【第3章】宇宙艦隊オッパリオン090話「迎撃のリマ」
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YOMです。
今回は、リマの戦闘編!!
戦うメイドさんは翔平を、帝国の特殊部隊「61部隊」から守り切ることができるのか!?
迫りくる敵対勢力との共闘は続く・・・。
【〇九〇 迎撃のリマ】
「ど、どうなってるんだ?」
壁に備え付けられていた通信機から呼び出し音がなり、リマが応じていた。リマは短く「わかりました。できます」とだけ答えていたが、翔平にはなにが起こったのかわからなかった。
通信機の受話器部分を戻したリマは真剣な顔で翔平の方を見た。
「ショウヘイ様、少々緊急事態です。ショウヘイ様を狙う特殊部隊がこの艦に侵入したとのことです」
「えっ!?」
追っ手がついていたことは聞かされていたが、そこまで切迫した事態になるとは翔平も思ってもいなかった。
「ですがご安心ください。ショウヘイ様はこのリマがお守りいたします。少々騒がしくなりますが、しばしの間ご容赦ください」
そう言うとリマはぺこりと頭を下げた。そして何もない壁へと向かって行く。
「リマ?」
リマが壁の一部に手を触れると機械音がして壁が開きはじめた。開いた壁の奥にはいくつもの種類の銃器が架けられている棚が現れた。
「なっ、なんだこれ……?」
「非常時に備えた用意です。普段は景観を損なうので見えないようにしてあるんです」
そう言いつつ、リマは架かっていたベルトを取って腰に巻き、拳銃とナイフを装備する。そしていくつかの弾倉をベルトのポーチにしまい、小さめのサブマシンガンを手に取り、弾倉を入れる。その動作はなんの迷いも感じさせない、流れるような動作で行われた。
「リマ、大丈夫なのか?」
慣れた手つきではあるが、リマはどう見ても戦闘要員には見えない。
「こういう時のための訓練は受けています。一応」
「一応って……」
「ご安心ください。このトリアルダの艦の乗組員は全員武闘派と言われています。ヴァツルド様も現場主義の武闘派ですので特殊部隊ごときに遅れは取りません」
リマはいつものように自信ありげな表情でそう言う。――が、翔平にはにわかに信じられなかった。
「立てこもっていた方がいいんじゃないか?」
「最悪ドアを爆破されれば不利になります。幸いにしてこの先の通路は行き止まりになっているので、敵が来る方向は決まっています。なので迎え撃ちます。ショウヘイ様はさがっていてください」
「手伝えることはないからそうなるだろうけど……リマは本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫です。少なくとも、応援の戦闘要員が到着するまでは耐えられます」
リマはスタスタとドアのところまで歩いて行き、ドアを開けて外の様子を見ていた。
翔平は落ち着かず、ベッドのそばに立っている。こういう時、なにもできない自分がもどかしく感じてしまう。
「リマです。非常事態につき、生体通信の使用を申請します」
リマはひとりそうつぶやいていた。体内のナノマシンを使った通信の許可を得ているようだった。
「ありがとうございます。敵は……了解です。迎撃します」
リマはそうつぶやき、頷くとサブマシンガンの安全装置を解除し、ドアの影から廊下を覗き銃を構える。
「こちらへ向かっている人数は六名だそうです」
「そんなに!?」
「思っていたよりも少ないので安心しました。六一部隊という暗殺などを行う実働部隊だそうですが、ご安心ください」
「まったく安心できない……」
落ち着いているリマからは危機感のようなものがまったく感じられなかった。晩餐の時に料理を運んできていた時の方がまだ緊張していたくらいに見える。
「……了解です。対応できます。わたしはここを動けません。……はい、わかりました」
リマは細かくやり取りをしているようで、それは普段の会話と変わらない感じだった。
だが、突如リマの視線が鋭くなった。
「接敵します」
「っ!?」
同時にリマはためらうことなくトリガーを引き、銃を撃つ。
素早い連射の後、トリガーをはなすと翔平には耳鳴りが残った。
「リマ!?」
「二名のダウンを確認」
ふたり倒したという報告をリマは淡々としていた。あの短い掃射でふたりも倒したという事実に翔平は驚いた。
リマは身を隠すことなく、体の三分の一ほどを壁から露出して銃を構えていた。
「リマ、身を隠さなくていいのか!?」
「迎撃の場合は身を隠した方が不利になります。その間に部屋に侵入されてしまいますので」
「でもそれじゃリマが――」
「相手より早く撃てば問題ありません――」
言葉を切った直後、リマは再びトリガーを引く。
ドアの外からも銃声がし、リマの近くの壁に着弾するのが見えた。
「リマ!」
「大丈夫です。さらに一名のダウンを確認」
リマはその報告と同時、素早く弾倉を交換した。
「少し照準がずれてますね」
物怖じせずに銃撃戦をこなすリマを、翔平は半ば唖然としつつ見ていた。恐怖心を見せることもなく、さも当然のことをしているかのように戦っている姿は翔平にとっては異様にも思えた。
アーリアやフレイアたちとはまた違った覚悟を感じられる。
そんなリマだったが、突如翔平の方へと顔を向けた。
「二名ダウン確認――ショウヘイ様っ! 奥に隠れてください!」
「えっ!?」
リマはすぐに視線を廊下へと戻し、銃を掃射する。相手からも応戦されている様子だったがリマは身を隠すことはしない――そう思った瞬間、リマは部屋の中へと入ってきた。
「リマ!?」
「隠れてっ! ひとり撃ち漏らしました!」
そうは言われたが、隠れるような場所はない。
そんなことを思っていると、部屋の中に黒ずくめの男がひとり突入してきた。
「くっ!」
リマはすぐに銃を構えるも、黒ずくめの男の蹴りで銃を弾かれてしまった。だがリマは素早く体勢を整え、腰裏から拳銃を取り出して黒ずくめの男に向かい発砲する。
一発が男の肩を掠め、男はその衝撃で持っていた大型の銃を落とした。
すると男は腰からナイフを抜き放ちリマへと突きを繰り出した。
リマは発砲するが、当たらない。黒ずくめの男はリマへの間合いを詰め、鋭い突きを繰り出してくる。リマの発砲が続くが、リマは突如拳銃を投げ捨てた。弾切れを起こしたのだろう。
男はその隙を突くようにナイフを突き立てたが、リマは男の腕を脇に絡め取った。そして腕を捻るように男の体を床にたたき付けた。
「うぐっ」
男は唸り声を上げるが、ナイフは持ったままだった。
「浅かった!?」
リマがそう漏らした瞬間、男は体を起こし、リマの体の上に乗る。リマの喉元に向けてナイフを突き降ろすが、その腕をリマの手が止めた。
「このメイドふぜいが……!」
「ショウヘイ様! 廊下の方が安全です! そちらへお逃げください!」
「そ、そんなこと――」
見るからにリマが窮地に追いやられている。なにかできることはないか――そう思い周囲を見た時、テーブルの上に拳銃が置かれているのが見えた。マーラの銃は扱ったことがないが、オッパリオン製と大差はないかもしれないと咄嗟に考えた。
「リマ、今助ける!」
「ショウヘイ様いけない!」
翔平がテーブルの方へ走った瞬間、リマに乗っていた男はリマに向けていたナイフを翔平へと向けた。そしてためらうことなく、そのナイフを投げた。
「えっ――」
翔平がしまったと思った瞬間、自分の顔目がけて飛んで来たナイフが急遽空中で弾けた。
「なんだとっ!?」
ナイフを放った男が驚きの声を上げた瞬間、男の体がびくんと数度跳ね上がった。そして翔平は銃声がしていたことに気付く。
「ヴァツルド様!」
リマはすぐに立ち上がり、そう叫んだ。
その声につられて翔平がドアの方を向くと、銃を構えたヴァツルドが立っていた。
「ふぅ……わたしの射撃も捨てたものではないということかな」
ヴァツルドは翔平に向かい飛んでいたナイフを撃ち、続けざまにあの男を撃っていた。
突然のことに翔平が呆然としていると、数名の戦闘要員が部屋に入ってきた。
「侵入者全員の無力化を確認しました」
「ご苦労。リマ、お手柄だね。少々詰めが甘かったけど、よくやってくれた」
「申し訳ありません。殿下の手を煩わせてしまいました」
「これくらいの出番は欲しいところだったよ。ショウヘイ君が無事でなによりだ。艦橋の方はまだ戦闘中かな?」
ヴァツルドは銃をしまいながら戦闘要員のひとりに問いかけた。
「向かったチームが敵を無力化したとのことです。艦内は安全です」
「それは良かった」
戦闘要員のひとりは無力化された――要するに殺された侵入者を担ぎ、外に運び出していた。
リマは落とした銃を拾い、弾倉を抜いている。
「リマにも怪我はないかな?」
「はい。大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「それは良かった」
ヴァツルドはリマに微笑みを向けた。リマはどこか恥ずかしそうに俯いてしまっている。
「あの……助かりました。ありがとうございます」
翔平は自分が助けられたことを自覚し、ヴァツルドにお礼を言った。
「ショウヘイ君はもっと臆病になってもいいくらいだよ。と言っても、なかなかそう振る舞うのにも慣れが必要だろうけどね。それにしても――」
ヴァツルドは顎に指をかけた。
「追っ手の展開が思っていたよりも早く、そして強い。これはこちらの予定も考え直さないといけないな」
ヴァツルドは落ち着いた様子で、独り言のようにそう言った。
ヴァツルドの考える新たなる作戦は如何に!?
翔平は帝国同士の争いへと着実に巻き込まれていくことになる。
翔平が奈菜のもとへ無事に帰りつける日は来るのだろうか?
Zリーヌンスを巡る宇宙の戦いはなおも続いていく!!




