4−10 ドメインのお値段
「色って?お小遣い程度ってこと?」
「そう。例えば、ドメイン代数千円に、手間賃を乗せるイメージだ。本物の『サイバースクワッター(占拠屋)』だったら高額な金額を請求されてもおかしくない。彼らにしてみれば、タダみたいなものだ」
パパはタブレットを操作して画面を見せてきた。
「有名な話では、tesla[.]comは約十七億円で取引されたらしいぞ」
「十七億円!?たかがドメインで?」
私がパパのタブレットを覗き込むと、そこには高額取引のランキングが並んでいた。
「えっと、他にもvoice[.]comで三千万ドル…五十億円!?後はporn[.]comで九百万ドル?え?pornってどんな意味だっけ?」
「ポルノ。性的コンテンツだな。インターネットでは最も稼げるコンテンツだ」
「…!!」
気まずっ!ちょっとパパ……そこはぼかしてよ…….。
「こんな風に、ドメインの売買は普通にあることだ。この件はかなり極端な例だけどね」
パパは、テーブルの上で両手を組んだ。その姿は、楽しんでいるように見える。
「あくまで『部活動のために偶然取得してしまったが、お困りならお返ししますよ』というスタンスを見せるんだ。これは『身代金』じゃない。落とし物を拾ってあげた時の『謝礼』だと思えばいい」
「なるほど……。それなら、向こうも文句言えないし、小島くんも損しない」
「そうだ。これを専門に稼ぐ『ドメイナー』と呼ばれる業者もいるが、あまり行儀の良い商売とは言えないからな。泥仕合をして消耗するより、サクッと手放して、新しいドメインで楽しく活動を始める。それが一番スマートな『大人の解決法』だよ」
「わかった。変な因縁をつけられる前に、綺麗なリボンをかけてお返しするってことね」
私は納得して頷いた。
戦って勝つことだけが正解じゃない。
戦わずして丸く収める。大人の作法。
<つづく>




