57/96
4−9 手打ちの作法
「じゃあ、どうすればいいの? 小島くん、裁判とか言われて、震えてるよ」
私は、冷めかけたカフェオレを一口飲み、不安そうにパパを見た。たかが部活のサイトを作ろうとしただけで、法廷闘争なんて、あまりにも理不尽だ。
「裁判か……。確かに、法的に争えば小島くんが勝つ可能性は高い。彼は正当な手続きで購入した『善意の第三者』だからな」
パパは静かに言ったが、すぐに首を横に振った。
「だが、高校生が抱えるには、負担が重すぎるだろう」
「だよね……。小島くん、メンタル弱そうだし」
「だからこそ、ここは『手打ち』にするのが賢明だ」
「手打ち?」
「ああ。一番平和的な解決策は、『ドメインを譲渡する』ことだ」
パパの提案に、私は少し拍子抜けした。
「えっ、タダで返しちゃうの? 向こうは『泥棒』呼ばわりしてるのに?」
「いや、タダではない。小島くんも自分のお小遣いで取得費用を払っているんだ。その実費は請求していい。プラス、手続きにかかる『事務手数料』として、少し色をつけてもらうくらいが妥当だな」
パパは悪戯っぽく片目を瞑ってみせた。
<つづく>




