3−10 危険回避
「へー、そんなことがあったの?パパ、よく知っているね」
「いや、いま作った。なかなか魅力的な話だろう?ちゃんと先人の知恵も無駄にしていない」
「その高校生って?」
「紬、お前だよ。今まさに、小さい記者さんに話を披露した」
「え?私、明美ちゃんの学校の卒業生じゃないんだけど!全部でたらめじゃん!いつも真実とか裏取りとか言ってるじゃん!裏取りされたらすぐバレるよ?」
「セキュリティに裏とりは必須だが、この話は元々学校七不思議という裏取り不可能な話だ。これを聞いた子供は、夜のプールに近づかなくなる牽制にもなっている。ちゃんとガイドラインの役目をはたしているだろう?」
呆れた・・・このオヤジめ・・
「そして最後のシメだ」
「最後って?」
「それを知った人は口を閉ざしてしまうって言う、七不思議の最後の話さ。ここで『この話は行方不明になってしまった子の話ですが、誰に聞いても教えてくれませんでした』ってね」
ええ?そこまで利用する?全く、このオヤジは!
「というかセキュリティ全然関係ないのに、なんでそんなに詳しいのよ?」
「忍法、危険回避の術だ」
「はい?」
「セキュリティも怪談も同じだよ。恐怖というものを使って人の心を動かす。すべて同じなんだ」
明美ちゃんが、ポカンって顔している。
「そういえば、山岸くんの事件(前作・リモートコントロール編)でも、ウイルスに感染したって脅されたのが原因だったね。SNS事件、セクストーション、全部そうだった」
私は前の事件を思い出していた。
「そうだな、人は恐怖や緊迫感を感じると冷静な判断ができなくなる。冷静に考えればわかることでも、気づきにくくなる。怪談も同じ原理を使っている。ただこれは良い使い方だ。恐怖を使って、人の記憶に刻み、人を危険なものから遠ざける。怪談話はみんなそうさ。人を守るセキュリティの盾だ。恐怖というのは心の道具だ。それは良い使い方もあれば悪用もできる。セキュリティも同じだ。良くも悪くも使える。だからこそ、恐怖に支配されず、誰かに相談できる環境が重要になる」
七香と明美ちゃんは話に飽きたのか、お互いのリップを披露していた。
<つづく>




