【第2章】宇宙艦隊オッパリオン075話「海賊の狙い」
宇宙艦隊オッパリオン第075話発進!!
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YOMです。
本日のオッパリオンは、退艦を決めたクァードに迫る魔の手!!
瀕死のクァード艦に対して、海賊の長アルガノスの策略が迫る。
果たして、海賊達の狙いとは一体!?
フレイア隊は、クァードの乗組員達を守り切ることができるのか?
惑星ベールヌ宙域での戦いもそろそろ終焉が近づいてきた模様。
【〇七五 海賊の狙い】
「付録艦速力低下を確認。機関部に損傷を負った模様」
「上出来だ」
そうは言うアルガノスだったが、表情から険しさは消えていなかった。
「よく耐える艦だな。艦長をはじめ、全員根性が据わってると見えるな」
「このまま沈めますか?」
「いや――」
副長の言葉にアルガノスは頷かなかった。
アルガノスはある変化を待っていたが、それが予想に反して遅れている。あるいは来ないのか――そんな思いがよぎっていた。
「メルクコアは意外と度胸がある。それに捕まったら自分たちがどうなるかもわかっているからな。自棄になることはないと思うが……」
捕らえたオッパリオン人は本国へ送り母乳を得るためだけに生かされる。それはオッパリオン人にとっては利敵行為でもあり、人として扱われない不当なものであると認識されていることはアルガノスも知っていた。
このまま艦をつけて乗り込み、付録艦の中のオッパリオン人を捕らえることもできるのだが、それは面倒なことでもあった。自分たちの狙いはあくまでもZリーヌンスの奪取となっている。幸いにもドロアズは敵機動兵器に足止めされているらしく、こちらに口を出してくることはなかった。
「まだか……」
アルガノスは思わず拳を握るながら誰に聞こえることなくそうつぶやいた。
その時――。
「キャプテン! 艦後方にジャンプアウト! 輪っか付きとその付録艦!」
「来たか!」
敵の増援の知らせを受け、アルガノスは思わず立ち上がった。
「来ましたな。キャプテンの予想通りでした」
「思ったよりは遅かったがな。各艦に輪っか付きは無視して付録艦の包囲を続けろと伝えろ」
「了解」
「マシウスに直接回線を繋げ。俺が直接話す」
「了解しました。マシウス機に繋げます――」
アルガノスは艦長席に備え付けられている通信機を取り、耳に当てた。
『なんだよカシラ、今こっちもいいところなんだよ』
「キャプテンと呼べ小僧。おまえに任務がある。今すぐグアデリアに来て俺を乗せろ。その後の詳しいことは直接伝える」
アルガノスは自分でも少し早口かと思った。焦りがある。チャンスはここしかなく、さらに与えられた時間はごく短い。
『……なんだかドえらいことを考えてそうだな。わかった、すぐに行くぜ。この槍持ちがなかなかしぶとくてな』
「放っておけ。いいか、すぐに来い。カタパルトは解放しておく」
『了解したぜ。急行する』
マシウスの通信が切れると、アルガノスは通信機を置いた。
「行くのですか?」
「ああ、最後のチャンスだ。こういうことはしたくなかったが、せめて俺が直接やってくる。グアデリアは付録艦に照準を固定して待機だ。輪っか付きが来たらすぐに撤退できる準備だけはしておけ。交戦は避けるぞ。なにをされるかわからんからな」
そう言いながら、アルガノスは持っていた拳銃の弾倉を抜き、弾が込められているのを確認した。
「了解しました。成功を祈っております」
「ふん、やってみるだけだ。状況は逐一伝えろ」
ヘッドセットをつけ、拳銃を腰にしまい、アルガノスは艦橋を出た。急ぎ足に格納庫へと向かう。
「まったく……我ながらなりふりは構わんか……」
そうつぶやき、自嘲気味な笑みを浮かべた。現状はすべて思惑通りに進んでいる。輪っか付きにつきまとった時からはじまり、付録艦を追いかけていてやっと巡ってきたチャンスだった。
自分が任務を果たすのはここしかない――アルガノスにはそんな覚悟があった。
『キャプテン、付録艦より脱出艇の発進を確認しました。輪っか付きへ向かう軌道です』
「了解した。ディジル隊に護衛を追い払うように指示を出せ。付録艦はもう動かん」
『了解しました』
格納庫に着くと、マシウスの乗るバルフォングスがすでに待機していた。
コクピットハッチを開き、マシウスが立っている。
「遅いぞカシラ」
「おまえと違って暇人じゃないんだ」
言いながらアルガノスはバルフォングスのハッチへ跳ぶ。
「で、やることってなんなんだよ?」
「あの付録艦から脱出艇が出た。そのひとつを捕まえろ」
アルガノスの発言にマシウスの顔からは笑みが消えた。
「本気か?」
「ああ」
「……へへへ、本当に海賊みたいなことをするんだな。脱出艇に手を出すのは条約違反だぜ?」
「だから俺とおまえでやるんだよ」
「いいぜ、やってやるよ。カシラの頼みなんだし、大事なことなんだろうからな。それに汚れ仕事は俺に似合ってるぜ」
「すまないとは思う」
「大丈夫だ。なんでもやってやるよ。任せな」
「頼む。だが破壊はするな。捕まえるだけでいい」
マシウスがコクピットに入ったのでアルガノスも中に入る。マシウスはアルガノスが来るとわかっていたので補助シートを用意していた。
アルガノスは補助シートに体を固定する。
「捕まえてどうするんだ?」
「エサにして大物を釣り上げる」
「人質にするのかよ?」
「そうだ」
「はは、海賊らしいじゃねぇか。卑怯者だな、俺たち」
「気が進まなくなったか?」
「カシラがそういうことをするとは思えなかったけどな。でもそんだけこっちも余裕がないってことなんだろう?」
「そういうことだ」
「なら仕方がねぇ。やるしかねぇよ。バルフォングス出るぞ」
バルフォングスはカタパルトを使えないので、自身の推力でグアデリアを出て行く。
「機動兵器に乗るのは久しぶりだな。お手柔らかに頼むぞ」
「そう行きたいところだけど相手も相手だからな」
「相手はディジル隊が抑える。その隙を突け」
「まったく、カシラはいろいろ簡単に言ってくれるぜ!」
マシウスが機体を加速する。補助シートのアルガノスの体にもはっきりとした負荷が加わる。
マシウスのシート越しにモニターを見る。脱出した脱出艇の一機にはすでにディジル隊が取り付いており、護衛の機動兵器を翻弄していた。しかし機動兵器も必死の防衛を試みているようだった。
「あの槍持ちだ、あいつがしつこいんだ。ディジル隊でも引き剥がせるかどうかわかんねぇぜ?」
「一瞬でいい。そこを突け。おまえならできるマシウス」
「はっ、こんな時だけおだててくれたってさぁ!」
槍を持つ緑の機動兵器は上手く、ディジル隊を相手にしつつも脱出艇を完璧に守っている。動きに無駄はなく、反応も良かった。
「あいつをやるつもりで突っ込む! そして隙を作る!」
マシウスは緑の機動兵器めがけて加速をかける。すると緑の機動兵器はこちらに気を取られ、対応するために旋回をかけた。
「今だ!」
マシウスは機体に急制動をかけ、緑の機動兵器と接触する寸前に軌道を変えた。そして機動兵器の背後にいた脱出艇を両方のクローで掴む。
「よくやった! 離脱しろ!」
「わかってる!」
◇ ◇ ◇
奈菜の乗る内火艇には博士とミオシ、負傷したリアリィ他八〇人近くが乗っていた。内火艇は格納庫の床下に収納されており、奈菜が格納庫に行った時には床からせり上がっていた。
そこにスオリーの誘導を受けて、担架に乗せたままのリアリィと共に乗り込んだ。
艦が沈むと伝えられた時はショックだったが、スタティアが来ていると聞き希望が持てた。アーリア提督ならなんとかしてくれる、翔平も守ってくれる、奈菜はそう信じていた。
だが――クァードを離れるなり内火艇は敵にまとわりつかれていた。
「一応戦時条約で脱出する艦艇に手を出すのは禁止されているんだけどね。マーラ帝国とは言えそこは守ると思うが、海賊は関係なしか」
ミィアルーンはそんなこと言っていた。
「翔平が乗ってると思ってるのかな?」
奈菜が不安げに言う。
「いや、相手もゼータリオンのことは知ってるはずだ。それに――クァードも撃沈させられることもできたはず」
ミィアルーンはなにか考えているようだった。
奈菜は思わずリアリィを見たが、リアリィは移動に際して痛みに見舞われるということから麻酔を打たれ眠っていた。
『一号艇聞こえる!? ボクのそばから離れないで! 三機来てる!』
奈菜のいるところにまでレマスの声が聞こえた。今この内火艇を守ってくれているのはレマスだった。三機も相手にしていることに奈菜は驚く。
『さらに来るよ! あの速いやつだ!』
「えっ――」
切迫したレマスの声の直後、船体が大きく揺れた。
「きゃああっ!?」
「こ、これは――」
船体が斜めになったまま戻らない。窓もないのでなにが起こっているのかは把握できなかった。
「博士、どうなってるんですか!?」
「わからない。攻撃を仕掛けられたのか……いや、機動兵器の攻撃を受けたのならこの船体じゃ一発で破壊される。無事なところを見ると……捕獲されたのかな?」
「捕獲って……」
「捕まったってことだね」
「そ、そんな……!?」
「これはまずいね。よくない状況だ。スタティアが到着しても盾にされる可能性が出てしまう」
「翔平……」
奈菜は祈るように翔平の名を口にした。
クァード隊脱出組最大のピンチ!!
バルフォングスに捕まった彼らは一体どうなってしまうのか!?
次回もご期待ください。
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