3−8 シミュラクラ現象
パパは話が止まらなくなってきている。大丈夫かな……。
私がちらっと明美ちゃんの方を見ると、明美ちゃんは熱心にメモを取っている。
「そして、単に『一人で行かないようにしましょう』と言ったところで、みんな聞かないかもしれない。だからみんなが興味を持って聞いてくれる怪談話にしたんだ」
「つまり、学校7不思議は、君たち子供を守るために大人が考えた、セキュリティのガイドラインという意味だ」
明美ちゃんが、ぱっと顔を上げた。七香がリスなら、明美ちゃんは子リス……?
「ありがとう、紬ちゃんのお父さん!これで新聞書けるよ」
あれ?でもそれって?
「あ、ちょっと待って?ねえパパ、これネタバラシしちゃったら、せっかくの効果がなくなっちゃわない?」
パパはちょっと考えて、
「それはそうだな。せっかく作ってくれた先人たちに申し訳ないか」
少しパパは考えて言った。
「それではこうしよう。一つの種明かしをして、それだけでは説明がつかないことがありました。とすればどうだろう?」
明美ちゃんがキラキラした目で身を乗り出してくる。七香の子供版みたいだな。
「紬ちゃんのお父さん、種明かしって?どんな?」
パパは紙に何かを書いた。
「まずはこれだ。みんな、これが何に見える?」
紙に丸を2つと、三角、これは……。
明美ちゃんが元気に手を上げて答える。
「人の顔!」
「そう、人の顔に見えるね。これをシミュラクラ現象という」
「しみゅらら・・?」
明美ちゃんが舌を噛みそうになりながら繰り返す。
「シミュラクラ現象。3つの点が集まった図形を人の顔と認識してしまう現象だ。見たことないかな?火星の人面岩とか、人面魚とか。昔々、敵か味方かを瞬時に判断しようとする防衛本能からきている」
なるほどね、錯覚、いや視覚のオートコンプリートってところか。
「これを使って、プールの水面に人の顔が現れたことを解説すればいい、ただそれは光の反射か、何かの影かで、3つの点が構成されたに過ぎない」
……なるほどね。そう考えると怖くなくなった。
「これだけでは、先人の知恵を無駄にするからな。そこでスパイスを追加する」
……スパイス?
「付加価値をつけるのがセキュリティの役目だからな」
「こんな怪談話はどうだ?」
<つづく>




