第27話:共鳴
──いったいどれくらいの時間が経ったのだろうか。
私はユグドラシルと語り合い、気が付けば日は傾き始めていた。
この大きな大樹は、人と同じ心を持つ者として生み出された。そして、人類の叡智の結晶である汎用人工知能と融合し、人類に育成され守られているように”見せかけていた”。
人類が、この地球と大自然の中で共存できる存在かどうか、見守っていたのだ。
世界樹と呼ばれた巨大な生命体は、AIと融合し、膨大な知識と知恵を得た。
ユグドラシルと命名された生命体が、世界を救う使命を持って動き出す──
その歴史的瞬間を、私の両親は目の当たりにしていたに違いない。
そうであるなら、私もその使命に準じよう。ユグドラシルのために、この身を捧げよう。
そう決意した時、セリスは体が火照っているのを感じた。セリスの身体に宿る植物としての生命力が活発化していた。
夕日を背にしたセリスの体は、ほのかに光を放っているようだった。
『キミの体には、歴代のヴァルキリーの中でも、最もボクの遺伝子を多く組み込まれている。今、キミが自分の使命に目覚めたことで、キミとボクの魂が共鳴している……』
”なんだろう……ユグドラシルと繋がっているような感覚……”
『そうだよ。キミの想いはボクの想い。もっと強くボクのことを意識してごらん。ボクに届くように……』
ユグドラシルとの精神的な共鳴が深まり、AIの知性と植物の力が身体から満ち溢れるような感じがした。
セリスは、ユグドラシルの心に強く想いを寄せた。その瞬間、ユグドラシルの心の奥底に得体の知れない闇を感じ取り、思わず体を震わせた。
「なにこれ……まさか、あなたが急いでいた理由って……」
──その時、レオンは第1区画の展望台に訪れていた。
エレベーターに乗り、夕日に染まる外の景色を見つめていた。エレベーターは一気に加速し、上空へと駆け上がる。
『明後日の夜、第1区画でお時間をいただけませんか。せめて、直接ご挨拶したくて……』
『わかりました。ご馳走でもしてくれるのかしら?』
彼の頭の中では、昨日のセリスとの会話が思い起こされていた。
「……セリス主任」
私の居場所は研究所しかない。そう言っていたのに、なぜ急に辞めることになったのか……。
今までずっと師事し、支えてきた自分にはわかる。通話先の声は明るかったが、どこか違和感があり、明らかに無理をしているのがわかった。
何があっても動じず、研究に打ち込む姿が冷たく美しい、尊敬に値する理想の上司だった。しかし、一体何が彼女を動かしたのだろう……。原因は全くわからない。
けれどなんとなく、明日会わなければ、それが最後の日になるような気がしていた。
”俺が、あなたを守りたい”
そう、彼は想いの全てを伝えるつもりだった。たとえ断られても構わない。もしそれがあの人の答えなら、仕方がない。
しかし、他の男であることは絶対に許せない。
だから、彼女の中で、俺が最高の男であり続けなければならない。
彼女がこの先どこに行こうとも、俺が帰る場所を用意する。
彼女がこの先どうなろうとも、俺が支え続ける。
俺は誰にも負けないよう、進み続ける。
あなたが俺の理想であるように、俺もあなたの理想になれるように、少しでも、一歩でも……。




