【第2章】宇宙艦隊オッパリオン079話「追いかける側」
宇宙艦隊オッパリオン第079話目の更新がやって参りました。
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YOMです。
今回は一気に2話更新で第2章終幕です。
翔平は奈菜達を守る為、海賊へと投降した。
翔平を奪われたオッパリオン人一同はどうするのか!?
波乱の第2章ももう終わりは目の前。
【〇七九 追いかける側】
スタティアへの内火艇の着艦を見届けたあと、フレイアもシェアトスを着艦軌道に乗せた。スタティアへの着艦は訓練で何度か経験があり、はじめてのことではなかったが少し緊張してしまった。
クァードの格納庫と比べるとスタティアの格納庫は広く、搭載できる機動兵器の数にも余力があった。残ったクァード隊の機体の収容にも問題はなく感じられる。
フレイア機が着艦すると後を追うようにアーリアのウィルギヌスが着艦してきた。
それを見たフレイアは機体をオートにし、コクピットハッチを開く。
「アーリア提督!」
ウィルギヌスの方に向かい、ハッチを蹴って身を投げ出す。ウィルギヌスはまだ動いており、向かってくるフレイアを手で受け止め、胸部まで持って来た。
ハッチを開き、アーリアが姿を現す。
「フレイア、まだ機体が固定されてないでしょう? なにをしているの」
「すみません。でも早く伝えたくて。海賊艦が跳んだ方向は記録してあります。追撃を急いでください」
フレイアは自分でもわかるくらいに早口になっていた。
「残りの海賊艦も撤退をはじめてるわ。わたしたちもすぐに追撃に入る予定よ。けど、ここまでの無理なジャンプでスタティアもアスタリアもすぐのジャンプはできないの」
「でも――とにかく急がないと」
「フレイア、大丈夫よ」
「でも――」
「フレイア」
「あっ――」
アーリアは興奮気味のフレイアの顔を、自らの胸に押しつけるように抱いた。
「ア、アーリア提督……!?」
「少し落ち着きなさい。あなたらしくないわよ」
「でも――」
「焦る気持ちはわたしにもわかるわ。でも、こういう時こそ冷静にならないと取り返しのつかない事態を招くことになる――それはわかるでしょう?」
アーリアの腕にはかすかに力が込められていた。フレイアはそれだけで動けなくなってしまう。
「……わかります」
「この宙域では長距離のジャンプはできない。海賊艦もすぐにジャンプを解除して別の場所に向かうことになる――そうしたら、追撃は不可能になる」
「…………」
アーリアの胸に顔を沈めたまま、フレイアは頷いた。
「そうなったらどう見つけるか。今度は今まで海賊がやってきたように、わたしたちがZリーヌンス反応を見つけて、追いかけることになるわ」
「もし……マーラ星に帰られたら?」
フレイアは自分でも驚くほどに弱音を吐いていた。アーリアの前だと気負わず、こんな言葉が出てしまうのだと思った。
「それでも行くわ。そこにショウヘイが待っている限り、わたしたちはどこへだって行く。あなたもそのつもりでしょう?」
そう言った時、アーリアの腕から力が抜けた。フレイアは思わず顔を上げ、間近にアーリアを見る。
「行きます。そのつもりです」
「――なら大丈夫。あなたがいてくれればどんな場所でも行けるわ。そのためにはまず、少し体を休めなさい。母乳力だって無限じゃないわ。あなたは母乳を使いすぎてる」
「わ、わかりました……ありがとうございます」
アーリアは落ち着きを戻したフレイアに笑みを向けると、今度は眼下に視線を向けた。
「心配している人はまだいるわ」
「あっ――」
移動を終えたウィルギヌスの足下には奈菜とミィアルーンの姿があった。そして格納庫にはスタティア隊とクァード隊の機動兵器が次々と戻ってきている。
そんな中、奈菜はこれ以上ないというくらいに不安な表情をこちらへ向けていた。
「ナナ、あなたも大変な目に遭ったわね。怪我はないかしら?」
アーリアはウィルギヌスを飛び降りながら奈菜にそう声をかけた。フレイアもアーリアの後を追い、ウィルギヌスから飛び降りる。
「アーリア提督、翔平はすぐに助けられますか?」
奈菜は率直な質問をアーリアに投げかけた。
「すぐには無理だけどショウヘイは必ず連れ戻すことを約束するわ。全オッパリオンの総力を決しても、必ず。でも今すぐにできるわけではないの。隠さないで話すと今のわたしたちに主導権はないわ。チャンスを待って、それからの行動になるの」
「そ、それじゃあ翔平はその間……」
「帝国の勢力下におかれることになるわ。でも安心して、帝国もすぐにショウヘイをどうこうするようなことはないと思うし、危害を加えることはないと思うの。ショウヘイは貴重な人物だから、そこは安心して」
アーリアは奈菜の肩に手をおき、しっかりと届けるようにゆっくりとそう告げた。
奈菜の顔から不安は消えなかったが、それでもいくらかは希望が持てたという感じだった。
「博士、マーラ星まで離れてもZリーヌンスは検知できるのかしら?」
「離れていても大雑把な方向くらいは検知できるよ。そこから近づけば詳細な位置もわかるようになる。大丈夫、ショウヘイの救出には問題ない精度で検知できるはずだよ」
ミィアルーンも翔平救出には前向きだった。
「ならよかったわ。広域でZリーヌンスを探しましょう」
「そうしよう。――それと提督、ひとつお願いがあるのだけどいいかな?」
「なにかしら?」
「ショウヘイがベールヌからロボットを連れ帰ったんだ。どうやら貴重なデータを持っているらしいのだけど化石級に古いロボットでね。データの保全のためにも新しい体に入れ替えてやりたいんだ。人型ロボットの体の、できれば新しいものを用意してもらいたいんだ」
「わかったわ。でもロボットはスタティアにも積んでなかったわね。早急に手配させることにするわ」
「ありがとう。なにか役立つ情報があるはずだよ。――ナナ、そんなに心配しないで大丈夫だよ。チャンスは必ず来る、そしてこの人たちはそのチャンスを逃すようなことはしないから」
ミィアルーンも奈菜を元気づける。
それを見て、フレイアは想う。自分の力が至らなかったということを。
「ナナ――ごめんなさい。ショウヘイを守り切れなくて」
「ううん、フレイアはいつもよくやってくれていたよ。だからフレイアがあやまるようなことはないから。だからショウヘイを助けるのに協力してね」
「そ、それはもちろん」
フレイアは奈菜の反応に少し驚いた。奈菜から叱責を受けてもしかたがないと覚悟をしていたからだ。
本当は誰よりも不安なのは奈菜のはずなのに――奈菜はフレイアが思っている以上に強く、そして自分たちを信用してくれている。
それなら――自分はその信用に応えることをしなければならない。
「任せてナナ、ショウヘイはあたしが必ず連れ戻すから」
「うん、お願いフレイア」
そう言い、奈菜はぎゅっとフレイアの手を握った。
フレイアも無意識的にその手を包み返す。
『機動兵器部隊およびクァード内火艇の収容を確認。撤退していた海賊艦はジャンプに入りました』
艦内アナウンスが流れるとアーリアは天井を仰ぎ見た。
「アーリアです。進路を追撃方向へ。スタティアとアスタリアはジャンプ可能になるまでそちらへ進行してください」
アーリアは艦橋に通信を入れているようだった。
「このまま追撃するんですか?」
フレイアが問うと、アーリアは顎に手を当てる。
「海賊艦もこのままということは考えられにくいわね。どこかで帝国軍と合流する可能性が高いわ。そうなるとこちらの戦力で向かうのは厳しいわね……」
優秀とは言え二隻で追撃に入るには戦力としては脆弱だった。それはフレイアにもわかる。
アーリアが決断に悩んでいると、再び艦内アナウンスが流れる。
『アーリア提督、惑星ラメルよりクァードにあてた緊急通信が入っております。スタティアで受信しましたがラメルのマシ長が直接お伝えしたいことがあると』
「わかったわ。通信を繋いで。フレイアにも。フレイア、体内通信で受信できるわね?」
「できます。ありがとうございます」
『回線繋ぎます』
フレイアの体内ナノマシンが艦の通信装置と接続され、回線が開く。
『ラメルのマシ長だ。アーリア提督、お久しぶり』
「マシ長、お久しぶりです。こちらの者たちが世話になりました」
『それはお互い様だよ。しかしさっそくだけど伝えたいことがあるのだ。そちらではなにかよくない状況になっている、ということは間違いないかな?』
マシ長はこうなることがわかっていた、フレイアはそう思った。しかし予言とはそういうものであり、マシ長になにか責任があるわけではない。
「ええ、あまり良い状況ではないですね」
『うむ。しかしそなたらならば乗り越えられよう。しかしこれから伝えることは――わたし自身もいささか信じられん内容でな』
「信じられない?」
『どうやらオッパリオンに留まらず、この宇宙全域に危機が迫るという啓示を得てな。なにか大きな災いが動きはじめる、ということなのだ』
フレイアとアーリアは思わず顔を見合わせた。
「それは具体的にはどういうことなのですか?」
アーリアが問う。
『それが詳しくはわからないのだ。ただ、巨大な力が、Zリーヌンスに匹敵する力が破滅をもたらすという啓示なのだ。具体的なことはなにひとつとしてわからないのだが、今のそちらの状況となにか通じることはないか?』
「ショウヘイが帝国の手に落ちました。それとなにか関係があるのかとは……」
アーリアが言う。
『あの青年がか……。それはよくない。だがその件とこの件は別なような気がするな。それにもうひとつあるのだ。ショウヘイはそう遠くなく新たな力を得る、というのがある』
「新たな力?」
フレイアが思わず言葉を漏らした。
『うむ。こちらも詳しくはわからぬが、もしかしたらこのたびの別れはそのための別れになるのかもしれんな』
予言とは不確かなものである――フレイアはそう思っていたが、今回は深く信じたくなる内容だった。
『こちらが伝えたいことはそれだけだよ。宇宙全域の脅威に備え、帝国の動向を見る必要があるはず。今は焦らず、力を整えるべき時なのかもしれん』
「わかりました。ありがとうございます、マシ長」
『近くに来たらいつでも寄ってくれ。またなにか見たら伝えるよ。それでは忙しいところ失礼した』
そう残し、通信は切れた。
「アーリア提督、これは――」
フレイアが言うと、アーリアは頷く。
「今は備える時かもしれないわね。……一度オッパリオンへ戻りましょう。そして万全の体制でショウヘイの救出に当たれるように準備をするわ」
「わかりました。――ナナ、マシ長が言うにはショウヘイは無事で、新しい力を得ることになるそうだよ」
「え?」
奈菜は目を丸くした。
「だから心配はない。たぶんだけ、あたしの直感もショウヘイはすぐに戻りそうな気がしてきたから」
「わたしには待つことしかできないけど……フレイアにはいろいろできるから。お願い」
「ナナが待ってることも大事だよ。その思いはショウヘイにきっと通じるはずだから」
奈菜を励ますくらいにフレイアにも気力が戻っていた。
「アーリアよりスタティア艦橋、針路を変更します。針路をオッパリオンへ。スタティアとアスタリアは一度オッパリオンへ帰還します」
アーリアのその指示の直後、艦体が大きく傾いた。針路変更のための回頭だった。
「アーリア提督、あたしもスタティアに配属させてください。この艦で追いかけるんですよね?」
「それなんだけど、心配しないで大丈夫よ。クァードはなくなってしまったけど、クァード隊が解散されるわけではないわ。本星で頼んでおいたものもあるから、帰りを楽しみにしていて。あなたの希望は違う形になるけど、万全の状態で叶うことになるわ」
「万全の状態で……」
アーリアの意味深な笑みに、フレイアはこれ以上問いかけることはできなかった。
だが、アーリアは自分たちへの機会も考えてくれていることに間違いはないと確信は得られた。
例えどんな困難が訪れようとも、ショウヘイは必ず連れ戻す――連れ戻してオッパリオンの平和も手に入れる、フレイアはひとりその思いに胸を熱くした。
自分はまだ戦える――強くそう思い至った。
次話にて宇宙艦隊オッパリオン最終回!!
宇宙艦隊オッパリオンを応援してくれたすべての方に感謝感激雨霰!!




