5−9 コンテキストと、スナップショットと
「友人同士、ノリ、同時刻ってのも大きい。時間というは重要なコンテキストだ。ただ、問題はそれが写真として残ってしまうこと、関係性の薄い人物にまで共有されてしまうこと。そして……」
「……その写真がスクショされて、別のSNSに拡散されちゃうこと?」
「その通り。最大の問題は、その写真がコピペされてBeReal.外に出てしまうことだ、そうなってしまったら、もう発信元もわからなくなるし、コントロール不可だな」
確かに、今回もBeReal.外に出たスクショ画像がきっかけだった。
「ただの面談かもしれないし、偶然会っただけかもしれない。だが、切り取られた「一部」は、見る側の想像力によって都合の良い情報に上書きされて、拡散される。今回の件、写真だけだったらこんなに盛り上がっていないだろう。誰かがそこに「不倫」という情報を付けたからだ」
パパは少し悲しげな顔をした。
「人の想像力は、時に人を傷つけてしまう。特に相手の気持ちを考えないときはね」
相手の気持ちか……。
「これがもし自宅の住所がわかるものだったら?秘密の場所が写っていたら?部屋の間取りや帰宅時間がわかってしまっていたら?もっと危険な犯罪に使われる可能性も出てくる。たかが写真、では済まなくなってしまう」
「確かに……、ストーカーとかにとっては、めちゃめちゃおいしい情報だもんね」
「その通りだ。もちろん、SNSの共有先をグループ内に限定することは大前提。ただ、グループ内であっても、それがスクショされ、管理外、つまりグループ外に流出してしまうことがある。SNSの炎上の多くはこれが原因だ」
言ってみれば、クラス内のノリを、他の生徒にやって、サムい空気になることみたいなものかな……。
「当然グループ外の人は、その目で見たことが全てだ。背景事情、グループのメンバーなんかお構いなし。これが『コンテキストの崩壊』を生み、予想のつかない炎上騒ぎに発展する」
私はパパの悲しげな顔を横目に見ながら、小さく呟いた。
「パパの話はわかったけど、でも現実のクラスの空気はそんな理屈じゃ止まらない…」
私は大きく一つ伸びをして、思考を現実の教室へと戻した。さて、どうする?とりあえず七香にお灸を据えておくかな。
おしおきだべぇ〜
どこかで聞いたようなセリフが頭の中に浮かんだ。
<つづく>




