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JK紬のセキュリティ相談室2、女子高生がセキュリティの力で事件解決しちゃいます  作者: 雨後乃筍
番外編7 レンズの向こう側の向こう

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番外編7ー4 個人情報の先

「……しょっちゅう振り回されてばかりだけどね。でも、行動力と突破力だけは間違いなくピカイチだから」


「七香ちゃんの本当に凄いところはね、一見すると自分のやりたい事だけを我が儘に突っ走っているように見えて、結果的に周囲の人間をどんどん楽しい渦に巻き込んでいくところだよ。それでも誰一人として七香ちゃんに『理不尽に振り回された』とは思わせずに、いつの間にか『これは自分たちの問題だ』という当事者意識を持たせて、知らず知らずのうちに最強の協力体制を作らせてしまう。企業の『チームビルディング』研修のお手本としてそのまま使えるくらいだね」


「私は本当に、しょっちゅう振り回されている側だけどね……」


 呆れたように息を漏らしながらも、私は淹れたてのコーヒーを口に含んで小さく微笑んだ。


 たしかにパパの言う通り、いつも七香のワガママに巻き込まれてドタバタ劇に付き合わされているけれど、不思議と一度だって嫌な気持ちになったことはないのだから、本当に大したものだと思う。


「七香ちゃんは、きっと生まれつき『EQ(心の知能指数)』が高いんだろうな。上手に相手の言葉の裏にある意図や期待を敏感に感じ取り、それを自分のミッションの様に捉えて即座に行動に移していく。天性のリーダー資質があるよ。きっとご家庭でも、すべての中心にいるムードメーカーなんじゃないかい? 将来は会社の管理職や、あるいは教育者なんかにも向いていそうだね」


 パパの言葉を聴きながら、脳内で七香の個性豊かな家族を思い浮かべていた。七香がこの世で唯一、絶対に逆らえない最高管理者として恐れおののいている長女の九美くみさん。その九美さんと七香の二人から、日夜おもちゃのように都合よく扱われている不憫な弟の五樹いつきくん。そして、癒やし枠である末っ子の三琴みことちゃん。……たしかにあの賑やかな四人兄弟の中でも、七香が一番のムードメーカーとして全体を回しているのは間違いない。


「ねぇ、パパ。今回のファミレスの件で私も初めて知ったんだけど……個人情報保護法って、私たちが思っている以上にかなり複雑というか、解釈の境界線がすごく微妙なんだね。ただの白黒じゃないっていうか」


「そうだね、たしかに一般のユーザーにとっては非常に分かりづらい法律。とくに、実務における『Dos and Don'ts』の定義が曖昧だからね」


「……あんどーなつ?」


「ドゥーズ・アンド・ドンツ(Dos and Don'ts)だよ」


 パパは私の聞き間違いに目を細めて楽しそうに笑うと、ノートPCの画面から視線を上げて分かりやすく噛み砕き始めた。


「要するにね、組織や個人が『するべきこと(Dos)』と『してはいけないこと(Don'ts)』を箇条書きでリスト化して、運用を極限までシンプルにしたリストのことさ。身近な例を挙げるなら、街中にある『交通ルール』だね。あれは世界で最も洗練されたDos and Don'tsだよ」


「交通ルールが、Dos and Don'ts……?」


「そうさ。赤信号は『絶対に動くな(Don't)』。青信号は『安全を確認して動いて良い(Do)』。これ以上ないほど明確で、例外の余地がない。年齢や知識にかかわらず、処理を間違えようがないシンプルな設計だ。だがね、そこには『全員が道路交通法という共通のルールに従っている』という、膨大な前提条件が裏で共有されていて初めて成立している明確さなんだよ」


 私は手に持ったマグカップを両手で包み込み、法律というお堅いシステムに対する、当然すぎる素朴な疑問をパパに向かって口にしてみた。


「個人情報保護法も同じように、誰が見ても一発で赤か青か分かるくらい、もっとシンプルにルール化することはできないの?」


 パパの横顔に向かって、素朴な疑問をぶつけてみた。


 <つづく>


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