4−3 ドメイン
渡り廊下を抜けた先にあるパソコン部の部室は、暗く分厚いカーテンで閉ざされていた。部屋を満たしているのは、埃っぽい匂いと、何台ものPCが吐き出す、低いファンの回転音だけ。
その薄暗いデジタルな洞窟の奥で、小島くんはモニターの青白い光に照らされながら、頭を抱えてうずくまっていた。
「どうしたの? 小島くん」
私が声をかけると、彼はビクッと肩を跳ねさせ、怯えた小動物のように振り返った。鼻にかかった黒縁メガネが大きくズレていることにも気づかないほど、彼は動転していた。
「……人生、詰みました……」
彼の声は、ファンの音にかき消されそうなほど弱々しく、震えていた。
彼が震える指で示したモニターには、黒い背景に白抜きの文字で、見るも無惨なメールが表示されていた。
言葉の刃物が、画面から飛び出してきそうだ。
『警告。貴殿が取得したドメインは、長年我が社が使用してきた正当な権利を有するものです。直ちに返還に応じない場合、法的措置も辞さない構えです』
「あー!ドメイン!」
私は大きな声を上げてしまった。ドメンじゃなくて、ドメイン!
さらにその下には、感情を剥き出しにした罵倒が並んでいる。
『このドメイン泥棒!』
『サイバースクワッターめ!』
「すごい剣幕……。これ、一体何をしたの?」
私が画面を覗き込むと、小島くんは涙目で、絞り出すように説明を始めた。
「こ、今度、パソコン部でeスポーツの大会を主催することになって……その告知サイトを作るために『ドメイン』を取得したんです」
「ドメインって、インターネットのアドレスのこと?」
<つづく>




