4−7 白紙の看板
私は一つ疑問があった。
「でもさ、パパ。ぶっちゃけた話」
私はマグカップの縁を指でなぞりながら、素朴な疑問を口にした。
「今どき、ドメインなんて必要? SNSのアカウントがあれば十分じゃない?」
私の周りを見ても、何かを調べる時はGoogleよりもInstagramやTikTok、X(旧Twitter)がメインだ。わざわざ ".com" とか ".jp" なんて打ち込んでサイトを見るなんて、よっぽどのことがない限りしない。
「紬、いいところに気がついたな」
パパがニヤリと笑う。その顔は、生徒のイタズラを見つけた時の先生みたいだ。
「確かに、情報発信の手法は変わった。昔は『ドメインを持っている=信頼できる組織』だった。まさにネット上に『自社ビル』を建てて、『看板』を掲げるようなものだったからね」
パパは懐かしむように遠くを見る。
「だが今は、SNSの方が拡散力が高い。企業としても狙った層にリーチする確率があがる。ユーザーにとっても、使い慣れたアプリの中で完結する方が便利だしな」
「だよね。イベントの告知ならインスタのストーリーで十分だし、拡散するならXだし」
私は頷く。
小島くんも、わざわざドメインなんて取らずに、SNSだけで告知していれば、こんなトラブルには巻き込まれなかったはずだ。
<つづく>




