↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙艦隊オッパリオン  作者: 桐生スケキヨとYOM
【第1部】【第3章】「宇宙神話篇」
90/487

【第3章】宇宙艦隊オッパリオン083話「戸惑いの中」

いつも応援ありがとうございます。

YOMです。


宇宙艦隊オッパリオン本日も更新です!!

遂に第3章がスタートしてから第3話目。

今回から始まるのは、マーラ帝国に捕らえられた翔平のお話。

マーラ帝国で翔平は一体何を見るのか!?

【〇八三 戸惑いの中】


 水の上に浮いているかのように、体の重みを感じない空間にいた。

 自分はどうしたのか? 翔平はそう思ったが、なにも思い出せない。


『力を呼び覚ましたのですね』


 誰だろう。優しく、どこかなつかしい声が聞こえる。


『しかし、あなたの力はまだ不完全です。その力は正しく使い、使いこなさねば危険なものでもあります』


 どういうことだろうか?


『母乳の力を失えば、あなたの力は破壊の力と化してしまうでしょう。母乳の力なくして、あなたの力を使ってはなりません』


 母乳の力……?

 そうか、俺はオッパリオンの人たちと……。翔平はふとそんなことを思い出した。

 それならこうしてはいられない。こんなところにいる場合ではない。奈菜のところにも戻らないといけない。

 翔平は起き上がろうと体に力を入れる――が、力が抜け落ちていく。


『焦る時ではありません。あなたには力をより良く使うための試練が訪れることでしょう。それを乗り越え、力をさらに呼び覚ますのです』


 ――それが自分にできるのだろうか。


『大丈夫です。あなたは力に選ばれた存在――あなたが力を使いこなし、求めれば力があなたに応じてくれるはず……。今は静かに、流れに身を委ねるのです。そして感じたままに考え、真実を見つけ出すのです……どうか、あなたに母乳の加護があらんことを』


 待ってくれ――あなたは一体……?

 翔平は精一杯の力で手を伸ばした。



 ◇ ◇ ◇



 薄暗い場所だった。開いた目に、微かな光が入り、自分がどこかにいることがわかった。

 そして眼前には自分を見る紺碧の双眸があった。


「な、奈菜……?」


 乾燥している喉から搾るような声が出た。

 すると双眸の主はふと視界の外へと消える。


「目覚められました」


 少し離れた場所で、短くそう告げる声が聞こえたかと思うと、再び紺碧の双眸が自分を覗き込んだ。

 奈菜――ではない。見たこともない姿がそこにある。女性であるらしいことはわかるが、視界はぼんやりとしており、輪郭程度しかわからない。


「お気づきになられましたね。大丈夫です、危険な場所ではありません」


 徐々に視界が鮮明になってくる。同時に体の感覚も戻ってきた。

 自分は柔らかな場所に寝ているようで、ベッドの上であることがわかった。丁寧に布団までかけられている。


「ここは……」


 翔平は体を起こそうとしたが、覗き込んでいる女性にそっと体を押さえられた。


「もう少し横になっていてください。麻酔は抜けていますが、完全に抜けるまではふらふらしますので」

「麻酔……?」


 そう言えば――記憶をたどると、最後に思い出せるのは海賊の親玉に銃を向けられた場面だった。あの時に撃たれたのは実弾ではなくて麻酔だったのか、翔平はそう思い至った。

 ならここはどこだろう? 視界に入る限り、建物の一室なようで、どこか優雅な作りになっている。


「ここは宇宙艦トリアルダの貴賓室です。安全な航海ではありませんが、差し迫った危険はありません。ご安心を」


 この女性はものすごく丁寧にそう言った。

 紺碧の瞳に青みを帯びた肩より少し上で切りそろえられた髪、自分と同じような肌の色をしており、言葉や振る舞いには落ち着きと気品を感じられる。

 海賊――とは思えない。

 黒い長袖の服に、エプロンドレスのようなものを着ており、さながらメイドのように見えなくもなかった。

 翔平は深く考えず、とりあえず体の力を抜いた。どうこう足掻けるような状況ではない、そのことだけはよくわかった。


「俺は……捕まったのか……」


 ぽつりとそう言うと、メイドのように見える女性は小さく頷いた。


「ですがご安心ください。我々の主はあなたに危害を加えるつもりも、無下に扱うつもりもありません。あなたの身の安全は保証いたします」


 丁寧な口調でそう告げられるが、翔平にはにわかに信じられなかった。

 あの海賊は逃げるクァードの乗組員や、奈菜たちを人質にとった。卑劣な連中だと、翔平は思っていた。

 宇宙艦の中と言ったが、もしそうならゼータリオンはどうなったのだろう。そんなことが気になりはじめ、翔平は無意識に体を起こしていた。

 上半身を起こしたが、今度は止められなかった。少々意識がぼうっとするところはあるが、大分鮮明な意識になっている。


「キミは……」


 翔平がそう口にすると、メイドのような格好をした女性は一歩下がり、スカートの端をつまんで腰を落とす。


「リマ=フェルテンと申します。リマとお呼びください。我が主ヴァツルド様より、あなた様のお世話と警備をするよう言い渡されております」

「……丹澤翔平だ。俺はどうしてこんなところに?」

「ショウヘイ様と仰るのですね。お名前をいただきました。どうぞよろしくお願いします」


 この人物はどういう人物なのだろうか? マーラ人なのか? ならばなぜこんなにも礼儀正しいのか? そんな疑問が頭を埋め尽くしていく。


「ショウヘイ様は海賊艦グアデリアで確保された後、防疫検査を受けてこのトリアルダに移送されました。これはヴァツルド様の意思によるものです」


 何者かの意思で自分は海賊艦からこの艦に移されたようだった。ならばゼータリオンは海賊艦にあるのだろうか? どうにかして脱出はできないだろうか。


「失礼ながらお眠りになられている間に簡単な検査もさせていただきました。ショウヘイ様からはZリーヌンス反応が微弱ではありましたが検出されましたことに、我が主は大変満足されておりました」


 そう言い、リマはにこやかに微笑んだ。

 この人物は危険ではない、そう感じられる笑顔だった。


「照明を明るくします」


 そう言い、リマは天井に手をかざした。すると薄暗かった部屋はじわりと明るくなる。

 見渡すと広い部屋で、捕らえた敵を入れておくには豪華すぎる部屋だった。翔平は違和感を覚える。


「捕まえた敵を入れておくには豪華すぎる部屋な気がするけど?」

「我が主はあなた様のことを無下に扱うつもりはありません。我々の貴賓としてもてなすよう仰せつかっております」

「貴賓?」

「はい。ショウヘイ様は我々の救世主となられる力をお持ちのお方と聞いております。そのような方に失礼がありましたら、我々マーラの失態だろうと主は仰っておりました」

「マーラの失態……?」


 オッパリオンへ侵攻に、火星ステーションを襲い、自分を狙ってきた海賊を送り込んだ本人らしからぬ言葉に翔平は戸惑った。

 これがマーラ人の感覚なのかと。今さらに失態もなにもないのではないかと。

 そして、このリマというマーラの女性は絶えずにこやかにしている。


「マーラは誇りと格式のある、宇宙でも由緒正しい民族です。その民族をショウヘイ様にご理解していただこうと、我が主はお考えになっています」

「平和に行こう、ってことか」

「ショウヘイ様をここにお招きするに当たっては少々手荒なこともしたと、アルガノス様は仰っておりました。事をなすには綺麗事だけは済まないことはわたしも承知しております。ショウヘイ様にすべてを許してもらおうとは思っておりませんが、わたしたちマーラのことも知っていただければと思います」


 リマはそう言いながら、恭しく頭を下げた。

 あまりにも整ったリマの所作に翔平は恐縮してしまう。


「理解……。前に海賊の親玉と少し話したことはあるけど、マーラの人たちがなにを考えてるのかはよくわからなかったよ。あまり話す時間もなかったし」


 翔平がそう言うと、リマはきょとんとした顔になった。それに翔平が首を傾げると、再びにこやかに微笑む。


「ど、どうかしたのか?」

「いえ。ショウヘイさんは話し合いの通じるお方だと思いましたので。安心しました。オッパリオンの人はとても荒々しい気性の人が多いと聞きましたので、ショウヘイさんもそうなのではないかと覚悟していました」

「そんなことないよ。オッパリオンの人たちも、たぶんキミたちが思ってるほど荒々しくもないよ」

「そうなのですね。ではマーラ人もショウヘイ様が思ってるような民族ではないこともお覚えください。中にはそうでもない人もいますが、マーラ人は……少なくとも我が主ヴァツルド様と賛同するわたしたちは平和を重んじています」

「……わかったよ。話し合いをするっていうのなら俺も応じる。地球人だってなんでも暴力で解決しようってわけじゃないし、俺も話し合いで済むならそっちの方がいいと思うから」

「ありがとうございます」


 そう言い、リマは安心した自分の胸に手を置き、目を閉じた。

 翔平もとりあえず自分に危害が及ぶことはないと思い、ひとまずの安堵を得た。

 だが問題はある。ここで話し合いをしたとしても、自分はオッパリオンへ帰らねばならない。奈菜のことも気になるし、自分を助けに来ようとするであろうフレイアたちのことも気になる。

 自分の話し合いでなにかが解決するとも思えない。

それにZリーヌンスについてなにかを期待しているようにも思えたが、母乳力なくしてZリーヌンスの真価は発揮されないこともわかっている。マーラの人たちはどのくらいZリーヌンスのことを知っているのだろうか。

 いろいろな思いが頭をよぎるが、今の自分にできることはあまりにも少なかった。そんな現実を受け止めざるを得ないと思うと、部屋のドアが開く。

 リマはすばやく壁際へ移動し、頭を下げる。

 入って来たのは海賊の親玉と、一目で身分が高いとわかる衣装をまとった長身の人物だった。


「リマ、ご苦労」


 その身分の高そうな人物は壁際のリマにねぎらいの言葉をかける。


「もったいないお言葉です」


 リマに微笑みを向けたあと、そのままこちらへと視線を向けてくる。


「やぁ、手荒なまねをしてすまなかったね。だがそれもキミをここに連れてくるためのこと。まずはその非礼を詫びたい」


 身分の高そうな人物はそう言うと、軽く目を閉じた。

 この人は今までのマーラ人とは違う――翔平は直感的にそんなことを感じた。


マーラ星のメイドさんであるリマ。

新キャラの彼女は一体どんな女性なのか!?

そして、マーラ星と翔平を結びつける彼女はどんな活躍を見せるのか、ご期待ください!!


コメント・評価・感想などお待ちしております。

宇宙艦隊オッパリオンを気に入ってくださった方いらっしゃいましたら、お気軽にお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。