【第2章】宇宙艦隊オッパリオン073話「苦境のクァード」
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今日の戦いは一体どうなるのか!?
惑星ベールヌで苦境に立たされるクァードとフレイア達。
彼女達は無事この困難を脱し、スタティア隊と合流することができるのか!?
戦いは熾烈さを増していく!!
【〇七三 苦境のクァード】
「防衛中のリクサーヌ機を突破した敵機がいます。艦後方へ接近中」
「対空機銃を最大稼動させてください。レマス機はどうですか?」
「レマス機は現在三機を相手にしています。善戦してくれてはいますが突破されるのは時間の問題かと思われます」
「敵艦より砲撃来ます」
「回避続けてください」
クァード艦橋では依然として慌ただしい対応が続いていた。防衛に回っているリクサーヌ機とレマス機、シュレン機を突破する敵機が出はじめ、数による劣勢を余儀なくされてしまっている。
「リアリィ機の損失が大きいですね」
スオリーは冷静にそう言ったが、それはアリメルも痛感していることだった。黒騎士の対応に追われていたとはいえ、機動兵器一機が持つ戦力は大きい。ましてリアリィほどの力量ならば、その退場で生じる損失は艦の存亡を左右する規模であると言える。
「そうですが、現状できる最善を続けていかねばいけません。スタティアの到着まで耐えましょう」
依然通信は確立できないでいるものの、スタティアがZリーヌンス反応を感知して動いた可能性は高い。
「敵艦よりミサイルの発射を確認! 接触まで四〇!」
「回避しつつ迎撃を!」
アリメルが叫ぶように言った直後、振動が艦橋を襲った。
「どうしましたか?」
「左舷の対空機銃に損傷発生。取り付いた機動兵器からの攻撃によるものです。左舷対空防御率六〇%に低下します」
「敵ミサイル左舷より接近します! 迎撃しきれません!」
「総員衝撃に備えて!」
「着弾します!」
直後、クァード全体を大きな衝撃が揺さぶった。迎撃をかいくぐったミサイル三発が艦側面に命中し、装甲板を吹き飛ばしていった。
「被害状況は!?」
「左舷機銃にさらに損傷。第七区画、第八区画損傷。装甲板が大破し、船体にも損傷が生じています。火災の発生は確認できませんが一部気密が破れています」
「応急処置班を回してください。大破した装甲板はパージします。機動性確保を最優先に」
「了解しました。第七区画担当処置班、至急対応に当たってください」
敵旗艦――一号艦に面している左舷に損傷が出はじめたのは痛手となった。機動兵器一機に取り付かれただけでこれほどの損傷が出てしまうことに、アリメルは改めて恐怖を感じた。
「艦長、レマス機より艦長へ通信が来ています」
「繋いでください」
中央モニターの端にコクピット内にいるレマスの顔が映し出される。
『艦長、このままじゃ防衛は長くもたないよ。せめて一隻大破させて突破ルートを作って離脱して欲しい』
「それはわかっています。なにか策があるのですか?」
『二号艦がまた機動兵器を控えさせてるみたいなんだ。たぶんとどめに送り出してくるんだと思う。だから消極的な二号艦を背にして一号艦の砲撃を防げば、一号艦に正面を向けられるよ。クァードの主砲ならやれるでしょ』
アリメルはレマスの戦術の進言に関心した。この少女は激しい機動兵器の戦闘中、どうすればこうも冷静な分析ができるのだろうかと。
レマスも驚いたらしく、目を丸くしてこちらに視線を向けた。
「レマスの提案はその通りだと思います。一瞬の機会からもしれませんが、攻撃に転ずることができる可能性があります」
『でもリスクもあるよ。二号艦に背後を取られる可能性もあるから、一撃離脱で転身しないと危険だね――あっ、一機抜けた!』
「敵機動兵器、レマス機を突破しました」
思案していればしているほどに時間は過ぎる。時間が過ぎるほどにこちらの状況は悪くなっていく。それならば――アリメルは思った。
「艦首回頭三〇。出力最大、最大艦速にして二号艦を背に一号艦の正面を取ります。対艦ミサイルは全発射管装填、火力を集中して突破口を作ります。リクサーヌ、レマス、シュレンは本艦から取り残されないよう留意してください」
そのことはリクサーヌたちにも伝えられ、これから起死回生の策が行われることが共有された。
防衛に回っている機動兵器に損耗が出はじめていない今が優性を得られる唯一の機会だろうとアリメルは思っていた。
これもひとえにパイロットたちの技量の高さに頼るものだと。
「加速かけます! 最大艦速!」
操舵士のその言葉と同時、クァードは急加速をかけた。しかし直進機動を取るため、取り付いている機動兵器には隙を与えてしまうことになる。だが――。
「リクサーヌ機、後方に取り付いていた敵機に取り付きます」
リクサーヌは目下の脅威となる機動兵器に向かい、艦から引き離すような攻撃をしかけていた。三機を相手にしているので一機に割ける時間は一瞬ほどしかないものの、リクサーヌはそれでも最優先で脅威の排除に当たってくれた。
そしてそれは功を奏し、一機を引き離すことができた。
「これで心置きなく加速できますね」
スオリーはつかの間の安堵に胸をなで下ろすものの、苦境であることに変化はない。
「艦首方向へ敵艦より砲撃きます!」
「減速はしないでください。そのままかいくぐります!」
艦側面を狙った砲撃は命中率が高く、その中を直進するのは大きなリスクとなる行動だった。しかしアリメルはクァードの速度と機動性を信じ、直進の指示を出す。
「機関出力の上昇を確認! 突破できます!」
操舵士はさらにクァードを加速させ、左右の敵艦からくる砲撃をかいくぐり直進する。
砲撃を突破したところで、アリメルは全艦放送用のマイクを手に取った。
「艦長のアリメルです。本艦はこれより高機動戦闘を行います。総員体を固定して振動に備えてください」
次は敵二号艦を背に置き、一号艦を正面に捉えるために急旋回をしなければならない。クァードの機動力ならば可能――そう思い、アリメルは一縷の思いを込めた。
◇ ◇ ◇
奈菜がアリメルの言葉を聞いたのは医務室だった。リアリィの容態が気になり、結局医務室にまでついてきてしまっていた。
リアリィは治療用のナノマシンを投与され、容態は落ち着いている。
「ナナ、今の聞こえたでしょ。クァードがなにかやるみたい。安全な場所に移動した方がいいよ」
リアリィは呼吸器をしたまま、傍にいる奈菜を気遣う。
「大丈夫。どこにいても同じだと思うから、わたしはここにいる」
「そう。じゃあ体を固定した方がいい」
「リアリィも」
奈菜は立ち上がり、ベッドにあるベルトを伸ばしてリアリィの体を固定した。
「手慣れてるね。経験あるの?」
「宇宙活動の実習で救護の研修を受けたくらい。宇宙では体を固定しておかないと危ないって習ったから、そうかなって思って」
「ナナは機転が利くね」
リアリィはそう言うと軽く笑って見せた。
そうこうしていると軍医が部屋に戻ってきた。どうやら外でも負傷者が出たらしく、その対応に出ていたようだった。
「リアリィの固定は――終わっているようだね。ありがとうナナさん、助かるよ。でもあなたも体を固定した方がいい。そこの壁にシートがあるから、そこに座ってベルトをしておきなさい」
「わかりました」
軍医も自分の席に座り、ベルトで体を固定しはじめる。
ただならない雰囲気に、奈菜は不安になってきた。
「クァード……大丈夫かな……」
「無茶なことをやろうとしているのかも。でもそうしないと状況は変えられないってことだから、この作戦が上手くいくことを祈ろう。それくらいしか、今のわたしたちにはできないからね」
リアリィは落ち着いてそう言っていたが、奈菜は緊張していた。肩を固定しているベルトをぎゅっと握ってしまう。
すると、体を押されるような負荷がかかる。
「うぅっ……!」
「クァードが加速してるね。すごい速度だ」
「リアリィ、体は大丈夫?」
「ああ、大丈夫。それよりも次は衝撃が来るよ。舌を噛まないように黙っていた方がいい」
リアリィにそう言われ、奈菜は歯を食いしばった。直後、部屋が大きく傾きながら揺れ、壁に強く押しつけられるような負荷がかかった。同時に大地震でも来たかのような衝撃がクァード全体を襲う。
「きゃ、きゃあああーっ!」
奈菜は気付くと悲鳴をあげていた。
◇ ◇ ◇
「付録艦加速! あいつ、アムガデリアにぶつける気か!?」
「どうした!?」
「付録艦、こちらの砲撃を抜けてアムガデリアに向かい加速をかけています!」
「ぶつける気ですかね?」
副長までもがそんなことを言った。
「それはないだろう。自棄になるにはまだ早い。なにか仕掛けてくるつもりだな」
三隻に囲まれている付録艦がなにを企んでいるか――想像するになんとかして包囲を突破する策を打ってくるとは思ってはいた。しかしZリーヌンスを放っておいて逃走するとは思えないので、アルガノスは包囲を突破する行動に出るとは考えてはいなかった。
だとしたらなにをするつもりなのだろうか――アルガノスのは頭に思索を巡らせる。
「砲撃は続けろ。エルゾデリアと十字砲火になるようにな」
「了解。しかしすごい速度が出ています。このまま逃げる気なのでは?」
「それはない。逃げるくらいならこっちに突っ込んでくる方がまだ可能性はある。……そうか、こいつ、アムガデリアを背負うつもりか」
「背負う?」
アルガノスの呟きに副長が聞き返した。
「こちらに正面を向けるつもりだ。グアデリアを急速回頭させろ。付録艦に正面を向ける。投影面積を減らせ、一斉攻撃が来るぞ」
「か、艦首回頭九〇!」
グアデリアも急旋回をしかけたことで、艦内に強い負荷が生じた。固定していなかったものが一斉に吹き飛ぶ。
「ぐっ……無茶をしますな」
「あの付録艦に言え。無茶なのはあっちだ。野蛮人どもめが」
付録艦――クァードはアムガデリアにぶつかるような機動を取っていたが、直前で急減速をかけ、艦体を反転させてこちらを正面に捉えた。細かい艦体の制御を見ても、クァードの操艦技術の高さがうかがえた。
「艦正面に付録艦! 熱源感知!」
「回避しろ! 正面から外せ!」
「加速間に合いません!」
「ふざけるな! 総員衝撃に備えろ!」
「総員耐衝撃防御!」
艦橋の全員が手近なものにしがみついた直後、クァードからの主砲が一斉掃射された。
「熱源接近! 直撃コースできます! 同時にミサイル多数接近!」
「打ち落とせ!」
グアデリアの機銃が一斉に稼動し、迫るミサイルを迎え撃つ。しかし迫る光芒を迎撃することはできなかった。
「直撃きます!」
その言葉の直後、真横から殴られたかのような衝撃がグアデリアに走って行った。
次回、クァード絶体絶命の大ピンチ!?
波乱の予感!!




