72/95
5−4 見る側と、見られる側と
恐れていたことが、最悪の形で現実になっていた。画面をスクロールする指が追いつかないほどのスピードで、次々とメッセージが飛び込んでくる。
『昨日のBeReal.? 田中じゃん』
『向かいの人、3組の男子の母親でしょ?』
『え、手繋いでない? これ』
『ガチ不倫現場じゃんwww』
『昼間っからカフェで密会とか、さむっ!いやお熱い?』
『誰がうまいこと言えとww』
(……もう、やめてよっ!……)
『学校終わったな』
タイムラインを流れる言葉は、無責任な憶測と悪意で埋め尽くされていた。
昨日の写真では、手など繋いでいなかったはずだ。しかし、不鮮明な画質と、見る側の「そうであってほしい」という野次馬根性が、ただの会話風景を「密会」へと歪めていた。
「だいぶ燃えちゃってるね……」
私が呟くと、七香が泣きそうな声で言った。
「朝からこの話題で持ちきりなの。みんな面白がって拡散しちゃって……。別のクラスのグループLINEにも転送されてるみたい」
七香は悔しそうに唇をギュッと噛んだ。
「私『手は繋いでないよ』ってコメント入れたの。でもすぐ流れちゃって……」
一度火が付いたら、もう止められない。炎上事件そのものだ。
<つづく>




