第22話:蘇生と使命
私は、レンによって救出され、一命を取り留めた。……いや、正確には、一度命を落としたのだ。
この培養液で満たされたポッドの中で、私は再び命を吹き返した。
そして、ここで何が行われていたのか、すべてを理解した。
隠されたこの施設では、世界樹の遺伝子を持つ人間が生み出されていたのだ。
爆発と炎で焼けただれた身体は、植物が傷ついた枝葉を新しい芽で覆い、再び成長するように、自ら修復し再生していた。
有毒ガスによって深刻なダメージを受けていた細胞も、植物が土壌の毒素を分解して浄化するように、身体の内側から毒を取り除いていた。
そして、植物が根を深く張り、幹や葉を強く育てるように、その強靭な生命力によって壊れた臓器は新たな細胞で満たされていた。
私たち人類は、ユグドラシルを監視し、その成長を見守ってきた。
だが、真実はまったく逆だった……。ユグドラシルこそが、この大自然の中で、人類が適応できるかを見極め、監視していたのだ。
そう、私の両親はユグドラシルの遺伝子を持つ人間を生み出す研究をしていた。
レンと呼ばれる少年は、体内にユグドラシルの遺伝子を宿し、この世界を監視する使命を帯びて生まれてきた。
そして私は、レンによってユグドラシルの遺伝子を体内に受け継ぎ、再びこの世界に蘇生したのだ。
両親は純粋な人間だったのだろうか。
私は、植物人間の子として生まれたのだろうか……。いずれにしても、私は蘇生の際にユグドラシルの遺伝子が組み込まれたことは間違いない。
そうして培養液で再生した私は、完全に傷が癒えた状態でポッドから出た。どれだけの時間、眠っていたのかはわからない。幼い私は、長い眠りから覚めたような不思議な感覚に包まれていた。
なぜ研究室にいるのか、それまでの記憶は思い出せなかった。
そして、そこにレンの姿はなかった──
『……通信が回復したぞ!セリス主任、聞こえますか?』
ホログラムの映像が消えると、レオンの声が通信から響いた。
「えぇ……。こちらは無事です」
調査車両の中では、セリスの無事を確認し、歓声が上がった。
「生体反応が確認できました!」
「位置情報も特定できました!すぐに探索機を飛ばします」
「よし。こちらセントリー、救助隊聞こえますか」
『……こちら救助隊車両。10分ほどでそちらの森の入り口まで到着します』
「セントリー、了解しました。地割れに巻き込まれた隊員の位置情報を特定しましたので、そちらに共有します」
『救助隊、了解しました。では、我々は森に到着次第、現場に急行します』
『セリス主任!お怪我はありませんか?今、救助隊が向かっていますので、もうしばらくお待ちください』
「ありがとう。怪我はありません、ですが植物の根のようなものに囲まれて身動きが取れません」
『根ですね。承知しました』
セリスの周囲には既に切り株の姿はなく、リストには元のAIが再起動していた。
その時、遠くから観察ドローンが近づいてくる音が聞こえた。
”2台のドローンの音……。探索機ね”
ユグドラシルの探索機は2台でペアを組んでいた。
1台は小型で高機動の探索用ドローン。複雑な地形も自在に飛行でき、高性能カメラや赤外線センサーを搭載している。
もう1台は環境解析ドローンで、地質や植物の形状、有毒ガスの濃度を計測し、安 全確認を行う。生体反応検知センサーを備えていた。
セリスは安心すると同時に、過去の映像が頭に甦ってきた。
”ユグドラシル……あなたは私に何を伝えたかったの?”
セリスの脳裏には、両親の姿が鮮明に浮かんでいた。彼らもまた、ユグドラシルの意思に従っていたのだろうか──
この世界を監視する──
「それが……私の使命なの?」




