さぁ、初めてのクエストを始めようか⑤
「?」
そうですよね。
急に話しかけられたらそうなりますよね。
でもボクだって話しかけた手前ここで引き返すことができるはずもなく言葉を続けた。
「なんだか悩んでいるように見えたので」
そう言うとカナさんは目を伏せてからゆっくりとため息をつくとなんだか諦めるように口を開いた。
「なんでわかったんですか?」
「なんとなく?」
「そうなんですか。
まぁ、うちの悩みっていうのは単純だよ。
このゲームをやり始めてからね、なんだかいろんなことをしてきたけれど、慣れないんだよね、人を倒すことに。
他のゲームだったらスキルとか現実と違う要素がたくさんあるから大丈夫だったんだけど、このゲームはね倒すときもなんだかリアルすぎてダメみたい。
なんだか怖いんだよね。
って初めて会った人にこんなことを言うのもおかしいんだけど、でも初めての人だから気軽に言えるのかもね。」
「そうかもしれませんね。
でもそれでもやるんでしょ?」
「うん。
うちはゲームくらいしかうまくできることないし、それにこのゲームって知れば知るほど面白い要素がたくさんあっていいなって思ってる。」
「でも殺したくないと?」
「ズバリそうだね。
たぶん気づいてると思うんだけどこのゲームの世界に出てくるNPCたちを殺してしまうとね、もういなくなっちゃうんだって現実みたいにね。
それをここの街で知っちゃってから怖くてここに閉じこもってるんだと思う。」
「そうですか?
本当に?
本当はこの街のために何かしたいんじゃないんですか?
このノスタイルの街を壊してしまった罪滅ぼしに」
「うぇ……
わかってたの?」
「はい、ボクは一応この街のトップにいた人をコテンパンにしてこの街を解放しましたから。
それにその中の一人が名前は知らないがゲーム好きの弓を持っている人が手伝ってくれたって」
「そっかー。
ということはうち捕まるのかな?」
「それはありえませんよ。
だってその手が証明していますから」
そうずっと疑問に思っていた。
弓使いのはずのカナさんがこんな鉱山の中で何か音をたてながら作業をするというその行為がおかしい。
でも弓使いのはずのカナさんの手は黒く汚れていて近くにはツルハシなどが落ちている点から見て、一人でこの鉱山を掘っていたのだろう。
ボクは無意識に懐から先ほど見つけていた青色の宝石を取り出すとカナさんに渡した。
「そしてこれが証明品ですよ。
さっき見つけました。」
「あ、ありがとう」
すると嬉しそうにしながらその宝石を受け取ってもらえて一安心したはずだった。
ここにもう二人いることを忘れていたためにそれは叶わなかったけれど、でもなんだか楽しかった。




