね!」
あまりの勢いに、私は思わず一歩後ずさった。
「う、うん。それがいいと思う」
「そっか!私の情報拡散力と信頼!」
七香の目が、キラキラとしてきた。こういうコロコロ表情の変わる七香は、本当に見てて飽きない。
私は七香を座らせて、改めて確認させた。
「いい?最低限守ることは2つだよ」
「うん! なに?」
「スクショをグループ外に拡散しないこと。そして、思い込みで書き込まないこと。これもセットで広めてきて」
「ありがと~! やっぱり紬は頼りになる~!」
七香が抱きついてくる。
「ふぅ。紬の匂い嗅いだら、元気でてきた〜!」
私はため息をつきながらも、このどこか憎めないトラブルメーカーの頭をなでた。
<つづく>




