8ー8 ごめんなさい
「ほら、早く車に乗るんだよ。痛いの嫌でしょ?」
腕を掴まれて振り解けない。抵抗したくても体が動かない。なすすべもなく、車の後部座席に押し込まれそうになっていた。
掴まれた腕が痛い! 男の手がキモい!
男が、さらに力を入れて、車の中に押し込もうとした時だった。
「とりゃー!!」
ものすごい叫び声が聞こえたと思ったら、ガッシャーンと大きな音がして、男の車に何かが当たった。男の動きが止まった。見ると、植木鉢の破片が転がっている。
すると背後から、甲高い声が響いてきた。声の方を見ると、駅のライトに浮かび上がったシルエット!
「その小汚い手を放しな! アンタの脳みそ吹き飛ばすよ!」
あのシルエットは………。
「……七香!?」
男が私の手を放した。そのはずみで私の体は車の脇に倒れこんでいた。
「何しやが……」
男の恫喝するような言葉が終わる前に、ビュッという風を切る音を残して、男の体が車のドアに叩きつけられて、窓ガラスが砕け散った。
「アンタだね! 私の後輩をひどい目に合わせたのは!」
高く上がった右足が頭上にあった。その足を目線で追っかけると、七香そっくりの、いや七香よりもド派手なメイクの女性が半身の構えで立っていた。
射るような鋭い眼光。
手を上にあげた前羽の構え。
拳はにぎらず穿掌の形。
口元から聞こえる、鋭い呼吸音。
茶髪のロングが、全身からの闘気で舞い上がっているように見える。七香と同じくらいの身長のはずなのに、まるで巨人のような威圧感。
「七……九美……さん!?」
そこに立っていたのは、七香の四つ上のお姉さん、九美さんだった。渡瀬家最強にして、七香がこの世で唯一恐れる人物!
「紬ちゃん、大丈夫!?」
九美さんが姿勢を崩さずに声をかけてきた。それに被せるように、七香の声が聞こえてきた。
「小峰さん! これって正当防衛ですよね!?」
九美さんの後ろにいたお巡りさんが駆け寄ってきて、男を取り押さえる。と言っても、九美さんの一撃で男は完全に意識を失っていたけど。
<つづく>




