番外編6ー4 紬、七香を召喚
「お待たせー! 紬のピンチとあれば、火の中、水の中、イケメン行列の中! って、あれ? 明美も一緒だったの?」
人混みをかき分けて、ピンクのポニーテールを揺らした七香が華やかに登場した。
「うん! 今ね、紬ちゃんに最初のブラジャーを選んでもらおうと思って、ここに来たんだよ」
「……へぇー。ははーん、なるほどねぇ?」
七香は状況の瞬時に理解すると、案の定、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて私を凝視してきた。
――何よその目は! どうせ私は、いまだに色気ゼロのスポーツブラですよーだ!
「よっし、この七香様にすべて任せなさい! 明美ちゃんに最高にピッタリな、世界一可愛いブラを選んであげるからね!」
「やったー! 七香ちゃん、ありがとー!」
――あれ? ちょっと待って、私は?
「まずはね、ちゃんとお店のプロにサイズを正確に測定してもらった方がいいね」
――大丈夫。サイズ的なスペックなら、いくらなんでも高校生の私が、12歳の小学生に勝っている……よね?
明美ちゃんが、優しそうな店員さんに連れられてフィッティングルームのカーテンの奥へと消えていくのを見届けた後、七香が、くるっとコンパスみたいに鋭く私の方を振り向いた。
「で? あんたは自分の分、選ばなくていいの?」
「わ、私は別にいいの! 今のやつで十分に足りてるし!」
「足りてるってあんたねぇ……。百歩譲ってブラはいいとして、ショーツくらいは、こういう可愛いのにアップデートしたらどうなの? いつまでも『キティちゃんのバックプリント』って年齢でもないでしょうに」
七香が、呆れたように小さくため息をつきながらハンガーを差し出してきた。そこに掛かっていたのは、繊細な白いレースと淡いパステルピンクのリボンがあしらわれた、すっごく大人っぽいデザインのショーツだった。
「ええっ!? ちょ、ちょっとこれ、流石にセクシー過ぎない? 私に似合うわけないよ……」
「下着に似合うとか似合わないとかないでしょ! 自分が気に入ったものを選べばいいの。どうせ服の下に隠れて、誰に見せるわけでもないんだからさ。……それとも何? あんた、近々誰かに見せる予定でもあるわけ?」
「そ、そそそ、そんな! あるわけないじゃないの!!」
私は完全に動揺して、差し出された大人っぽいショーツをひったくるように手にとってみた。手のひらの上で、滑らかなシルクの生地が驚くほど軽やかに揺れる。
――って、これを、私が穿くの? ちょっと後ろ側とか、光に透けてる気がするんだけど。っていうか、待って。
値札を目にした瞬間、私の指先が凍りついた。
「三千円!? これ、たった一枚で、三千円もするの!?」
<つづく>




