【第2章】宇宙艦隊オッパリオン072話「喪失(後編)」
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宇宙艦隊オッパリオン第072話後編やって参りました!!
それでは早速行ってみましょう。
信号途絶したリアリィは一体どうなってしまったのか!?
【〇七二 喪失(後編)】
リアリィが吹き飛んだと理解するまで、翔平はしばらく時間がかかった。
だが、呆然としているほどの時間があったわけではない。黒騎士はここぞとばかりにゼータリオンへの距離を詰めてくる。
『こいつ! リアリィをやった!』
フレイアが叫びとともにゼータリオンの前に割って入る。
『フレイア落ち着いて』
シュレンの声はこんな時でも落ち着いて聞こえた。
『ショウヘイ、もっと力を送って!』
「ど、どうすれば……」
翔平は事態への動揺を隠せないでいた。眼前の敵に集中しなくてはいけないことはわかるが、どうすればいいのかが把握できないでいる。
『とにかく力を送って!』
フレイアの尖った声に促されるように、翔平は体に力を込める。心にある焦燥感が喪失感に変わるのを恐れるように、力の解放を試みる。
体の芯から起こる熱が脈動し、フレイアへと送り込まれるのがわかった。
『リアリィをやった代償は払ってもらうんだから!』
フレイア機は信じられない機動力を発揮し、黒騎士の動きを押さえ込んでいた。フレイア機の猛攻を前に、黒騎士も防戦に回っている。
『怒りに身を任せるのは素人のやることだな』
『あたしたちはおまえみたいに仲間を盾にするようなことはしない!』
『覚悟の違いだな。我々には勝たねばならん理由がある! この宇宙のためにだ!』
『侵略者がよく言えたものね!』
フレイア機が黒騎士を押さえ込む中、翔平はそれを見守るしかできなかった。介入するなんてとてもできない――そう思っていた時、モニターの端にアラートが表示された。
「なんだ? 敵……?」
『これは……フレイア! リアリィ機からポッドの反応があるわ!』
シュレンがそう告げるも、フレイア機の勢いは止まらなかった。
「ポッド? リアリィ、脱出してたのか?」
『シュレン、回収を急いで! こっちはこのまま黒騎士を倒す!』
『わかったわ。一度クァードへ戻ります』
シュレン機がとなりを通り抜けて行く。向かう先はリアリィ機から出たポッドだということはすぐにわかった。
『蛮族はしぶといものだな』
『蛮族はそっちでしょうが!』
翔平はフレイアとの繋がりから、彼女の感情を感じられた。仲間を墜とされたことへの強い憤りが伝わる。
仲間を失う覚悟がないわけではない。だがそれでも――友軍機を墜とされたことへの憤りは強い。これはフレイアの仲間意識とプライドの問題だと翔平には感じられた。そして、これがフレイアの強さの芯なのだろうと。
『ポッドを回収したわ。バイタルを確認するけどあまりよくないわね。――シュレン機よりクァードへ。救護班の用意をお願い。バイタルデータを送ります』
『クァード了解。救護班を手配します。急ぎ帰還してください』
脱出には成功したものの、リアリィは無傷ではないようだった。それでも生きていてくれたことで翔平は安堵した。
『この期に及んで仲間の心配とはな』
『あんたにはわからないでしょうね』
『おまえたちのように滅びの力に取り憑かれているわけではないのでね。こちらの大義もまたおまえたちにはわかるまい』
『一方的な大義でしょうが!』
フレイア機が黒騎士を弾く。弾かれたところへライフルを撃ち込むも、黒騎士は間一髪のところで体勢を直して射線から機体をずらす。そして執拗なほどにゼータリオンへと向かってくる。
『もういい加減にしたらどうなの!?』
『それはこちらのセリフだな!』
Zリーヌンスで強化されたフレイアに押されつつも、黒騎士は退かずに攻撃を続ける。常人ならば圧倒されるであろうフレイアの強さをもってしても、この黒騎士を退かせるまでには至らない。
翔平はなにもできない悔しさを感じつつも、フレイアに力を送り続ける。そして、モニターにはシュレン機がクァードの戻ったことが表示された。
◇ ◇ ◇
「リアリィ!」
リアリィが生きていると知らされ、奈菜は戻ったシュレン機へと駆け寄ろうとした。ミィアルーンがそんな奈菜の肩を掴む。
「危ないぞナナ、シュレンの機動兵器は固定されていないんだ。近づかない方がいい」
「でもリアリィが――」
「救護班がすぐに向かうよ。心配いらない」
「リアリィは大丈夫なんですか?」
「バイタルデータを見た限り脱出の時に装甲にぶつかったショックで背骨が損傷しているようだよ。パイロットスーツがなければ即死していたのだけど、運が良かった。気は失っているけど死んでいるわけではないよ」
ミィアルーンは淡々と説明するも、奈菜は冷静に聞いていられなかった。
「大けがじゃないですか! リアリィ!」
シュレン機から降ろされたポッドには救護班数名が群がっており、奈菜もそこへと走り出した。
「ナナ! 危ないって! ……まったく、あの子は勇敢だな」
ミィアルーンもそんな奈菜の後を追いかける。
奈菜が行くと、ポッドが解放されてリアリィの体が担架に移されたところだった。
「リアリィはどうかしら?」
頭上からシュレンの声がする。コクピットを開き、上半身を覗かせていた。
「データの通り背骨の損傷が大きいようです。ですが大丈夫です。救護が早かったので命に別状はありません。すぐに治療に入ります」
「わかったわ。後はお願いします」
シュレンはそれだけ確認するとコクピットハッチを閉じ、機体を外へと向かわせた。仲間が傷ついても傍にいてやることはできないのだと、奈菜は痛感した。
奈菜は救護班の人の間からリアリィを見た。
「リアリィ……」
リアリィは青ざめた顔で、一瞬別人のように思えてしまった。
救護班の人が素早く慣れた手つきでリアリィに点滴のようなものを繋いでいく。
すると――。
「うっ、く――」
「リアリィ!」
うめき声を漏らし、リアリィが目を開いた。
「意識回復しました」
「リアリィ、無理しないでいてください」
救護班の人がそう声をかけるも、リアリィは周囲を見回し、奈菜を見つけた。
「ナ、ナナ……? ナナがいるってことは……わたしはまだ死んでないってことか……」
「リアリィ!」
「喋らないでください」
「ははは、やられたよ。やばいと思って脱出装置を作動させたところまでは覚えているんだけどね」
「リアリィ、喋らない方がいいみたい。生きていてくれただけ良かったよ……」
奈菜は思わず涙ぐんでいた。本当に、生きていて良かったと心から感じられた。
「パイロットなんてこんなもんだよ。悔しいけどね。……フレイアたちに迷惑かけちゃうな」
リアリィは奈菜の方に手を伸ばしたので、奈菜はその手を握りしめた。
「ちょ、ちょっとリアリィ、動かないで!」
救護の人が動きを止めようとするが、リアリィは体を動かしていた。
「そんなに弱くないって。けど、下半身の感覚がないや……。これじゃ機動兵器には乗れないから、ちょっと休まないとね」
「そうだよリアリィ、今は休んで! 救護の人たちも心配してる!」
リアリィの手を握る手に力が込められてしまう。
「はは、まったく情けない……」
リアリィの顔を見ると、横になった顔を涙が伝っているのが見えた。
「情けなくなんてないよ。リアリィは強いもの。またすぐに戦えるようになるから。だから泣かないでリアリィ……」
「ありがとうナナ……あとはフレイアたちに任せるしかないけど、フレイアたちなら大丈夫だろうから」
「そうよ、きっと大丈夫。だからゆっくり休んで」
「ああ、わかったナナ。ありがとう」
「リアリィ、呼吸器をつけます」
救護の人がリアリィに呼吸器を取り付ける。するとリアリィは目を閉じた。
担架が運ばれて行く様子を見ながら、奈菜は状況の深刻さを感じている。
そんな奈菜の隣にミィアルーンがやってくる。
「博士……みんな、大丈夫、ですよね」
「もちろんだ、と言いたいところだけど、どうだろうね。状況は不利だよ」
ミィアルーンは冷静に、正確な状況を伝える。自分の立っている艦の揺れもいつもより大きく、ただ事ではないということは認識できていた。
「そこでさらにリアリィがひとり欠けたことは大きい。敵はまだ余力があるようだから、こちらも援軍が来てくれないことにはいつまで持ちこたえられるか、というところだろう」
「援軍は……スタティアは来てくれますよね?」
すがるような視線をミィアルーンへ送ると、ミィアルーンは静かに目を閉じた。
「こちらへ向かっている……とは思う。ただ未だに通信が確立できないようだから確証はないよ」
「そんな……」
「しかしだ、ナナ。Zリーヌンスが共にある。あれは星を救う力と言われている。その力を持つ我々が簡単にやられるようなことはないだろう。科学者のわたしがこんなことを言うのはおかしいことだけど、Zリーヌンスを信じようじゃないか。今までもピンチを切り抜けていたのだから」
「そ、そうですね……」
ミィアルーンにしてはめずらしい希望論であったが、不安を募らせる奈菜には一時の気休めくらいにはなった。
艦の外では依然として激しい戦闘が繰り広げられているらしく、開け放たれた格納庫からは行き交う光芒が何度も見えている。そして今まではあまり見られなかった、リクサーヌ機とレマス機が敵機らしきものを追いかける姿も見えるようになっていた。
敵がクァードに近づいている――中にいる奈菜にもそんなことが伝わりはじめていた。
一対三の構成に、さすがのクァードもピンチを迎えている模様。
翔平達はクァードをこのまま守り切ることができるのだろうか!?
次回もまだまだ続きますので、
宇宙艦隊オッパリオンを引き続きよろしくお願い致します!!
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