2−1 Quick Response
小菅純也こすげじゅんやは、職員室にかかっている時計を見た。時計は、2本とも垂直に下を向いていた。
急がないと。
働き方改革が言われてずいぶん経つ。教師の過重労働が問題視されて、残業禁止、19時までに退勤厳守になっていた。
だが、部活の顧問なんてのを引き受けてしまうと、部活が終わるのが18時になってしまう。その間は本来の教師の仕事ができず、結局は休み時間や、今日のように退勤時間ギリギリまで仕事に追われることになる。
どっちが楽なのか、わからないな。
もちろん、保護者からの問い合わせや、時間外の対応はなくなったので、その分プライベートの時間が確保されていると言える。
だが、日常業務が減ったわけではない。
結局はその時間を確保しなければならず、本来は生徒に向き合う時間を、学校の事務作業に当てることになる。
そんな状態で、ちゃんと生徒に向き合えるのだろうか?
そんなことを考えていた時に、メールの着信があった。
この学校では、全生徒にiPadを配布し、課題提出や、家庭での学習結果、場合によっては小テストなどもiPadで実施している。紙での提出がなくなったのはいいが、全てPCか教師用のiPadで確認しなければならない。
メールには、「学力推移、管理者用通知」とあった。
最近は、学校や他の学習塾のサービスにもセキュリティ対策が施されていて、変なリンクや外部からの怪しいメールは激減していた。この学力推移のサービスもメールも通知のみでURLが送られることはなく、事前配布されたQRコードからアクセスする。
小菅は、いつものように、自分のiPadを取り出して、QRコードを読み込んだ。
<つづく>




