番外編6ー7 紬、自惚れる
「どぉ? こうして見ると、私って結構セクシー系じゃない?」
その日の夜、自分の部屋。今日清水の舞台から飛び降りる覚悟で買ってきた、スカイブルーのフリル付きのショーツをさっそく穿き、姿見の鏡の前でポーズをつけてみた。
「うん、間違いない、イケてる。紬ちゃん、ちょっと罪作りな可愛さだな~」
鏡に映る自分に向かって、お尻をちょっとクイッと突き出したり、少し前屈みになって胸を寄せてみたり。
こうして見ると、私だってスタイルは決して悪くないんじゃない? むしろ現役の女子高生としては抜群のプロポーションと言えるのでは?
よし、今度のお小遣いが入ったら、ブラジャーもお揃いのスカイブルーでセットアップさせてみようかな。お年玉の残高もまだ少し残っているしね。間違っても、パパに向かって「今度セクシーな高級ブラ買うから、追加の予算ちょーだい」なんて、口が裂けても言えないけれど。
気分がすっかり最高潮にアガってしまった私は、右手で人差し指を立ててピストルを作り、鏡の中の自分へと向けた。
「チッチッチ、そこのお兄さん。アタイに不用意に触れたら、大火傷しちゃうよ?」
「――君のハートを、ね・ら・い・う・ち♡ばきゅーん☆」
ガチャッ!!
無慈悲な音を立ててドアが開き、タブレットの画面に目を落としたパパがぬっと部屋に入ってきた。
「……紬、ちょっと今いいか……」
「……」
「……」
「――いやあああああああああ!!! パ、パパのバカァァァ!入る時はノックぐらいしてよ、年頃の娘の部屋ーー!!」
私はあまりの恥ずかしさにパニックになり、ベッドの上のクッションを全力でパパの顔面めがけて投げつけた!
「え? あ、ああ……すまない……」
バタン、とパパが大慌てで閉めたドアに、クッションがぼてっと当たって床に転がった。はぁ、はぁ、と、私の荒い呼吸の音だけが静まり返った部屋に響く。
鏡を見ると、そこには下着姿のまま、まだマヌケに指ピストルを構えたポーズの私が映っていた……。
――……うわっ! うわわわわわわわわっ!!
――……み、見られた!? 私のあの痛すぎる指ピストルと『ばきゅーん☆』のセリフ、完全に見られちゃったよね!?
あまりの羞恥心のオーバーフローに顔から本物の火が出そうになりながら、私はクッションに顔をギュッと押し当てて、己の愚かな自惚れ行動を激しく呪った。
――寝よう! 今のは全部夢! 忘れてもう寝よう!!
<つづく>




