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JK紬のセキュリティ相談室2、女子高生がセキュリティの力で事件解決しちゃいます  作者: 雨後乃筍
番外編7 レンズの向こう側の向こう

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番外編7ー5 定義の先

「シンプルに赤か青かでルール化することは、技術的にはできるよ。ただね、そのための前提条件がまだ十分に揃っていないんだ。誰が見ても納得できる明快なルールを作るには、あと数年は必要だろうな」


「ええっ!? そんなに長いの? 法律って、最初から完璧に決まってるものじゃないの?」


「現状の『個人情報』という概念の周りにはね、『感情論』や、主観的な要素が入ってしまっていることが多いんだよ。そんなノイズが多い状態で、万人が納得する完璧なDos and Don'tsなんて設計できるわけがない。信号機のように、誰が見ても明確な境界線が引けないとね」


「明確な線って……そもそも法律なんだから、最初から白黒明確に線引きされてるんじゃないの?」


「法律だからといって、明確な線引きがされているとは限らないんだ。だからこそ、弁護士とか裁判官とか、大変な苦労をしないとなれない職業があるんだ。もちろん放置流の中には信号のように明確なものもあるけどね」


「個人情報の法律は、それとは違うの?」


「残念ながら、現状は全く違うんだ。そもそも、ルールの前に『定義』自体が極めて曖昧なんだよ」


「定義……? 定義って、何の?」


「一体、どこからどこまでが『個人情報』に該当するのか、という根本的な部分さ」


「え? それって、わざわざ法律で難しく言わなくても明確じゃない? 私の名前とか、住所とか、電話番号とか、そういう特定の文字のデータってことでしょ?」


「じゃあ実際の条文がどうなっているか、そのまま読み上げてみるよ」


 パパは手元のノートパソコンを操作して、少し声を低くしてお堅い文章を音読し始めた。


「個人情報保護法の第二条第一項ではね――『生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)』と言っている。……さぁ紬、これを通しで一回聞いてみて、意味が理解できるかい?」


 パパの口から呪文のように流れ出てきた小難しい日本語を耳にした瞬間、目の前が真っ白になった。


 ――え、待って。……急にバカになっちゃったのかな? 言葉の意味が、頭の表面を滑っていって全然理解できない……。っていうか、なんで普通の会話の中に、音声として処理しきれない不自然な『カッコ書き』がそのまま挿入されてるのよ……!


「……ごめん、パパ。もう一回」


「ははは、やっぱりそうなるよな。初めて条文を聞いてフリーズを起こすのは、正常な反応さ。じゃあね、この難解な条文を、要素ごとに分解してみようか」


「……うん、お願い」


 今度は一言たりとも聞き漏らさないように、ぐっと顔に力を入れた。


 <つづく>


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