【第2章】宇宙艦隊オッパリオン076話「孤軍の果て」
本日も更新がやって参りました!
どうも、いつもお世話になってますYOMです。
今回も宇宙艦隊オッパリオン更新です。
惑星ベールヌ宙域での戦い、その中で奈菜とミィアルーンを乗せた内火艇が海賊に襲われる。
クァードは大破し、劣勢に陥るクァード隊・・・そんな中。
黒騎士ドロアズと彼が狙う翔平との戦いは続いていた。
【〇七六 孤軍の果て】
フレイアのいるコクピットでもクァードの状況は理解できていた。三隻を相手にしては無理もないという結果ではあったが、フレイアは絶望することなく戦いを続けていた。
『フレイア! クァードがっ!』
この状況に一番動揺していたのは翔平だった。通信の声からもそれがうかがえる。
「大丈夫、退艦命令が出ているからみんなは無事のはず。スタティアも近づいてきてるし」
『そうだけど……』
「こいつを始末してから向かいましょう!」
フレイア機は黒騎士と切り結んでいる。能力の向上したフレイアを相手に黒騎士は押され気味ではあったが、隙を見せることなく戦闘を維持させていた。
だが、海賊たちの行動は黒騎士にも影響を与えている。
『くっ、なぜこちらに戦力を投じないのだ!? Zリーヌンスはこちらだと言うのに!』
苛立った黒騎士の声が通信に入る。
どうやら海賊たちも一丸となっているわけではないのだとフレイアは察した。この黒騎士はずっとZリーヌンスに固執している。今でも頑なにゼータリオンを狙い続けているのは変わらない。
黒騎士がフレイアの行動を読めてきているように、フレイアもまた黒騎士の行動は読めてきはじめていた。守る側と狙う側でそれぞれに不利がある――こちらが隙を見せるそぶりを見せれば黒騎士は必ずそこを狙うはず。自分のチャンスはそこにある――フレイアはそう考えた。
問題はそれを仕掛けるタイミングだった。翔平にはそのような連携や駆け引きはまだ無理だろうから、自分でやらなければならない。これほどの手練れを相手に、隙を作るのは危険だが、現状を突破するにはそれしかなかった。
黒騎士が苛立ち、焦りを見せはじめた今、フレイアは必殺のタイミングを狙っていた。
『母艦の危機だというのにさがらないのか?』
「しつこいやつがいてそれどころじゃなくてね」
『ふん、なぜそこまで母艦に固執するのは――私にはわからんことだ!』
黒騎士の意識にはクァードと海賊艦とのことがあるようだった。
今なら――フレイアは勝負に出る。
フレイアは常にゼータリオンと黒騎士との間に入っていたが、一瞬だけゼータリオンを見せるような動きを取った。黒騎士の加速があれば一気に斬りかかれる間合いだ。
『気を抜いたな!』
黒騎士はその隙を見逃さず、機体を加速させる。
「ショウヘイお願い!」
『えっ――』
突然呼ばれたことに翔平は反応できなかったが、自身に敵機が突っ込んで来ることはわかった。距離的に回避は難しく、防御するしかない間合いとなっている。翔平の判断が遅れてもオートで防御に入るのだが、その挙動は黒騎士には見抜かれ、致命傷を負わされるだろう。
それはフレイアもわかっていた。
だが、フレイアは黒騎士がゼータリオンに斬りかかる一瞬、その一瞬に勝機を見出していた。今の自分の反応速度とシェアトスの機動力ならば可能――そう思われた一撃に賭けた。
それはゼータリオンを狙うべく踏み込んだ黒騎士の背後から追撃を仕掛けるというものだった。黒騎士がゼータリオンへ直進するのでその軌道は予測できる。そこに追従し、ゼータリオンが攻撃される前にこちらが仕掛ける――フレイアはそれを考え、実行した。
「もらった!」
『なにをっ!?』
信じられない反応と速度を見せたシェアトスに黒騎士が気付く――が、気付いた時はもう黒騎士の機体背後へとシェアトスが迫っていた。フレイアの行動は黒騎士の反応より速く、なぎ払った長剣は黒騎士の背中にある推進器を斬り飛ばした。
『なんだとっ!? この私がっ!?』
黒騎士は自分の被弾に動揺を隠しきれなかった。フレイアの攻撃は止まることなく繰り出され、突きの一撃で黒騎士の左肩を破壊した。
「焦りすぎるから!」
『ありえんことだ!』
黒騎士はいったんゼータリオンと距離を取る。その動作にはかつての勢いと鋭さはなく、機体の損傷による機動力の低下が見て取れた。
押しきれるか――フレイアがさらに押し込もうと思った時だった。
『フレイア! 内火艇の一機が敵に捕まった!』
レマスからの通信が入り、それはフレイアの行動を遅らせた。
「なんですって?」
『どういうことだレマス!?』
翔平が慌てて聞き返す。
『例の大型機動兵器にやられたんだ! 今救助に向かってるけど、敵に邪魔されて思うように近づけないんだ! シュレンとリクサーヌも引き離されてる!』
『フレイア! 俺が行く!』
翔平の反応は早かった。
「無茶言わないで」
『今データを見た。内火艇を捕まえたあの機体なら前にも戦ったことがある。こっちから近づけば内火艇を放り出して俺に食いつくかもしれない』
翔平の考えは理には適っている。
そして今クァード付近では一機でも多くの機動兵器を必要としている。翔平が向かったことでレマスたちの負担も減るかもしれない。
「――わかった。行ってショウヘイ。あたしもすぐに追いかける」
『ありがとうフレイア』
ゼータリオンがフレイア機の脇を抜け、クァードの方へと向かう動きを見せた。すると黒騎士が反応を示す。
『どこへ行こうと言うのだ! 私を置いて!』
ゼータリオンを追うように軌道を変え、フレイアに背を向けた。翔平は黒騎士に構わず機体を進める。しかしZリーヌンスへの固執と焦りが黒騎士に致命的な隙を生じさせる。
「あなたはこだわりすぎでしょ!」
フレイアはこの隙を見逃さず、急加速をかけて黒騎士の機体へと迫る。
『もう貴様の相手をしている場合ではないのだ!』
黒騎士は振り返るが反応が鈍かった――フレイアの反応速度は黒騎士を上回る。
フレイア機の一撃が黒騎士の剣を弾いた。そして黒騎士が剣を戻すより速く、黒騎士の手首を斬り飛ばす。
「ここまでね!」
『このっ――』
フレイアはさらに踏み込み、黒騎士の胴を真横からなぎ払う。十分な力を得たフレイア機の長剣は黒騎士の胴体を真っ二つに斬り裂いた。
『蛮族がっ!』
「終わり!」
とどめとばかりに、切り離された胴体に向けフレイアはライフルを放った。光芒が黒騎士の胴体を撃ち抜き、爆発を起こす。
『フレイア!?』
光がとどいた翔平からの通信が入る。
「黒騎士を倒したわ。あたしも今からそっちに向か――うっ!?」
『フレイア?』
ゼータリオンを追おうとした瞬間、フレイアは支えがなくなかったのような体の重さが襲いかかってきた。
「なっ……にこれ……?」
全身に汗が噴き出るのがわかった。コンソールを見ると母乳力不足という通知が出ており、機体出力はぎりぎり起動しているのが精一杯という値に低下していた。
『フレイアは無事なのか!? 声がいつもと違うぞ!? それにZリーヌンスを吸い上げなくなってる!』
「力を使った代償が来ているっぽい」
翔平のゼータリオンを追おうにも、シェアトスの出力が上がらず、思うように機体を動かせなかった。
それに加え、体が猛烈に重い。シェアトスから母乳を求められるが、母乳が出ている気配は感じられない。
「これがあたしの限界ってこと……?」
母乳が出ないものかと自分の乳房を揉んでみるものの、やはり母乳が出る気配はなかった。
『フレイア? 大丈夫か?』
「大丈夫だと思う。少し休めば回復するはず。だからショウヘイは先に行って」
『わ、わかった……先に行く!』
「そうして」
遠退くゼータリオンをモニターのマーカーで確認するも、フレイアは過去にない不安感に襲われていた。
「母乳力が切れるなんて……」
それはフレイアにとってかつてない経験だった。シェアトスを辛うじて起動させられているものの、動かすのも苦労する状態ではとても戦えるとは思えない。
Zリーヌンスとの繋がりは未だに感じられていられるものの、力が湧き上がるような感じはもうなかった。
翔平をひとりで向かわせたことへの後悔もあったが、今の自分が前線へ出ても足手まといになる可能性もある。
少しでも回復すれば動けるとは思うものの、母乳が出る気配は依然としてなかった。
黒騎士を打倒することはできたとは言え、フレイアはその代償を支払うこととなってしまっていた。
やってきたスタティアとアスタリアは一足遅かった。
大破したクァードとフレイア隊は、無事にこの最大の危機を乗り越えられるのだろうか!?
内火艇を奪取した海賊達の狙いとは一体!?
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