番外編6ー5 紬、三千円の重みを知る
「ちょっと七香! この布面積の少ないショーツ、一枚で三千円もするよ!?」
「まあ、インポートだし、相場としてはこんなもんじゃない? というかあんた、普段一体いくらのパンツ穿いてんのよ」
「……しまむらで、三枚セット千円のヤツ……」
「それ子供用かダサパンじゃん! 今時の中学生だって、もうちょっとお洒落なやつ買うよ?」
「だって下着なんてただの消耗品でしょ!? 汚れたらすぐ洗濯機に放り込めるし……」
「ちゃんとおしっこした後は綺麗に拭きなさいよ……」
「毎回ちゃんと拭いてるわよ! 何のアドバイスよ、それ!」
売り場の陰でそんな不毛な会話を繰り広げていると、フィッティングルームのカーテンが開いて、明美ちゃんがコソコソっと嬉しそうな顔で戻ってきた。
「ねぇねぇ、紬ちゃん、七香ちゃん!お姉さんに測ってもらったら、私、なんと『Bカップ』だって!」
――び、Bカップ……!?
私の脳内は完全にバーストした。
――Bって、私と完璧に同じサイズじゃない!? 明美ちゃんが今十二歳だから……あと六年経ったら……!?
「ちょっと紬? あんたさっきから後ろで何をブツブツと呪文を唱えてんのよ」
「ねぇねぇ、ちなみに紬ちゃんは何カップなの?」
「えっ!? わ、私? 私は、まぁ、その……もうちょっとだけ、あるか……な……?」
私はさりげなく胸の前で腕を組んだ。気持ち、上方向へと持ち上げ気味に。明美ちゃんが、私の胸元をジーッと凝視してくるのが分かって、生きた心地がしない。
――七香! 助けてーー!
「明美、そういうプライベートな数値を人前で大声で言っちゃダメだよ。さあ、Bカップなら子供用よりも大人用のデザインの方が種類が豊富だからね。トップとアンダーのバランスに合った、とびきり可愛いやつを一緒に選ぼうか。この辺の棚だねー」
――小学生なのに大人用。私、現役JKなのに未だにグレーのスポブラ……。
七香が楽しそうにハンガーを滑らせている。私は完全に二人の話題から弾き出され、寂しくその背中を見つめるしかなかった。
――なんか、私だけ完全に蚊帳の外なんですけど。
<つづく>




