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宇宙艦隊オッパリオン  作者: 桐生スケキヨとYOM
【第1部】【第2章】「Zリーヌンス篇」
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【第2章】宇宙艦隊オッパリオン080話「蠢く者たち」

宇宙艦隊オッパリオン第2章最終話更新です!!

スケキヨ氏と歩んできたこの1年、遂にオッパリオンは第2章完結へと進みました。

続く第3章も只今準備中ですので、いつも応援してくれている皆様、引き続き応援よろしくお願い致します!!

それでは、第2章最終話「蠢く者たち」行ってみましょう。

【〇八〇 蠢く者たち】


 アルガノスたちが翔平を手に入れてベールヌ宙域から離脱した数時間後――マーラ星執務官邸には一報がもたらされた。

 執務室のヴァロアルドが呼び出し音を発した卓上の通信機に応じる。


『ドロアズ機からの信号が途絶しました。同時にグアデリアに仕掛けていた位置情報装置からの信号も途絶を確認しました』


 通信の送り主は名前も告げずに淡々とそう言った。

 ヴァロアルドは椅子に深く腰掛けながら無言でその報告を聞いている。


『アルガノスはこちらからの呼び出しには応じません。また位置情報も隠匿しています。例の力とやらを手に入れたことには間違いないかと思われます』


 少しの間を置き、ヴァロアルドが応じる。


「――わかった。調査部隊を編成してベールヌ宙域へ向かわせろ。回収できるものがあれば回収しろと」

『かしこまりました』


 返事だけを残し、通信は切れた。

 まさかあのドロアズが失敗するとは、ヴァロアルドも想定外だった。アルガノスが狡猾な男であることは聞いていたが、ドロアズはそれ以上だと自分は評していたからだ。

 それにしても――と、ヴァロアルドは思う。アルガノスのこの身軽さはなんだと。位置情報を隠匿するにしても対応が早すぎる。おそらくアルガノスは自分がドロアズを送り込む前の段階から、Zリーヌンスとやらを入手した際の計画があったのだとヴァロアルドは考えた。

 ――そうだとするならば。

 ヴァロアルドは通信機を操作し、どこかかへ通信を入れる。

 通信はすぐに繋がった。


『どうされましたか?』

「ヴァツルドの身柄を抑えよ。身辺の者も含め、シンパも拘束する」

『ヴァツルド殿下を……ですか?』


 通信の相手は少し意外そうな反応を見せた。第二皇子を拘束せよとは、ただならない命令だったからだろう。


「そうだ。速やかに行え。理由は私の命令だと言えばそれで良い。拘束後は私に連絡を」

『――了解しました』


 ヴァロアルドは通信を終えると目を閉じた。

 ヴァツルドがアルガノスを使いなにかを企んでいたことは知っていたが、周到なことはしていないだろうと踏んでいた。――だが、それは自分の甘さであると感じた。ヴァツルドやアルガノスは自分が思った以上に深く、素早く事を進めていたようだった。

 わずかの時が空き、通信機が呼び出し音を鳴らした。ヴァロアルドが応じる。


「捕らえたか?」

『ヴァツルド殿下の官邸に入りましたが、使用人含めてひとりもいなくなっておりました。監視カメラを解析したところ数時間前にカメラの映像が改ざんされております』

「至急ヴァツルドの艦艇および部隊を抑えろ。惑星を封鎖して外へ出すな」

『それが、宇宙港へ確認を入れたところ、先ほど植民星の視察へ行くということで殿下の艦艇と部隊の一部がマーラ星を発ったとのことです』


 ヴァロアルドは無言で眉根を寄せた。

 ――出し抜かれたか。


「わかった。国境警備隊にヴァツルドの部隊の捜索を命じよ。理由は言わずとも良い」

『了解しました』


 通信を切るとヴァロアルドは深く息を吐き出した。

 ヴァツルド――まやかしの力などを信じてなにをするつもりなのだと。私を出し抜いたつもりでいるようだが、そんな力程度ではどうにもならないのだと。

 ヴァロアルドがそんな思索を巡らせていると、部屋の隅の影にローブを纏った影が姿を現した。

 人型――かどうかもわからない。ローブの中は虚のようになっており、そこに人の顔などは見えない。その虚が低い声を発する。


「Zリーヌンスを殲滅できなかったのは痛手になりますな」

「いたのか」

「我々はどこにでもいて、どこにもいませぬ。状況は悪化しました。至急追撃部隊を送り込みヴァツルド殿下もろともにZリーヌンスを葬り去るべきかと」


 弟を始末せよと、虚は過激なことを言った。だがヴァロアルドは表情を変えることはなかった。


「Zリーヌンスを軽視しては危険なことになります。ヴァツルド殿下とは言え、その力を利用しようとするものは我々の怨敵となりましょう。そしてあの力は宇宙を清浄にすることを妨げる力――早急な対応が求められますぞ」

「ヴァツルドはあの力をどうするのか見定めてからでも良いのではないか?」

「それでは遅すぎることになりますな。あの力に魅入られた者こそ諸悪の根幹へと至りますゆえ」

「……ヴァツルドが我が国に楯突くと?」

「少なくともヴァロアルド様の意向には反する行動を取ることになるかと。現に行方をくらまし、海賊部隊も所在を伏せておりますぞ」

「――ヴァツルドの野心から来たことだということか」


 ヴァロアルドはそう言うと再び目を閉じた。

 ヴァツルドは聡明ではあったが、自分からもどこかうかがい知れない何かを抱いている節はあった。しかし自分はそこへ大して関心を抱くことがなかった。ヴァツルドはどうせ自分を超えることはできないと見ていた。

 しかしここに来てその算段は見誤っていたことになる。ヴァツルドの野心は彼を動かし、行動させている。

 自分へ逆らうということはこの帝国に対して逆らうも同じことだ。ヴァツルドもそれを知らないわけはない。ならばヴァツルドの一連の動きは、意図して行っているということになる。

 ヴァロアルドは通信機へ手を伸ばす。


「六一部隊を招集せよ。目標はヴァツルドの艦、トリアルダだ」

『了解しました』


 通信はそれだけで切れた。


「早い判断だと思いますな」


 虚は納得したという声を発した。

 しかし、ヴァロアルドにも疑問があった。


「なぜ貴様たちはあの力をそれほどに恐れる?」


 この虚の正体はヴァロアルドも詳しくは知らない。ただ、現皇帝について助言を行っていた存在であり、オッパリオン人の持つ母乳力を手に入れろと皇帝に進言したのもこの者だと聞いた。この存在を知っているのは帝国でも自分と皇帝だけであり、ヴァツルドにも知られてはいない。

 皇帝が病床に伏して執政から外れた時、皇帝から自分へと引き継がれるように近づいてきた。

 Zリーヌンスという力がこの宇宙にあるということ。その力は強大であるが危うい力であり、使う者を等しく滅ぼし、帝国の繁栄の障害となるということ、そしてそれをオッパリオン人が利用し、帝国に対して使おうとしているということ、それらのことをこの虚は伝えた。

 そして先のオッパリオン宙域戦でその力の強大さを見ることとなった。その折にこの虚はZリーヌンス殲滅に本腰を入れるよう強く言ってきた。

 オッパリオン人がエネルギー源として優れていることは明らかであり、オッパリオン人の支配が宇宙支配と国内のエネルギー問題の安定に寄与することもわかっている。

 その障害になるのであれば取り除かねばならないという意識ではあったが、この虚はどうにもZリーヌンスに対して過度に警戒心を抱いているように感じられてならなかった。

 ヴァロアルドはジッと虚に視線を送る。


「それは――Zリーヌンスとは宇宙開闢に比する力であり、それは我々の願いを妨げる力であるからです」


 虚は詳しくを語らなかった。

 この虚が何者であるかはわからない。しかし皇帝はこの虚の助言を聞くようにと言っていた。現皇帝による覇道はこの虚の助言があったからだとも、皇帝は言っていた。

 ヴァロアルド自身、この虚を完全に信用しきっているわけではなかった。だが――Zリーヌンスに関してはこの虚の意見を聞き入れようと決めていた。不可思議な力には不可思議な者の言葉が必要だろうと考えたからだ。


「……わかった。深くは探るまい。ヴァツルドの艦隊には六一部隊を仕向けた。そう遠くなくZリーヌンスは始末され、ヴァツルドは捕らえられるか殺されるかするだろう」

「侮ってはなりませんぞ。Zリーヌンスも、母乳力も」

「わかっているつもりだ」

「では――」


 そう残し、虚は姿を消す。

 宇宙には様々な種族が存在するが、この虚は実体を持たないようなものなのだろうとヴァロアルドは考えていた。

 Zリーヌンスを放置しておくのは危険かもしれない――そうは思うが、ヴァロアルドにはもうひとつ、早急に進めねばならないことがあった。

 それはマーラ帝国の首都遷都計画であった。環境の悪化から著しく居住性が悪化しており、マーラ星に住まう人々の生活環境も悪化を続けている。その解決策としてヴァロアルドは皇帝より遷都計画を推し進める考えを引き継いでいる。

 ヴァツルドはこの件に関して乗り気ではなかったことがふと頭をよぎる。


「そうか、ヴァツルドはそれで……」


 ヴァツルドの思いに気付き、ヴァロアルドはひとり笑みを浮かべた。


「愚かな……」


 ヴァツルドは未知の力に星を救ってもらおうなどという、生ぬるい絵空事を思っているのだと感じた。為政者として、それは非現実的な選択肢だ。それを信じるというのであれば権力を剥奪する必要があるとヴァロアルドは考える。

 ヴァツルドのことは専門の部隊に任せ、自分は目の前の計画に邁進する方がいいと思った。

 それは数週間前に打ち立てられた計画――水平の銀河への進出計画であった。

 水平の銀河にはマーラ人の居住に適した環境のある惑星があることが、奇しくもアルガノスの報告から判明していた。秘密裏に派遣した調査部隊からもたらされた情報によると、周辺宙域の状況もよく、辺境ではあるが環境は適しているということだった。

 先住の文明はあるものの、科学水準はマーラ帝国から三〇〇年は遅れているとのことで、ヴァロアルドは先遣隊を組織し、文明の浄化を命じるに至った。

 もう間もなくその部隊も動き出す。

 オッパリオン星、水平の銀河の星、そしてヴァツルド――抱える事案は多いものの、ヴァロアルドに不安はなかった。自分は必ず成功し、この帝国をさらに拡大させる、その意識は堅く、揺るがない強さを持っていた。


第2章は何やら不穏な空気で終了・・・。

続く第3章もどうぞよろしくお願い致します。

読者の皆様の応援を胸に、スケキヨ氏とYOMは前に進みます!!

第3章はもっとおっぱい分が増えるといいなぁと思いつつ、次話でお会いしましょう。


宇宙艦隊オッパリオン第2章完!!

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