表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界少女と家族生活 〜たまたま契約したので、世界救ってみていいですか?〜  作者: わたぁめ
〜過去縛りし秩序から、解放してもいいですか?〜
122/123

第4章 回り始める運命 ♢2


 ところ変わって自室(じしつ)不知火(しらぬい)の言ったように(かえ)(ころ)にはすっかりと(おそ)くなっており、すぐに夕食(ゆうしょく)の時間となってしまった。


 母ちゃんには友達の見舞(みま)い、というか電話(でんわ)面識(めんしき)はあるので名前を出し、意識(いしき)(もど)ったことを(つた)えたら(おお)(よろこ)びしていた。



 他の皆にも一応(いちおう)連絡(れんらく)しておこうかと思ったが、その時はすでに8時を過ぎ。さすがにこれ以上うだうだしてたら、後に入浴(にゅうよく)(ひか)えてるフブキに(もう)(わけ)ないので、さっさと()ませてしまうことにした。



 風呂場(ふろば)から上がって体を()き、俺もフブキに(おし)えるために(はじ)めたドライヤーで髪を(かわ)かす。自室(じしつ)(もど)ってはフブキと入れ替わるようにしながら、俺はようやくベッドの上に寝転(ねころ)んだ。



 「............」



 フブキも入浴(にゅうよく)(ちゅう)で、他には誰もいない。こうやって(しず)まり(かえ)った中にいると、やはりいろいろと考えてしまう。


 頭に思い浮かんでくるのは、ようやくフブキが1人でお風呂(ふろ)に入れるようになるまでの日々(ひび)———ではなく、不知火(しらぬい)から聞いたさまざまな話だ。



 彼女が戦ってる理由(りゆう)。そして、その内にある(おも)いと、ジル•ドレさんとの(つな)がり。今思い(かえ)してみても、その(すさ)まじさは(ぬぐ)えない。



 俺も一度手痛(ていた)挫折(ざせつ)経験(けいけん)しているが、これは自分が引き起こした(あやま)ちだ。いきなり理不尽(りふじん)(うば)われた彼女とはベクトルが違う。



 (おのれ)の内にある(やさ)しさと覚悟(かくご)相反(あいはん)し、その自己(じこ)矛盾(むじゅん)にずっと(くる)しめられる地獄(じごく)。そんな中でも彼女は前だけを向き(つづ)け、目的(もくてき)()たすために足掻(あが)(つづ)けていた。



 ......ほんと、お前はすごいやつだよ。



 最初(さいしょ)はただのナルシスト女だと思っていたけれど、本当は俺なんかよりもよっぽど強くて、(やさ)しいやつだった。



 アイツがあの時俺たちを(たす)けようとしてくれたのって、多分相応(そうおう)覚悟(かくご)がいることだったんだよな。自分の(ちか)いをねじ()げて、その時だけでも仲間(なかま)として、最後(さいご)まで戦ってくれた。



 それなのに俺は、アイツにちゃんとした(れい)も言えずにいて、仲間(なかま)になりたいとか言っておきながら、ずっと勇気(ゆうき)が出せずにいる———



 「......(かなで)。出た」



 そうこうしている内に自室(じしつ)のドアが開かれ、髪から水気(みずけ)をしたたらせたフブキが入ってくる。


 その(あき)らかにいろいろと()十分(じゅうぶん)様子(ようす)を前に、俺はつい彼女の頭に()かれていたバスタオルを手に取ってしまう。



 「おいおい。何がどうしたんだよ、その髪? ......あー、(ゆか)もびしょびしょになってる」



 フブキが(ある)ってきた道のりには、ペタペタと水でできた足跡(あしあと)(なら)んでいた。()ろすとわりとボリューミーな髪だからかあまり水気(みずけ)は取れておらず、この様子(ようす)では多分ドライヤーもかけてはいない。



 ......やれやれ。



 お風呂(ふろ)もようやく(ひと)り立ちできたと思っていたのだが、まだまだ彼女には(おし)えることが多そうだ。



 「仕方ない。さっさと(もど)って、それどうにかすんぞ」


 「ん。ごきょーじゅお(ねが)いします」


 「どこで(おぼ)えたんだ、そんな言葉? ......まぁ、いいや。ドライヤーと髪の()き方を重点的(じゅうてんてき)にやっていくからな」



 分かっているんだか、いないんだか。



 「らじゃー」と、可愛らしく敬礼(けいれい)のポーズを取ってみせるフブキ。



 そんな彼女を連れ、なるべくこれ以上(ゆか)()らさないよう気をつけつつ、俺はさっき来たばっかりの脱衣所(だついじょ)へとやって来る。



 「......想像(そうぞう)以上にびしょびしょだな。さては、ろくに()きもしないで、バスタオルだけ頭に()いたな」



 よほど気持ちがいいのか、されるがままフブキは猫のように目を(ほそ)める。



 ......そういえば、前にリビングで母ちゃんがこれと同じようなことをしてるのを見た気がする。



 あの時はたまたまなんて思っていたが、もしかして髪だけは母ちゃんにやってもらっていたのか?



 だとしたら、今後(こんご)(ひか)えてもらうよう言っておかなくてはならん。じゃないと、フブキの成長(せいちょう)見込(みこ)めない。



 「......(かなで)


 「ん? どうした、フブキ?」



 突然(とつぜん)声をかけられ、俺は反射(はんしゃ)(こた)える。......しかし、いつになってもフブキが口を開くことはなく、何か言いたげな感じでずっと視線を彷徨(さまよ)わせている。



 「......もしかして、昼間(ひるま)のことか?」

 


 (しず)かに俺が()うと、フブキはこくりと(うなず)いた。俺は彼女の髪を丁寧(ていねい)()き取りながら、(つづ)きを(うなが)す。



 「お前は、あれを聞いてどう思った? 俺は、その、なんていうか......」



 (つづ)きを(うなが)してやるつもりだったが、俺の言葉はそこで()まり上手く出てこない。


 (あわ)れむのだって違うし、(かな)しむのも違う。()いて言うのであれば、マリスや【執行者(しっこうしゃ)】に(たい)して(いか)りを(いだ)くってことなのだろうが、それを俺が言うのもなんか違う。



 結局(けっきょく)のところ、俺もあの時言葉に()まったフブキと同じで、どうすればいいのかなんていう(こた)えは出ていなかったのである。



 だが———



 「私......あの時の(ほむら)、なんかいや。なんか......()()()()する」


 「もやもや?」



 なぜかムスッとしたような様子(ようす)を見せながら、フブキが口にしたのはそんな言葉。



 うん......なんか、思ってたのと違う。



 あまりにも(なな)め上からの返答(へんとう)が来てしまい、俺はさっきとはまた違った意味で言葉を()まらせてしまう。



 「......なぁ、フブキ? 一応(いちおう)言うけど、不知火(しらぬい)めちゃくちゃ大変(たいへん)な思いしてきたんだぞ? 今までこんなことを思ってやってきたんだぞって、そういった話で———」

 

 「知らない。もやもやする」

 


 (めずら)しいことに、フブキは表情(ひょうじょう)を変えぬまま拒絶(きょぜつ)姿勢(しせい)を見せ(つづ)ける。


 俺自身(じしん)はその意図(いと)が分からず首をひねっていると、ようやく彼女は言いたいことを言語(げんご)()してくれる。



 「(ほむら)も、(かなで)も......ずっと変。言いたいこと、言わない......だから私、ずっともやもやする」


 「!」



 それは、アホみたいにシンプルなことで、それ(ゆえ)に俺の頭には欠片(かけら)も出てこなかった言葉。


 今までになかった(まった)(べつ)視点(してん)からのそれに、俺の鼓動(こどう)はだんだんと(はや)さを()していった。



 (そっか......だから俺も、アイツもずっと(くる)しかったのか)



 こうしなきゃいけないだとか、それをやったらどう思われるとか考えて、自分の本当にやりたいことを()(うしな)う。


 余計(よけい)虚飾(きょしょく)をして、無駄(むだ)な回り道をしていた———端的(たんてき)に言ってしまえば、考えすぎていただけだったのだ。



 大事なのは、相手がどうこうじゃなくて自分がどうしたいか。自分がその相手とどうなりたいかに勇気(ゆうき)を出していくことなんだ。



 「......こりゃ(まい)ったな。まさか、パートナー(けん)(おし)え子であるお前に、(おそ)わることになるとはな」



 恋心(こいごころ)(いだ)きながらも、相手と自分を(くら)べて(つた)えることのできなかった不知火(しらぬい)仲間(なかま)になりたいという(ねが)いを持ちながらも、彼女の(かか)えるものに動揺(どうよう)()みだせなかった俺。......()謹慎(きんしん)だとは思うが、あまりにも()(もの)同士(どうし)で笑えてくる。



 フブキの言う通り。あの時(たが)いに思ってることを口に出していれば、こんな回り道はしなかった。



 シンプルなことではあるけれど、人間(にんげん)という生き物はそういうことに気づくのが苦手(にがて)だ。そういったものにちゃんと気づき、見ることができるのもまた、フブキだからこそできることなのだろう。



 だからこそ、俺は———



 「悪い、フブキ。髪きれいにしてやるつもりだったけど、多分また(よご)すことになる」



 ぽつりと(こぼ)された決意(けつい)に、少女はただ(しず)かな首肯(しゅこう)(かえ)した。












































 「............、よし。母ちゃんはいないな?」



 フブキの髪を軽く手入(てい)れしてやること、数十分(すうじゅっぷん)部屋着(へやぎ)から制服(せいふく)へと着替えた俺は、フブキを()れて玄関(げんかん)ドアを目指(めざ)す。



 ......時刻(じこく)はもう、夜9時過ぎ。普通(ふつう)に考えれば、学生が外出(がいしゅつ)するような時間は()えている。



 ましてや俺1人ならばともかく、(あき)かにまだ(おさな)い感じの女の子の同伴(どうはん)というこの状況(じょうきょう)。彼女が人間(にんげん)換算(かんさん)でいう未成年(みせいねん)に当たるかは不明(ふめい)だが、中学生くらいにしか見えない以上倫理(りんり)(てき)にもアウトでしかない。



 「こんな時間にどこ行くの、(かなで)?」


 「ギクっ!」



 ......見つかってしまいました。しかも、あんだけゆっくりと時間かけて来たのにこんなあっさりと!



 いや、落ち着け。母ちゃんはまだ俺が何をしようとしてるのかまでは、分かっていないはず。



 どの道、姿が見えなければ向こうだって(さが)すなり電話してくるなりはしてきたことだ。余計(よけい)心配(しんぱい)かけるよりかは、ここでそれっぽいこと言った方が都合(つごう)も良い。



 「いやぁ、ちょっと学園に(わす)(もの)しちゃったみたいで......俺ったら、うっかりしてたわ」


 「それって、(いそ)ぎで必要(ひつよう)なものなの? ......なら、私からイリーナちゃ———じゃなくて、先生に言っておこうか?」


 「あ、そこまではしなくていいよ!! 相手にも迷惑(めいわく)かかるし!!」



 ......マズい。さすがは母ちゃん、(するど)指摘(してき)。一瞬で用意(ようい)していた言い訳が(くず)されてしまった。



 ここからどう立て直す? いくらあのイリーナ先生とはいえ、俺が今やろうとしてることを知ったら絶対(ぜったい)止められる。母ちゃんに連絡(れんらく)されたらその時点(じてん)で終わりだ。



 かと言って、このまま母ちゃんを相手に論争(ろんそう)で勝つなんていうのは至難(しなん)(わざ)だ。言い訳をすればするほどに、ドツボにはまる未来(みらい)が見える。



 「......(うそ)。本当は不知火(しらぬい)ちゃんのためになんかしようとしてるんでしょ?」


 「え?」



 なんとかこの状況(じょうきょう)をと思考(しこう)錯誤(さくご)していた(おり)、母ちゃんからかけられたのはそんな言葉。


 唖然(あぜん)とする俺を置いてけぼりにし、母ちゃんはなおも俺の心中(しんちゅう)を当てにくる。



 「不知火(しらぬい)ちゃんが悪いやつに(きず)つけられて、あなたはずっとそれに(いきどお)っていた。でも、不器用(ぶきよう)なあなたは上手い方法(ほうほう)が思い浮かばなくて、不知火(しらぬい)ちゃんともすれ違って。フブキちゃんに言われて、やっと自分のやりたいことに気づけた......だいたいそんな感じでしょ?」



 もはやこれは、ずっと見ていたんじゃないかというレベルでちょっと(こわ)い。おかげで反論(はんろん)する気も完全(かんぜん)に消え()せ、俺は小さくため息をついた。



 「......当たってる。けど、なんで分かったんだよ?」


 「母親だから。......後、()いて言うなら、(かなで)のその目」


 「目?」



 こくりと(うなず)き、母ちゃんの(ひとみ)が少しだけ(やわ)らかいものへと変わる。



 「こうちゃんがその目をする時ってね、だいたい悪いやつに友達を(きず)つけられた時なの。俺のダチに手ぇ出したクソ野郎(やろう)はぶん(なぐ)る!! って、いつも感情的(かんじょうてき)になっちゃうの」



 くすくす笑いながら話す母ちゃんではあるが、正直(しょうじき)親父(おやじ)のそれは()められたようなことではない。相手が誰でどんな理由(りゆう)があろうとも、親父(おやじ)のやってるそれは()()らしの暴力(ぼうりょく)でしかないからだ。



 だから、今から俺のやろうとしていること———【執行者(しっこうしゃ)本部(ほんぶ)に乗り()んでアージの野郎(やろう)をぶん(なぐ)るっていう行為(こうい)も、俺は(ただ)しいこととは思わない。

 


 これはあくまでも、俺個人(こじん)()()らし。もしかしたら母ちゃんは、内心(ないしん)親父(おやじ)と同じことをしようとしてる俺を止めにきたのかもしれない。



 「......母ちゃんは、親父(おやじ)と同じことをしようとしてる俺を止めるのか?」


 「いや、全然(ぜんぜん)? むしろ、不知火(しらぬい)ちゃんにひどいことするようなやつは、ボコボコにしちゃえ!」



 (こぶし)をグーの形にし、()き上げるようにして言う。



 おい、それで良いのか母親。俺が言うのもなんだが、ここは止めるべき場面(ばめん)じゃないのか。



 「(かなで)くらいの(とし)はね、やんちゃしてなんぼなの。......ただ私が言いたかったのは、(かなら)ずここに(かえ)ってくること。どっかのアホこうちゃんみたいに、勝手(かって)にいなくならないでってことだけ」


 「母ちゃん......」



 強いように見えて、この人はとても(よわ)い。親父(おやじ)のせいで波瀾(はらん)万丈(ばんじょう)状況(じょうきょう)()れてしまったというだけであり、本当は極度(きょくど)(さび)しがりなのだ。



 俺は召繋師(リンカー)になって、親父(おやじ)のことを(さが)し出す。(さび)しがりのこの人がもう()かないで()むように、俺がなんとしても()(かえ)る。



 だからこれは......あくまでもちょっとしたハメ(はず)しあり、やんちゃした後も(かなら)ずフブキと共にここへ(かえ)ってくる。



 「———大丈夫。俺はあのバカ親父(おやじ)みたいに、いなくなったりしない。(かなら)ずアージのクソ野郎(やろう)をぶん(なぐ)って、不知火(しらぬい)とも仲直(なかなお)りして(かえ)ってくるよ」




 (とびら)の先には夜の(やみ)———それでも、朝の時と変わらない(あたた)かな微笑(ほほえ)みに見送(みおく)られながら、俺はフブキと共に家を出たのであった。





 次回投稿は、5月3日 日曜日 12:00 です。


 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ