↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JK紬のセキュリティ相談室2、女子高生がセキュリティの力で事件解決しちゃいます  作者: 雨後乃筍
8章 ネットグルーミングと未成年性被害

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
130/159

8ー4 ソーシャル・コミュニティ

 翌日、学校に着くなり七香のところに向かった。

 昨夜は、ギルドの公開チャット履歴を追っかけて、七香と『りんごちゃん』が、かなり親しく話をしているのを確認した。だが、そこに一部の不自然さも感じていた。


『りんごちゃん』の会話がステレオタイプすぎるのだ。高校生が知っていそうなテレビの話題、ファッション、受験……どれもこれも、インターネットで検索すればすぐに出てくる情報ばかり。


 ――『ハロー効果』と『返報性の原理』


 頭の中を、パパから聞いた単語が駆け巡っていた。決定的な証拠はない。同時に、相手がリアルな高校生だという証拠もなかった。



「七香、今流行っているソシャゲ、私も始めてみたよ」

 できるだけソフトな言葉にした。これも相手の警戒を解くテクニックだ。なんだっけ?ペーシングだっけ?


「そうなんだ? どしたの? 紬ってそういうタイプじゃないじゃん? 『受験生が』とか言ってたんじゃなかった?」


「うん……そうなんだけどさ。でね、七香のアカウントも見つけちゃったんだ。同じギルドに入ってさ」


 七香はギョッとした顔をしていた。


「え? そうなの? いつの間に……」


「昨日の夜ね……」

 スマホを差し出して、画面を七香の顔の前にだした。七香もスマホを取り出して、ゲームを起動していた。


「この『ココツム』っての? これあんたなの? 昨日ギルドに参加してきた?」


「うん、そう」


 七香がふーんって顔をして見てきた。


「……まあ、いいけどさ。紬がどうしようと自由だからね。でも一言あってもよくない?」


 ――なんか、今日の七香の言葉が棘のように刺さってくる。


「……うん、そうなんだけどさ……あのね、それでね……ソシャゲの人と会うの止めた方がいいよ」


「……なんで、知ってるの?」


「……昨日、見ちゃったんだ」


「見たって……あのゲームのチャット履歴?」


「うん」


「もー、言ってよね。そんな覗き見みたいなことしないで。一言聞いてくれればいいじゃん」


『覗き見』という言葉が心に刺さった。そんなひどい言葉………ムッとした。


「そういうわけじゃないけど……ね、でもとにかく会わないで。こわいよ」


「大丈夫。心配性だなー。同世代の女の子だよ? 受験の息抜きにちょっとダベるだけだから」


「同世代かどうかわかんないじゃん。性別だって嘘ついてるかもだし。本当のこと言っているって証拠だって……」


「そこら辺は、わかるのよ。アンタと違ってコミュニケーション能力高いから」

 七香が被せるように言ってきた。なんでだろう。今日は七香の言葉がいちいち癪にさわる。


 七香の顔をじっと見る。

「でもさ、話している内容って、ネットで検索すればすぐ出てくるような事ばっかりじゃん。パパが言ってたんだけど、これってOSINTって……」


 七香がスマホを乱暴に机に置いて、言葉を遮ってきた。


「またパパ? 本当に好きだねー」


「……好きとかって話じゃなくてさ」


「うるさいなー、私が誰と会おうと勝手でしょ? アンタに迷惑かけた? ちょっとウザいよ! あんたもだけど、あんたのパパも!」


 思わず、声が大きくなる。


「パパは関係ないでしょ! それにウザいって何! 私は七香のことが心配で!」


「それがウザいって言ってんの!」


「なっ! 私はただ!」


「私には私の事情ってもんがあるのよ。だいたいパパがいなけりゃ何もできないくせに保護者ヅラしないでくれる?」


 七香の言葉が、ズンっと響いた。『覗き見』『何もできない』、七香から出たネガティブなキーワードが、ドス黒い塊となって心の奥底に蠢いていた……。何も言い返せなかった。


「用事はそれだけ?」


「……七香のバカ……もうどうなっても知らないから……」


 静かに言うと、プイッと自分の席に向かった。そしてもう七香の方に目をやることはなく、手元の教科書に目を落としていた。。



 その日はずっと別の友達と行動して七香は離れて過ごした。帰りも別々。


 ――駅まで、こんなに遠かったっけ?


 一人で帰ることはたまにあるけど、学校から駅までこんなに遠く感じることはなかった。いつもは気にならない街のざわめきが不快な不協和音として耳に響いてくる。


 足が重い。後ろを振り返ってみたが、そこには誰もいなく、ただ自分の影が長く伸びているだけだった。まるで心の中のどす黒さのように。


 <つづく>


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。