表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界少女と家族生活 〜たまたま契約したので、世界救ってみていいですか?〜  作者: わたぁめ
〜過去縛りし秩序から、解放してもいいですか?〜
121/124

第4章 回り始める運命 ♢1


 「———ま、そんなこんなで彼女と契約を()たした私は、車イス生活(せいかつ)になった()わりに、復讐(ふくしゅう)のための力を()たのでしたとさ。めでたし、めでたし」



 ぱんぱんと、まるで(かみ)芝居(しばい)でも()めくくるかのように、不知火(しらぬい)が軽い調子で声を響かせる。


 話の内容(ないよう)とは裏腹(うらはら)のあまりにもあっさりとした終わりに、(いま)だに現実感(げんじつかん)()いてこない。



 「あ、あれ? もし、もーし? ......さすがに無言(むごん)だと、私も不安(ふあん)になってくるんだけど」



 ......正直(しょうじき)なところ、俺もフブキも()で言葉を(うしな)っていた。



 内容(ないよう)()いし、何が正解(せいかい)なのか(いま)だに思い浮かばない。



 よく小説(しょうせつ)とかで、なんて言っていいか分からないなどという表現(ひょうげん)を見たりするが、まさしくこういったことを言うのだと思う。



 「ふふっ、そんなリアクションをしてくれて私も(うれ)しいよ。君のことだからてっきり、なんだそんなことか、みたいな感じに(しら)けると思っていたから」



 おそらくは皮肉(ひにく)のつもりで言っているのだろうが、あんな壮絶(そうぜつ)な話を聞かされて、そんなふうに(かえ)せる方が正気(しょうき)じゃない。


 これまでの間、一体彼女がどれだけの恐怖(きょうふ)孤独(こどく)と戦ってきたのか———(たと)えその根本(こんぽん)にあるのが(あわ)恋心(こいごころ)なのだとしても、彼女が(あゆ)んできた道のりは、そこらの(あま)(こい)物語(ものがたり)とは訳が違った。



 「お前だって分かってんだろ。俺がそういうのに(うと)いっていうことくらい」


 「まぁ、そうだね。じゃなきゃ、あそこまでデリカシーがないわけない」



 言って、不知火(しらぬい)はいつもと変わらぬわざとらしい仕草(しぐさ)(かた)をすくめる。



 「ふっ......どうだい? これが私が———私とジル•ドレが君たちに(かく)していたもの。私が戦う理由(りゆう)の、その(すべ)てだよ」



 「実にくだらないだろう?」と、視線を落とす姿を前に、俺の胸にはまたチクリとした(いた)みが(ひろ)がった。



 ......実は前に、神藤(しんどう)店長(てんちょう)から他のメンバーがどうなったのか、少しだけ聞いたことがある。マリスの毒牙(どくが)にかかった【レジスタンス】のメンバーは当然(とうぜん)(ごと)反逆(はんぎゃく)容疑(ようぎ)をかけられ、そのまま全員(ぜんいん)学園を退学(たいがく)処分(しょぶん)となった。



 店長(てんちょう)の話ではそれぞれ(みな)(べつ)人生(じんせい)(あゆ)んでいるようで、大河(おおかわ)沙耶(さや)はデザイナー関係の専門(せんもん)学校(がっこう)田中(たなか) (はじめ)仕事(しごと)しながらバスケ三昧(ざんまい)。なんだかんだ2人とも順調(じゅんちょう)(すす)んでいるようで、(とく)田中(たなか) (はじめ)に関してはどこかのバスケチームに所属(しょぞく)しているらしい。


 2年生だった秋雨(あきさめ) 有栖(ありす)はまだ年齢的(ねんれいてき)高校生(こうこうせい)(うわさ)によれば実家(じっか)(あま)りある財産(ざいさん)を使ってどこかの進学校(しんがっこう)編入(へんにゅう)したようだが、本人(ほんにん)のミステリアスさも(あい)まって(いま)真相(しんそう)(やみ)の中だ。



 ただ、神藤(しんどう)店長(てんちょう)でも足取(あしど)りが(つか)めていないのが(のこ)りの2人。リーダーであった豪月(ごうづき) (あきら)と、今回(こんかい)(けん)戦犯(せんぱん)一番(いちばん)被害者(ひがいしゃ)とも言える畠中(はたなか) (すぐる)だ。



 あの事件(じけん)の後、2人は忽然(こつぜん)と姿を消し、やっと連絡(れんらく)がついた豪月(ごうづき)リーダーも『ちょっと(たび)をしてくる!』とよく分からないメッセージだけが(かえ)ってきただけ。その後もちょこちょこメッセージでやり取りをしているものの、何をしているのか、どこにいるのかというのだけは(おし)えてもらえていない。


 もう1人の畠中(はたなか) (すぐる)にいたってはそういったものすらなく、(さが)そうにももはや手がかりとなるようなものは皆無(かいむ)。今どこで何をしているのか、店長(てんちょう)からしてもお手上(てあ)げだった。



 神藤(しんどう)店長(てんちょう)が言うには、彼らのことは不知火(しらぬい)には(つた)えていない。(つた)えるのが(こわ)かったからなんて笑ってはいたけれど、多分彼女が自分のことを()めないようにという配慮(はいりょ)だったのだと思う。



 だけど俺は、どうしても考えてしまう。



 もしもこうなる前に、彼女にかつての仲間(なかま)たちが声をかけていたのならば、彼女の(いた)みも少しは(やわ)らいだのではないのかと。


 もしも、彼女の(おも)い人である店長(てんちょう)がずっと(そば)にいたのならば、彼女は復讐(ふくしゅう)の道など(えら)ばずに()んだのではないのかと。



 このすれ違いの根本(こんぽん)にあるのは、(やさ)しさだ。不知火(しらぬい)(ふく)めて、皆があまりにも(やさ)しすぎるせいでこんなことになってしまっている。



 「不知火(しらぬい)。俺は、そんなふうには......」


 「ああ、気を(つか)わなくていいよ。自分でも自覚(じかく)はあるからさ」



 話を聞く気がないのか、それとも自分(じぶん)自身(じしん)に強く言い聞かせているのか。俺の出かけた言葉が、彼女の独白(どくはく)によってかき消されていく。



 「ほんと、笑っちゃうよね。世界がなんだのと(うた)っておいて、その根本(こんぽん)にあるのは、大好きなあの人との時間を(こわ)されたことに(たい)する復讐(ふくしゅう)(しん)。ジル•ドレと契約したのも、君たちを使ってフブキくんの力を利用(りよう)しようとしたのも、全部(ぜんぶ)それが理由(りゆう)

 ......まぁ結局(けっきょく)最後(さいご)最後(さいご)でアージを(たお)せば何か変わるかもなんて(すが)って、自分で全部(ぜんぶ)台無(だいな)しにしちゃったんだけどね」



 段々(だんだん)弱々(よわよわ)しくなっていく彼女にフブキが手を()ばしかけるも、すぐにその小さな手を()ろす。表情(ひょうじょう)に出ないよう(つと)めているもののチャームポイントであるエルフ耳は()()がっており、気遣(きづか)ってはやりたいのにどうしていいのか分からないといった様子(ようす)だ。



 まぁ、無理(むり)もない。



 一見(いっけん)すると俺もフブキもただ()()まれただけのように思えるが、彼女においてはそれだけではない。


 (いま)だに経緯(けいい)不明(ふめい)だがフブキはずっと【執行者(しっこうしゃ)】たちに幽閉(ゆうへい)されており、戦いの中でそれを知った不知火(しらぬい)はレイに彼女の奪取(だっしゅ)(めい)じた。不知火(しらぬい)思惑(おもわく)は上手くいき、俺というイレギュラーがあったものの結果(けっか)(てき)にフブキは自由の身となった。



 しかし、さっきの独白(どくはく)事実(じじつ)であるならば、不知火(しらぬい)目的(もくてき)はあくまでもフブキの持つ力。【執行者(しっこうしゃ)】があれだけ(かく)したがってる力ともあれば相当(そうとう)代物(しろもの)なのだろうと、(はじ)めから利用(りよう)するつもりで接触(せっしょく)(こころ)みたのだ。



 「............、っ」



 フブキがこの関係をどこまで理解(りかい)してるのかは分からない。だが理由(りゆう)はどうあれ、今この瞬間に2人は利用(りよう)しようとした(がわ)とされた(がわ)へと()()ててしまった。その心中(しんちゅう)複雑(ふくざつ)なものになるのも必然(ひつぜん)だ。



 不知火(しらぬい)にとっては、フブキも(こま)の一つ。それは俺たちやジル•ドレさんに(たい)しても()たような認識(にんしき)で、何かあればすぐさま切り()てられるようにと、(むかし)のような本当の仲間(なかま)(つく)ることを(こば)(つづ)けてきた。

 


 ならば、不知火(しらぬい)にとっては(すべ)てが(うそ)だったのかと言われれば、多分違う。彼女もまた、そう思い(つづ)けなければならないことにずっと(くる)しんでいたのだ。


 店長(てんちょう)の話や、今までの彼女の姿を見ていれば分かる。彼女はおどけながらも冷徹(れいてつ)(えん)じ、それでいて非情(ひじょう)になりきれない(やさ)しさも持ち合わせてしまっている。



 だからあの時、不知火(しらぬい)は俺たちのことを(たす)けてくれた。自分が戦えないような状態(じょうたい)になってまで、最後(さいご)までアージに向かっていった。


 さっきはまるで自分のためみたいに言っていたが、あれは間違いなく彼女自身(じしん)(やさ)しさによるもの。(きず)つく俺たちのことを見捨(みす)てることができず、その渦中(かちゅう)にいたアージにも()()ぐな(いか)りをぶつけてくれた。



 だったら俺も、そんな彼女の(やさ)しさに(むく)いればいい。



 あの時(たす)けてくれてありがとう、と。(おこ)ってくれてありがとう、と。彼女の友人(ゆうじん)として、仲間(なかま)としてただ感謝(かんしゃ)()(つた)えればいい。

 


 だというのに———



 「............、ジル•ドレさんを見て感じてた既視(きし)(かん)って、お前と同じ姿をしていたからだったんだな」



 次に俺の口から出たのは、話を()らそうとしてるのがバレバレな誤魔化(ごまか)しの言葉。



 それを本当に(つた)えてしまっていいのか———()(てい)に言ってしまえばそうする勇気(ゆうき)が出なくて、俺はつい目を(そむ)けてしまう。



 「ほう。さすがだね、(かなで)。やっぱ君はそのことに気づいていたか」



 と、俺の心中(しんちゅう)を知ってか知らずか、なんだかいつも以上に胡散(うさん)(くさ)く聞こえる(しゃべ)口調(くちょう)で、不知火(しらぬい)はビシッと俺の方を(ゆび)差す。



 「お(さっ)しのとおり。彼女があの姿になったのは、私の(ねが)いと代償(だいしょう)影響(えいきょう)———何よりも(きら)いな私を()やしてやりたいという(おも)いと、私の足を()()んだからというわけだね」



 やけにハイテンションで、またもや物騒(ぶっそう)内容(ないよう)を言ってくる不知火(しらぬい)


 内容(ないよう)内容(ないよう)だけに俺は半眼(はんがん)すら(つく)れずにいると、まるでそれを面白(おもしろ)がるかのように彼女はジル•ドレさんと同じ色の(ひとみ)(ほそ)める。



 「ふふっ、最初(さいしょ)(ころ)なんてほんとにひどかったんだよ? 自我(じが)を持つのが(はじ)めてだとかで、何をするにもぼーっと()表情(ひょうじょう)で。しかも、あの時のジル•ドレはもっと髪が(みじか)かったから、本当に自分そっくりの人形(にんぎょう)を見ているみたいで気持ち悪かった。

 さすがにあれだし、せめて(ふく)だけでも(あか)るくと思って『じゃあ、全裸(ぜんら)になれば問題(もんだい)ありませんね?』って(かえ)された時は、ほんといろんな意味(いみ)殺意(さつい)()いたよね」



 他にも、ガスコンロの火に『こんなのは(ほのお)とは言えません』とケチをつける。『たまには運動(うんどう)をした方がいいですね』と不知火(しらぬい)に車イスごとランニングさせる。さらには、『人間(にんげん)というのは、動物(どうぶつ)死骸(しがい)()いて食べるものなのですか?』とファミレスの店員(てんいん)にクレームをつける等々(などなど)、どっかで聞いたことあるセリフも()じえながらジル•ドレさんのやらかしトーク(?)は(つづ)いた。



 中々(なかなか)かなりのひどさではあるものの、最初(さいしょ)(ころ)のフブキだって()たようなものだ。フブキの場合(ばあい)性格(せいかく)がおとなしめだったというだけで、そこが違かったらもっといろいろとやらかしていた。むしろ、今の天然(てんねん)(ねえ)さんなジル•ドレさんのことを思えば、これだって容易(ようい)想像(そうぞう)できるエピソードだと思う。



 不知火(しらぬい)が契約によって足の歩行(ほこう)機能(きのう)(うしな)い、ジル•ドレさんが彼女の日常(にちじょう)生活(せいかつ)補助(ほじょ)(つと)める。そうなった張本人(ちょうほんにん)がそれをやるってのも皮肉(ひにく)な話ではあるが、必然的(ひつぜんてき)一緒(いっしょ)にいる時間も()えたはずだ。

 


 不知火(しらぬい)境遇(きょうぐう)を思えば、最初(さいしょ)(ころ)はそれも苦痛(くつう)でしかなかったのだろう。



 だけど、ジル•ドレさんのことを話す彼女を———いや、今までの2人の様子(ようす)を見ていれば、もうそれだけの関係でないのは分かる。



 今の彼女にとって、ジル•ドレさんはもう復讐(ふくしゅう)のための道具(どうぐ)なんかじゃない。



 きっかけそのものが(いびつ)であったとしても、2人はもう唯一(ゆいいつ)無二(むに)家族(かぞく)なのだ。



 「......でもいつしか、そんな彼女もただの(うつ)しではなく、1人の女の子になっていた。見た目も違くなって、しかも私よりも綺麗(きれい)な笑顔ときたもんだ。いやはや、それだけでも(まい)ってしまうというのに、まさか彼女が君に(れん)———」



 と、突然(とつぜん)そこで言葉を止めた不知火(しらぬい)は、キザったらしい表情(ひょうじょう)(くず)し、(あわ)てたような、それこそ普通(ふつう)の少女がするかのような表情(ひょうじょう)で顔を上げる。


 

 「......違う。最後(さいご)のは違う! これは、その............、そう! これは彼女のプライベートに関わること、だから!!」


 「お、おう。分かったよ......」



 ......なんだかよく分からんが、相当(そうとう)聞かれちゃマズい内容(ないよう)だったらしい。ベッドから落ちるんじゃないかという(いきお)いで、まくし立てられてしまった。


 その数秒(すうびょう)()。ハッと我に(かえ)った不知火(しらぬい)は大きく目を見開(みひら)かせ、口元(くちもと)(かく)すようにしながら視線だけをこちらに向けてくる。



 「......とにかく、これで君との約束(やくそく)()たした。これ以上話すこともない。君もそろそろ自分の家に(かえ)るんだ———というか、(はや)(かえ)れ! このノンデリカシー男!!」



 なんだかいろいろと()に落ちない......しかも、(あき)らかに口調が取り(つくろ)えていないような気もするのだが、ツッコんだらめんどくさくなりそうだったので俺はスルーすることを(えら)んだ。




 次回投稿は、4月26日 日曜日 12:00 です。


 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ