【第2章】宇宙艦隊オッパリオン072話「喪失(前編)」
宇宙艦隊オッパリオン第72話開幕!!
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YOMです。
今回は久し振りの「前編」「後編」です。
ベールヌ宙域での戦闘は熾烈なものとなっていく・・・。
修理を終えたフレイアは、一目散に翔平とリアリィが黒騎士と戦う宙域を目指す。
黒騎士を無事に倒し、クァードはこの難を逃れることができるのか?
【〇七二 喪失(前編)】
ゼータリオンのコクピットには黒騎士に加え、新たなる敵機が一機急接近を仕掛けてくるのが感知されていた。
それに合わせるように、クァードを出たフレイア機がかつてない速度でこちらへ向かっている。
『フレイア、そんな速度出して大丈夫?』
『大丈夫。機体も調整してもらったし、まだまだ行けるって感じよ』
リアリィとフレイアはそんな通信を交わしていた。
翔平とリアリィはクァード防衛のために二機の敵機と交戦している。
『リアリィ、ショウヘイ、クァードからもう少し離れた場所に移動できる? 黒騎士をクァードのそばに近づけるのはちょっと危ない』
『わかった。ショウヘイ、移動するからついてきて』
「了解」
ゼータリオンとリアリィ機が方向を変えると、交戦中だった二機はクァードの方へと向かって行く。
「クァードは大丈夫か?」
『シュレン、新しく二機がそっちに流れる。相手できる?』
『わたしは何人を相手すればいいのかしらね。ふふ、やってできないことはないわ』
シュレンからは頼もしい通信が返る。
『負担かけてごめん。でもこっちもすぐに片付けるから』
『焦らないでフレイア。焦ると勝てるものも勝てなくなるわ』
『わかってる。ありがとうシュレン』
そんな会話が行われる中、モニターの奥に黒騎士を示すマーキングが表示される。こちらもすさまじい速度で、距離を示している数字が高速で減って行く。
リアリィ機が前に出て黒騎士の接敵に備えた。
『わたしの機体も出力が上がってる。Zリーヌンスの恩恵ってやつね。フレイアほどじゃないけど』
「リアリィの母乳力も感じられればもっと力を送れるんだけど……」
『それにはいろいろ準備が必要みたいね。フレイアみたいにさ。けど大丈夫、今のままでも十分だから。来るよ』
リアリィのその言葉の直後、黒騎士の機体が正面から突っ込んで来る。
『赤い機体は不在のようだな』
黒騎士からの通信と同時、黒騎士はリアリィ機と切り結んだ。
『すぐに来るってさ』
リアリィはそう言いながら黒騎士の剣を流す。このまま力比べに持ち込んでは不利だと判断したからだった。
剣を流された黒騎士はそれに構うことなく、体をゼータリオンへと向けてくる。
翔平は黒騎士から距離を取るべく上昇を仕掛けた。――が、黒騎士はその行動を読んでいたかのように追従する。
『回避が単調だ!』
追いつかれる、翔平がそう思った刹那、ゼータリオンの足下に割って入る機影があった。
『お待たせ!』
フレイア機だった。
フレイア機の剣が黒騎士の一撃を弾く。
弾かれた黒騎士は相応の衝撃を受けたのか、体勢を直すために一度距離を開けた。
翔平もモニター中央に黒騎士を捉え直すが、その直後にモニターの端に閃光が走った。
「なんだ!?」
『一機墜としたわ』
それはシュレンが仕留めた敵機が爆散する光だった。
『一機墜とされただと? あのランチャー持ちはかなりできるようだな。だが――』
背後からの敵機接近を知らせるアラートが鳴る。翔平は咄嗟に機体を旋回させた。
直後、振り下ろされた剣撃を大剣で受け止める。そこにいたのは迫っていた海賊機だった。
『遅いぞギドル』
黒騎士はやってきた海賊機のパイロットをギドルと呼んだ。しかしギドルの声までは通信に乗って来ない。
ギドル機はゼータリオンに肉薄したまま、さらに剣を振りかざしてくる。しかし黒騎士のそれと比べれば遅く感じ、翔平にも対応することができた。
そこへリアリィ機が割って来る。
『こっちはわたしが押さえる。フレイアは黒騎士をお願い』
『ありがとうリアリィ。ショウヘイも気を抜かないで』
「わかってる!」
『赤い機体は私にこだわるようだが、私はZリーヌンスの機体に用があってね。そちらへ当たらせてもらう!』
フレイア機をかいくぐり、黒騎士はゼータリオンに迫る。
『ギドル! 目標に食いつけ! 退路を塞げ!』
ギドル機は指示を受けてゼータリオンに執拗に距離を詰めてくる。
『ちょっと無理矢理すぎ!』
リアリィがそんなギドル機に攻撃を仕掛ける。ゼータリオンのモニターの中でギドル機はリアリィ機の攻撃を避けきれず、肩口の装甲を削り取られた。
『フレイア! リアリィ! ここから狙えるわ!』
シュレンからの通信を受け、翔平は一瞬なんのことか理解できなかった。だが、フレイアとリアリィは理解したらしく、反応が早かった。
『お願い!』
『任せる!』
リアリィ機はギドル機を蹴りつけ、そのまま体を反転させて黒騎士へと斬りかかった。しかし黒騎士はリアリィ機に反応し、その一撃を回避する。しかしその回避先にフレイア機が壁のように阻む。
『むっ、塞がれただと!?』
『自分を過信しすぎたんじゃない?』
フレイアのその言葉の直後、光の奔流が黒騎士へと迫った。
『狙撃だと!?』
光の奔流はシュレン機の放ったランチャーの一撃だった。退路を防がれた黒騎士は頭上からの直撃コースでの一撃を受けることとなった。
三位一体の攻撃を目の当たりにし、翔平はやったと思った。――だが、黒騎士は突如フレイア機に抱きつくような機動を見せ、紙一重でランチャーの一撃を回避して見せた。
『うそっ!? 今のを避けるって言うの!?』
フレイアは想わず驚きの声を上げていたが、その時はもう黒騎士はフレイア機から離れていた。
『あの距離から狙撃とは! 侮れんやつらだ! だがこれ以上はこちらも部が悪くなる――ギドル、距離を詰めろ!』
『部下の使いが荒いんじゃない!?』
ギドル機をゼータリオンに近づけまいとリアリィ機が割って入る。ギドル機の動きは頭上に位置しているシュレン機を意識してか、ゼータリオンへ接近する勢いが削がれているかのように思えた。
「リアリィ、こいつなら俺の方で!」
『甘く見ないで!』
ギドル機へリアリィ機が攻撃を仕掛けた時、ギドル機が急加速をかけたかのようにゼータリオンへ迫った。
「なんだ!?」
『こいつ! 仲間を盾にした!?』
フレイアが見たのは黒騎士がギドル機をゼータリオン側へと押し出す姿だった。黒騎士はギドル機を盾のようにしてゼータリオンへの接近を試みていた。
『ドロアズ様!?』
聞き覚えのない声が通信に混じった。それがギドルの声だということが翔平にもわかる。
「仲間を盾にしてるのか!?」
『前はわたしが! フレイアは後ろから!』
『わかってる!』
リアリィの一撃は推されていたギドル機の片足を斬り飛ばした。
『ぐっ!? なんだ!?』
ギドルの驚きの声が通信に乗った次の瞬間、リアリィのもう一振りがギドル機の胴体を薙いでいった。
真っ二つにされたギドル機を、黒騎士は用済みだとばかりに放り投げた。ギドル機は放り投げられた先で爆散するが、その間に黒騎士はゼータリオンへと剣を突き立ててきた。
「仲間になんてことするんだよこいつ!」
『大義の前に犠牲は必要だ!』
翔平は気味の悪い憤りを感じた。この男は手段を選ばない、冷たく恐ろしい相手だということを再認する。そんな人物の繰り出す攻撃は鋭くこちらを狙う。
黒騎士の一撃は回避に入ったゼータリオンの膝あたりを掠った。ゼータリオンが体勢を崩すと胴体目がけた一撃を振り下ろす。
『もらった!』
『させるか!』
背後から斬りかかったフレイア機はなりふり構わない一撃を繰り出していた黒騎士の背面にあるバインダーを斬り飛ばす。
『なんだ!?』
自身を襲った衝撃に黒騎士も動揺を隠さなかった。
同時に、黒騎士の体勢が崩れる。リアリィはそこを見逃さなかった。
『もらったのはこっちだね! 黒騎士!』
リアリィ機はその場で一回転して体勢を立て直し、不利な状況にある黒騎士に剣を振り下ろした。黒騎士の剣は間に合わない位置にあり、リアリィ機の一撃は必中するかのように思われた――が、黒騎士は素の拳でリアリィ機の剣を弾いた。
『えっ!?』
『双剣の機体、おまえの攻撃はもう何度も見させてもらっているのでな!』
そして黒騎士は剣を構え直し、そのままリアリィ機の胴体へと突き入れた。
『リアリィ!?』
フレイアの叫びがコクピットに響く。
翔平は一瞬なにが起こったかわからなかったが、モニターから見える光景では、黒騎士の剣がリアリィ機のボディを貫いているというものだった。
フレイアの叫びに、リアリィ機からの返事はない。
『ようやく一機か』
黒騎士が剣を抜きリアリィ機を蹴ると、離れたリアリィ機が爆発し、周囲に閃光を放った。
「な、なんだ……リアリィ……?」
翔平は事態を把握できずにいた。
起こったことがわからない。リアリィ機は――リアリィはどうなったのか?
「リアリィ……?」
呼びかけるようにつぶやいてみたところで、返事は返らない。
◇ ◇ ◇
「むっ」
「どうしたんですか?」
クァードの格納庫の隅で機動兵器の様子をモニターしていたミィアルーンが怪訝な顔を浮かべたのを見て、奈菜は思わずモニターを覗き込んだ。自分が見てもわからない情報の羅列の中で唯一判別できたのが、信号途絶の文字列だった。
「なにが起こったんですか?」
「……リアリィ機の反応が消えた」
「え?」
ミィアルーンは短く答えたが、奈菜にはそれがなにを意味しているのかがわからなかった。
「どういうことなんですか?」
「……リアリィ機が消えたということだよ」
「そ、それって――」
パイロットは危険なことをしている――その認識はあった。だが心のどこかではいつものように帰って来るものだという思い込みがあった。
「リアリィがやられたということだよ……ナナ」
「うそ……ですよね」
ミィアルーンは答えず、首を振るだけだった。
奈菜は自分たちは戦いの渦中におり、そこにはなんの保証も安全もないということを認識させられた。
「リアリィ……リアリィ!?」
モニターに向かい叫ぶものの、こちらでもリアリィの声は返らなかった。
リアリィイイイイイイイ!!
黒騎士の攻撃を受けコクピットを破壊された通信途絶したリアリィ。
リアリィを失ったクァード隊はどうなる!?
次回「喪失(後編)」は目が離せない!?




