8ー7 助けて!パパ!
なんて答えたらいいかわからず固まっていると、また車のドアが開いて今度は男の人が出てきた。金髪で、ヨレヨレのシャツ、ダメージジーンズ、いかにもって感じ。二人は取り囲むような形で私の左右に立っている。それは逃げ道を塞いでいるような感じだった。
「本当に女子高生だったんだねー」
男が、軽い感じで声をかけてくる。女の人に言っているのか、それとも私に言っているのか……。
「ね、制服まで着ちゃってさ、あざといよね……おとなしそうな顔して。結構やるね、アンタ」
――二人とも何を話しているんだろう? あざといって何?
「……もういい?」
女の人が、男に、手をヒラヒラさせていた。
「ああ、お疲れ。一人みたいだし、後は俺一人でやるわ」
「じゃあね、最近のJKは怖いね……あざとくって」
そう言い残して女の人がスタスタと駅に向かって去って行ってしまった。
「あ、あの……」
女の人を追いかけるように声をかけようとした私を男が遮ってきた。
「おっと、キミの相手は俺ね。初めまして、俺『りんごちゃん』ね」
どうしたらいいかわからず、男をまじまじと見た。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。リラックス、リラックス」
「……男の人だったんですね」
「……ああ、あれ? んー、ネットの中では別人格って感じかな。ほら色々試してみたいしさ」
「……さっきの人は?」
「ああ、あれ? あれはさ、ほら、逆パターンもあるじゃん? キミが本当のJKかわかんなかったし、もしJKを引っ掛けようとしているキモ男だったら、ちょっと懲らしめちゃおうかなーって思ってさ」
「……帰ります」
「まぁまぁ、そんなこと言わずに。出会いに感謝ってことでさ。すぐそこに美味しいパフェ出す店があるから。車だからすぐだよ」
その男は、私の前を塞ぐように立ちはだかってきた。
「……どいてください」
「んー、そんな怖い顔しないでよ。リアルで遊びたかったんでしょ? Win-Winって奴じゃん。制服まで着ちゃってさ。いいよね、JKの制服って……」
「……騙したくせに」
「あ? 何?」
ものすごい力で、手首を掴まれ腕を持ち上げられる。
「放して! 大声出しますよ!」
「優しく言ってりゃ調子に乗りやがって」
次の瞬間、顔に衝撃が走った。左のほっぺたが焼けたみたいに熱くなり、ショックで目の前が真っ暗になる。足がガクガク震えた。
どうしよう。怖くて声が出ない。
「大人しくしていれば、優しくしてやるって言ってるんだよ」
そのまま、手を掴まれてグイグイ車の方までひっぱられる。
「もうちょっと派手な子かと思ってたけど、まあこれぐらい地味なのもいいよな」
男の気持ち悪い手がブラウスの隙間から侵入して、私の胸を乱暴に掴む。痛い!
「お、見た目以上にあるじゃん」
嫌悪感が背中を走る! 男の生臭い息が首筋に掛かる! キモい! キモい!
「……っ、やっ!」
ヤダ、誰か! 助けて!
パパ! パパ!
「終わったら家まで送ってあげるから、心配しないで、ほら」
終わったら? 終わる? 何が終わったら?ガチャッと無機質な車のドアの音が聞こえた。男の手が、制服の中、下腹部に這ってくる。
ヤダ!
ヤダ、ヤダ、私、このまま……。逃げないと! 声を出す!
緊急避難!
心とは裏腹に、体は氷のように動かなかった。
<つづく>




