【第3章】宇宙艦隊オッパリオン084話「礼節と歓迎と」
本日も「宇宙艦隊オッパリオン」更新の時間がやって参りました!!
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YOMです。
本日のオッパリオンはマーラ帝国回。
惑星ベールヌ宙域での戦闘でマーラ帝国に奪取されたZリーヌンス(翔平)。
彼の前に現れた人物が語る事とは一体何なのか!?
第三章マーラ帝国の物語は続く。
【〇八四 礼節と歓迎と】
「私はヴァツルド=マグリシア=マーラシアンと言う。立場を言わせてもらえるならばマーラ帝国の第二皇太子になる」
「皇太子……」
翔平は思わず息を飲んだ。想像もしていなかったほどに身分の高い人物だった。
「本来ならおまえのような小僧が会うことはないお方だ。おまえたちの星に礼節があるならば最高位の敬意をもって接するんだな」
となりにいた海賊の親玉は不敵な笑みを浮かべながらそんなことを言った。
「――丹澤翔平です。ベッドの上から失礼します」
翔平はその言葉に従い、精一杯の礼節をもって答えた。するとヴァツルドと名乗った皇太子はにこりと笑んだ。
「ふむ、キミの星にも礼節はあるようだね。しかも悪くはない文化のようだ。安心したよ。とんでもない野蛮人だったらどうしようか、少し心配していたものでね」
「地球人は……マーラの人たちから見たら文明は遅れているかもしれませんが野蛮ではないです」
「地球人というのか。なんでも水平の銀河にある星のようだね。あんなところに文明があったことには驚いたよ。アルガノスには随分遠くまで行ってもらったものだ」
「殿下のご命令でしたからね」
海賊の親玉はアルガノスと呼ばれた。
「さて、ショウヘイ君、キミにはいくつか聞きたいことがあるのだけど、答えてはくれるかな?」
ヴァツルドは表情こそ穏やかであったが、その聞き方は翔平の退路を塞いでいた。ヴァツルドは翔平に対し、礼節をもって接している。捕虜のような扱いではなく、客をもてなすような部屋を与えてくれており、体も拘束していない。だから翔平がここで質問には答えないと言えば、翔平が無礼を振る舞うことになってしまう。
この人物は皇太子と言うだけありただ者ではないと翔平は思った。
「自分に答えられることなら答えます」
「うん、いい回答だね。礼を言うよ。まずは率直に聞かせてもらいたいのだが、キミはZリーヌンスを自在に操れるのかな?」
いきなり本題を突きつけられた。
「あの力は自分でもまだ全貌を理解しているとは思ってません。だから自在に操れる範囲は限られた範囲だと思っています。ですが安定しているかと言われると、安定して操れるとは言えないです」
「ふむ……限定的、ということか。報告を見る範囲ではオッパリオン製の艦船や機動兵器を強化できるようだが、他にはどういう能力があるのかはわかっているのかな?」
「――と言いますと?」
「具体的には――なにかを再生させることができるのかどうか、とか」
ヴァツルドがその質問を口にした時、アルガノスが険しい表情になった。
「ベールヌに降りた時、枯れ木を再生させる訓練をしました。水を発生させることもできました」
「ほほう」
ヴァツルドは興味深そうに目を輝かせる。
「聞いた感じですが、Zリーヌンスにはそういう能力があるようです」
「それは素晴らしい」
「ですが条件もあります」
「条件?」
「Zリーヌンス単体ではそれらの能力は発揮されません。母乳力と合わせることで、木の再生や水の発生ができるようになりました」
「ふむ……母乳力か」
ヴァツルドの表情からは笑みが消え、なにか思索する影が浮かび上がる。
「俺の立場から言わせてもらいますと、Zリーヌンスと母乳力の組み合わせは再生というより破壊の印象が強いですな。何度となく戦火を交えましたが、あの力は厄介でした」
「たしかに破壊的な力も強く持っているようではあるね。ショウヘイ君たちもそこは理解しているのだろう?」
痛いところを突かれる、翔平はそう思った。
「反論はできません。実際に自分たちは戦闘のためにZリーヌンスを使っていましたし、その力で突破できたピンチが何度もあります」
「ふふ、アルガノスはそれに随分苦労させられたものだ」
ヴァツルドはどこか楽しそうでもあった。
この人物には余裕がある、翔平はそう感じた。高貴な身分の人間はみんなそうなのかと思ったが、比べる対象がないのでわからないが、このヴァツルドという人物も凶暴という性格ではなさそうだと感じられた。
「Zリーヌンスの持つ艦船や機動兵器を強化する能力は我々にも作用するものなのかな?」
「あれは機械ではなくて母乳力を強化することによって起こってる結果です。ですから、強化する母乳力がなければ強化はできません」
「なるほど、そういうことだったのか。我々も艦船や機動兵器の動力には母乳を使っているが、母乳力というのはオッパリオン人の生体エネルギーだからね。我々にはないものだ、残念ながらね」
「マーラ帝国はオッパリオン人を拉致していると聞きましたが、それは本当ですか?」
「小僧、おまえの質問を許可した覚えはないぞ」
アルガノスが鋭い言葉を投げかける。
「まぁいいだろうアルガノス。彼にだって知りたいことはあるだろう」
「殿下がそうおっしゃるならば――」
「そうだね。我が帝国はオッパリオン人を集めている。母乳を搾り、エネルギー源とするためにね。おかげと言ってはキミはいい気分ではないだろうけど、おかげで帝国のエネルギー事情は大きく改善されたよ。命を救われた民も多いだろう」
命を救われたと聞き、翔平は一方的に批難することができなくなってしまった。
しかし、マーラ帝国という大帝国はそこまでエネルギー事情が逼迫していたのだろうか?
「オッパリオン人の拉致はともかく……帝国は以前から拡大を続けていたのではないのですか?」
「ああ、母乳を得る以前から帝国の覇道は続いていたよ。しかし内側に目を向けると華々しい勝利だけではないのだよ。裏から見れば帝国は慢性的なエネルギー、資源不足でね。植民星からの輸入なしでは民の生活をまかなうこともできないのが現実さ」
ヴァツルドの口から出た状況は翔平の想像とはまるで違うもので、意外なものだった。
「だから我々としてはエネルギー源の確保には必死でね。オッパリオン人はそこに現れた理想的なエネルギーだったというわけだよ」
「Zリーヌンスもそのために、ですか?」
翔平が探るように言うと、ヴァツルドは笑った。
「はっはははは、そう思うだろうね。それが正しい。だけど私の考えていることはそういうことではないんだ」
翔平はヴァツルドの笑う意味も、言っていることもわからなかった。
「ショウヘイ君、キミは実にいい態度で我々に接してくれた。これは文化的な交流ができるという証拠になった。私の話を聞いてもらうに値する知性があると判断したよ」
「それはどういうことですか?」
「このまま話てもいいが、それではいささかな趣に欠けよう。キミへのもてなしもある。晩餐を開くことにしよう。アルガノス、キミも一緒に」
「俺は遠慮しておきます。晩餐というガラでもないですからね。追跡への警戒もあるのでグアデリアへ戻ります」
「部下がキミを慕うのがわかる行動だね。では頼むよ」
「任されました」
アルガノスが言った追跡とは、オッパリオンからの追跡のことなのだろうか。だとしたら、もう提督たちが近づいているということなのだろうか。そんな思いが頭をよぎる。
「――というわけだ。追われる立場ではあるが、マーラの文化に触れてもらえる一席をもうけようと思うよ。ショウヘイ君はそれまでに身支度をととのえておきたまえ。オッパリオン文化の衣装ではこの艦の調度には合わないので。リマ、ショウヘイ君の身支度を手伝ってやってくれると助かる」
リマに向いてヴァツルドが言うと、リマは深く頭を下げた。
「かしこまりました。お手伝いさせていただきます」
「うむ。それではまた後ほど会おう」
「小僧、捕らえられたのが殿下だったことに感謝するんだな」
そう残すと、ヴァツルドとアルガノスは部屋から出て行ってしまった。
話は聞けたものの、肝心なことは明かしてくれなかった、そんな会話だった。
どこか緊張の糸が緩む気がする。
「ショウヘイ様、ヴァツルド様より晩餐に招待されるとは、とても名誉あることです」
リマはどこか興奮気味にそう言う。
「そう……なのかな?」
「そうです! とても名誉なことです! そのお手伝いができるとあって、わたしも感激です!」
リマは両手を合わせて目を閉じ、天井を仰ぎ見ていた。
とても感激できることのようだったが、翔平にしてみれば拍子抜けなことでもあった。
「でも、追跡を受けているんだろう? それに戦艦の中で晩餐だなんて……できるのか?」
「ご安心ください。このトリアルダはマーラ帝国が誇るとても頑丈な艦です。それに加えて周囲に護衛の艦もいます。それにこの艦は視察先での迎賓も行う任務があるので、そのための設備が備えられています」
と、リマは胸を張って誇らしげに説明した。
「ではショウヘイ様、晩餐へ向けて身支度を行いましょう。少しふらつくかもしれないので、気を付けてお立ち上がりください」
「わかった。……身支度って言っても、なにをするんだ?」
「マーラの作法に則ってもらいたいと思います。マーラでは大事な催しや、目上の人に謁見する前には必ず体を綺麗にします。ですので、ショウヘイ様には湯浴みをしていただきます」
「湯浴み? あぁ、風呂のことか」
スタティアやクァードにいた時も風呂には縁があったのだが、まさか帝国の艦に連れられてきてまで風呂に入ることになるとは思ってもいなかった。この文化は宇宙的にも広がっているのかと思うと、奈菜にも聞かせてやりたいという気持ちが出て来た。
「それとお着替えですが、こちらで用意させていただきました。サイズは検査の時に測定いたしましたので、ぴったり合うはずだと思います。オッパリオンの服装ではわたしたちの美意識とは合いませんので」
「……なるほど」
ヴァツルドやアルガノス、そして目の前のリマを見るに、マーラ人たちのセンスは地球人のそれに近いように感じられた。翔平自身はもう慣れてしまっているが、オッパリオンの服装は露出が多いのが特徴だった。
「では浴室でご案内いたします」
「ああ、ありがとう」
翔平はベッドから足を降ろして立ち上がる。少しだけ体が重く感じられたが、それは長く寝ていたせいだろうと思った。
「そういえば……俺はどれくらい眠っていたんだ?」
「およそ八〇時間ほどです」
「そんなに!?」
四日近くも経過していたことに驚きを隠せなかった。そんなに時間が経っていれば、あのベールヌから随分離れた場所に来ているのだろうと思われる。
「なにかお体に異常を感じることはありませんか?」
「いや、それはないよ。ふらつきもないみたいだし」
「それは良かったです。では、どうぞこちらへ」
リマに案内され、翔平は部屋から通じる浴室らしき場所へと案内されていった。
次回は、久しぶりのお色気お風呂回の予感!!
一体何が起こるのか!?
次回更新を待て!!
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宇宙艦隊オッパリオンを今後ともどうぞよろしくお願い致します。




