【第2章】宇宙艦隊オッパリオン058話「Zリーヌンスと母乳力の使い方(後編)」
宇宙艦隊オッパリオンをいつも応援頂きましてありがとうございます。
YOMです。
今回もやって参りました058話後編!!
謎の機械生命体に促されやってきた湖の跡地で、翔平とフレイアは自分達の力を制御する為の術を学ぶことに。
しかしながら、翔平はZリーヌンスの気配をつかめずに焦りを募らせていた。
果たして、二人は無事に術を学ぶことができるのか!?
惑星ベールヌでの出会いはオッパリオンに、そして翔平と奈菜にどんな未来を見せるのか。
宇宙艦隊オッパリオン本日も出航です!!
【〇五八 Zリーヌンスと母乳力の使い方(後編)】
Zリーヌンスと母乳力の融合は日没近くまで試みられたが、結局のところ成果らしい成果を出すことはできないままだった。
「今日はこのくらいにしておこっか」
フレイアはそう言いながらランタンを灯した。翔平にはどういう原理で光っているのかわからなかったが、柔らかい光が煌々と周囲を照らしている。
「いや、もう少し――」
「焦ったってダメだって。ショウヘイには疲れが見えるよ」
「そうかな?」
「真面目すぎるって言われたことない? こういうのは感覚なんだから、もっと気楽に構えた方がいいって。たぶんだけどね」
笑いながらそう言われると、翔平はなんとなく居心地が悪そうに頭を掻いた。
真面目すぎるとは、奈菜にも言われたような気がしたからだ。
「案内係さん、今日はここまでにしておくわ。あなたもお疲れさま」
ロボットにそう話かけると、ロボットは頷いて見せる。
「わかりました。では私もスリープモードに入ります。なにか用があれば話しかけてください」
「わかった。ありがとうね。じゃあショウヘイ、戻って野営の準備をしましょう。完全に暗くなる前にやった方が楽よ」
「ああ、そうしよう」
湖跡地のほとりでスリープモードに入ったロボットをそのままにし、翔平とフレイアは来た道を戻って行く。
「あのロボット、あのままで大丈夫か?」
「大丈夫でしょ。意外と頑丈そうだし、敵がいるわけでもないし」
翔平の気がかりをよそに、フレイアは素っ気ない対応だった。ロボットへの対応となると、こうなるのかもしれないと翔平は思った。
森を抜けて留めていた機動兵器の下に戻る頃、周囲は灯りなしでは見通せないくらいの暗さになっていた。
「積んで来た荷物を下ろして。いろいろ必要なものが入ってるから」
「わかった。けど、休むなら機動兵器の中でもいいんじゃないか?」
「外敵がいるならそれもいいけど、ちゃんと横になることって案外大事よ?」
「そ、そうか」
フレイアの言葉に納得しつつ、翔平は遠隔操作でゼータリオンの手を動かし、自身を乗せてコクピットまで移動させた。中から持って来た荷物を取り出し、再びゼータリオンに下ろしてもらう。
大きめのリュックがひとつと、食糧のパック数日分が積み込まれていた。
翔平がゼータリオンから降りると、先に荷物を下ろしていたフレイアはもうテントのようなものを設置させていた。
「さすがに手慣れてるな」
「惑星探索なんて訓練で一回やったきりだけどね。野営は何度かあるけど、まぁそう難しいものじゃないって。テントの張り方わかる?」
「いや……」
「ふふ、わかるわけないか。貸して、広げればすぐに入れるようになるから」
フレイアは翔平の荷物の中からテントを取り出し、自分のテントの向かいに設置する。
小さく折りたたまれていたシートを広げるだけで、中で人が寝られるくらいの大きさはある簡易的なテントが展開された。
「見た目は華奢だけど雨風に対しても耐性はあるんだってさ。中は快適になってる」
「すごいな。さすがオッパリオンの技術だ……」
「地球ではこういうことしないの?」
「好きな人は趣味でやってるよ。アウトドアは結構人気のレジャーだからね。俺はあまり経験ないけど」
「なるほど。そこはオッパリオンも似たようなものね。とは言っても、戦争がはじまってレンジャーなんて下火になっちゃったけどさ。昔は流行ってたって聞いたことがあるわ」
そんな話をしながらフレイアは自分のリュックから毛布のようなものを取り出していた。寝具らしいということがわかり、翔平もフレイアに倣って同じものを取り出した。
「携行食なんて久しぶり。よくできてはいるけど、ショウヘイ的にはどうだろう?」
食糧パックのひとつを手に取り、フレイアが言う。食糧パックは大きめの本一冊ぶんほどの大きさで、厚みもそれなりにある。
「もらっておいて言っちゃ悪いけど、こういうのってあまり美味しくはないイメージがあるな」
「ふふ、試してみてよ。オッパリオンの携行食は毎年更新されててね。涙ぐましい努力があるのよ、これには。さて、食事の時間にしましょうか」
フレイアの置いたランタンを挟み、携帯シートを広げてふたりはその上に腰を下ろした。
食糧パックはビニールのような感触で、フレイアは素手で切り開けていた。それを見て、翔平も倣う。パックの中にはさらに小分けになったパックがふたつ入っていた。
「中はランダムなのよね。飽きないように七種類くらい用意されてるって話」
「へぇ、すごいな」
「基本的にはタレッツとなにか、って組み合わせね。ショウヘイはなに?」
「これだ」
翔平のパックにはマーゼル肉のビフォルソース煮込みと書いてあった。クァードの食堂でも何度か食べた、すっかりと馴染んでしまった料理だった。
「なんだ、あたしと同じじゃない。汁気があるからこぼさないように開けてね」
「あ、ああ」
パックの中にはスプーンも付属していた。
タレッツとは要するにパンなので、翔平はまずそちらのパックを切り開いた。するとこれもどういう原理かわからないが中からは湯気が立ち上った。
「おぉ?」
「すごいでしょ。開封すると温まるようになってるわけ。焼きたてとは言えないけど、ちゃんと温まってるから堅くないはずよ」
「……すごい」
小麦色のタレッツはどう見てもパンに見え、取り出すとふわふわの柔らかさになっており、温かかった。
フレイアも開けている肉の煮込みのパックを開けると、中はシチューのようになっていた。パックを持ったまま、付属のスプーンで食べるようだ。
「うん、美味いな。携行食とは思えないよ」
「そう言ってもらえて光栄ね。言ったでしょ? 涙ぐましい努力があるって。携行食の進化の歴史は訓練校で習うくらいね」
フレイアはどこか得意げにそう答えた。
「訓練校か……フレイアはそこに通っていたのか」
「そうね。義務教育を終えると任意で母乳力の検査を受けられるんだけどね。まぁだいたいみんな受けるんだけどさ。それで母乳力の強い人は軍への入隊を勧められるわけ」
「それで軍隊に?」
「うん。あたしは元々オッパリオンのためになにかしたかったから、願ったり叶ったりみたいな感じだったかな。もし母乳力が低かったら宇宙艦で働こうと思ってたんだ。でも、運良くパイロット適正があってね。それでパイロットになったって感じ」
「そうだったのか……」
フレイアが語った生い立ちに、翔平は不思議なほどの納得感を得た。
フレイアは日頃の話し方や立ち居振る舞いから見て、パイロット以外が想像できなかったからだった。
「ショウヘイは?」
「え?」
「地球でなにやってたの? 教えてよ」
「俺は……学生だよ。国際アカデミーっていう、大学みたいなところで、宇宙課って言うんだけど、要するに宇宙で働くことを見据えて訓練してるんだ」
翔平の言葉に、フレイアは目に見えるような好奇心を見せてきた。
「へぇ、宇宙で働くのに専門の訓練が必要なんだ」
「ああ。最低でも二年、できれば四年の訓練学科があって、そこから就職して本格的な訓練を受けて実務に就くんだ。国際ステーションとか、火星プラントとか、成績がよければ宇宙軍にも志願できる」
「なるほど。地球じゃまだ宇宙で働くには特別な訓練が必要なのね」
「そうだよ。オッパリオンほどの技術もないから宇宙へ出るには大変なんだ」
「大きいスーツを着ていたものね、最初会った時。なんでこんなの着てるんだろうって思ったけど、ナノスキン技術がないから当然と言えば当然よね」
ふと、フレイアと最初に会った時のことを思い出す。あの時はステーションの外壁で、翔平も奈菜も宇宙服を着ている状態だった。
オッパリオンの技術なら宇宙服は不要だし、エアカーテンという技術もあるので気密の必要もない。そう考えるとオッパリオンでは宇宙に出るということはかなり敷居の低いことなのだろうと翔平は感じた。
「ショウヘイは宇宙でなにがしたかったの?」
「なにがって聞かれると難しいんだけど……案外なにも考えてなかったのかもしれない。ただ、宇宙に出られればいいな、くらいで。――でも、オッパリオンの人たちに会ってその意識は変わったよ。地球の人類ももっと宇宙開発をしないといけないと思ったんだ。マーラ帝国のような脅威もあるし、今度、どんな未知と遭遇するかもわからないから」
「ふ~ん……ショウヘイってやっぱり真面目ね」
フレイアはジッと翔平を見つめ、そう言った。それは感心しているようでもあり、呆れているようでもあるように聞こえた。
「そう……なのか?」
「全体のことを考えられるんだもの。案外、人って個人のことを考えがちでしょう? 軍に入ると嫌でも全体のことを考えるようになるけど、そうじゃない人って、どうしても個人のことを考えるものだし」
独り言のようにそんなことを言い、フレイアはスプーンを口に運んだ。
「全体のことか……。それもオッパリオンの人たちに会ってからかもしれない。それまでは自分はなにも考えてなかったよ。普通に生活が続いて、普通に大人になって、当たり前のように生活が続くと思ってた。けど自分にZリーヌンスがあることがわかって、オッパリオン星にも生活する人がいるってわかって、自分は小さいんだなって」
「小さくはないでしょ。Zリーヌンスがあるんだし」
「それがあんまり自覚がないんだよ。すごい力なのかもしれないけど、自分がそれを左右できる立場にあることもわかってるけど、いまいち実感できないって言うか」
パックの中に視線を落としつつ、翔平は吐露するように言った。実際にそれが本音だった。
「フレイアは自分の力に実感はあるのか?」
「実感というか、自信と自覚はあるわね。自分の判断に誰かの命がかかっているっていう。まぁそういう訓練もするんだけど、おかげで迷うことなく任務をこなせているかな。適性もあったんだと思うけどね」
フレイアは微笑みを見せながらそう言う。実際に言葉の通り、フレイアには今の立場や状況に適正があるように感じられた。フレイアの行動にはいつも迷いを感じられない。
「そういうところ、なんかいいな。フレイアはすごいと思う」
「そう? あたしも案外惰性でやってるんじゃないかっていう思いはあったんだけどね。でも、ショウヘイがあたしたちに会って変わったっていうように、あたしもマシ長に会って少し変わったかも」
「マシ長に?」
「うん。なにかこう、上手く言えないんだけど、これからは今までと違うんじゃないかって感じた。マシ長はあたしに、あたしにはZリーヌンスを守る使命があるってことを言われたの。全然実感なかったんだけど、少しずつわかるようになってきた気がするかな」
フレイアはそう言うと、食べ終えたらしく空っぽになったパックにスプーンを入れ、くるくると器用に折りたたんだ。
「今なら納得できる。自分が軍に入る適正があったのも、クァードに配属されて地球の近くまで行ってあなたに会ったのも、あたしの使命だったんじゃないかって」
「使命か……」
フレイアは自身に納得しつつ、自信を持って行動できているようだった。そんなフレイアが翔平には大きな存在に感じられた。
「こうしてこの星に来たのも、まぁ自分で言い出したんだけど、勝手に運命感じてるわけよ。だから周りには悪いけどあたしは案外充実してる。全体を考えないといけないから自己満足とかどうでもいいんだけどね。それでも、あたしはあたしがやりたかったことができてるって実感はあるよ、ショウヘイのおかげで」
「俺の?」
「そう」
フレイアは頷くが、翔平にはなんの実感もなかった。むしろ周囲を振り回しているような感覚しかない。
「まぁ……戦闘も今日みたいなことも、提督ならもっと上手くできるんだろうけどさ」
フレイアは自嘲するように笑う。
「そんなことないだろ。フレイアはいつもよくやってると思う」
翔平は気がつくと語気が強くなっていた。
「え?」
フレイアがその語気に驚く。
「ご、ごめん。フレイアはでも本当によくやってると思う。戦闘だってすごいし、こうやってここに連れてきてくれたことだって、フレイアの判断と行動力だし。アーリア提督はたしかにすごい人だろうけど、比べることはないよ。フレイアはフレイアだ。俺から見たら十分にすごい人だ」
「そ、そんなこと――」
フレイアは顔を伏せてしまった。
「フレイア?」
「こっち見ないで」
「は?」
「そんな風に褒められたことないから、今変な顔になってるから見ないで」
「変な顔って……」
仕方なく、翔平は顔を背けた。
たまたま見た夜空には地球から見る月によく似た衛星が見えた。
「でも――なんかフレイアのことが少しわかった気がする」
「え?」
翔平の言葉に、フレイアは伏せていた顔を上げた。
「フレイアも真っ直ぐがんばってる。やるべきことを見つけてやってるんだってさ。なら俺もそうすればいいんだって思った。あまり考えたり、迷ったりしないで、自分の選択に自信を持つべきだって」
翔平が笑んでフレイアを見ると、そこにはやや赤い顔になったフレイアの顔があった。
フレイアは驚いたように目を丸くしていたようだが、翔平の言葉を理解すると、穏やかな笑顔になった。
「それがいいと思う。結局できることしかできないんだし。できることが大きいなら、大きいことやってやろうよ」
「はは、そうだな」
フレイアの言葉を受け、翔平はなにかつっかえていたものが取れたような感覚がした。
その瞬間――ふわりとした感覚が空気に混ざっているのを感じる。
「うん?」
「どうしたの?」
「いや……今、母乳力を感じられた……ような」
「今?」
ふわりとした感覚を掴むように、感覚の手を伸ばす。するとそれは柔らかな糸のように感覚に絡みつき、感触として感じることができた。その糸の先には、繋がっているフレイアを感じられる。
「感じる……これが母乳力か……! フレイアがわかる!」
母乳力の実感を受け、翔平は思わず立ち上がった。
「ほ、本当?」
「あ、ああ、間違いない。この感覚は母乳力だってわかる――今なら、繋がることができるかもしれない!」
興奮気味に話す翔平を前に、フレイアも立ち上がった。
「なら、今からやってみるしかないわね。行きましょう」
「行こう、フレイア」
フレイアは置いていたランタンを手に取ると、翔平と共に湖の跡地へと向かい枯れ木の森へと入っていった。
◇ ◇ ◇
夜の湖跡地は真っ暗闇に包まれていた。ランタンの明かりだけが周囲に光をもたらしている。
そこに浮かぶ影は翔平とフレイアだった。
「この母乳力と繋がれば……きっとできるはずだ」
「できそう?」
「やれると思う。迷いなく、自分の力を使ってみる。だからフレイア、力を貸してくれ」
「言われなくなって」
そう答えるとフレイアは片腕のグローブを脱ぎ、手に持った。そして脱いだ方の手を翔平の手に繋ぐ。
「フレイア?」
「物理的な接触はいらないって言ってたけど、気分の問題。こうしていた方が繋がってる実感をイメージしやすいんじゃない?」
片目を閉じ、フレイアはどこか楽しそうに言う。
「……わかった。やってみよう」
「うん」
翔平は自信の中に力――Zリーヌンスに呼びかけるように目を閉じた。するとZリーヌンスはすぐにそれに応じるように、翔平の胸に熱を伝えた。
「この感じだ……」
その熱をさらに高めるイメージをする。
……みんなを救うように、窮地を切り抜ける時のように、なにかに手を伸ばすように――。
すると熱はじわじわと燃えるように熱量を増してくる。翔平の中で力が沸き起こる実感が生じた。
「きた……あとはこれを母乳力に繋げる――」
「感じて、ショウヘイ――」
翔平の手を握るフレイアの手に力が込められるのがわかった。
その手の柔らかさと似たような感覚を翔平は掴む。それは糸のような感覚であり、翔平はそれを自分へとたぐり寄せるイメージをした。自分の中に糸を引き込み、熱の根幹に繋げようとする――が、糸が思いのほか手元に来ず、繋げることができない。
「ん……なんか引っ張られてる気がする……それにこの熱さ……これがZリーヌンスだとしたら、かなりはっきり感じられてる……」
フレイアも未知の感覚に、どこか興奮気味に応じた。
「もっと母乳力が必要なら持って行って――いくらでも出すから」
「ありがとうフレイア」
フレイアの言葉と同時、糸が緩む。緩んだ分をたぐり寄せ、熱の根幹へと近づけ、繋げる――。
「っ!? な、なにこれ!?」
フレイアが驚きの声を上げた瞬間、翔平にも力が流れ込んでくる感覚が起こった。
「こ、これが――繋がるということか!」
「す、すごい……!」
Zリーヌンス特有の熱が膨れ上がり、果てしなく膨張に向かっているのを感じた。同時にそれを柔らかな力が包む込むイメージがある。熱と柔らかさが渾然となり、翔平たちに向かい対峙するかのような意思を見せた。
その感覚は翔平のみならず、フレイアにも感知できていた。
「ショウヘイ――今なら」
「やってみよう」
「うん」
ふたりは目を開き、真っ暗な湖跡地を見た。
そしてイメージする――水が湧き上がるのを。
すると待機状態だった力がさらに膨れ上がり、翔平とフレイアから発せられる白い光となった。
「光が……」
その光景にフレイアが感嘆のような声を漏らす。そして光は留まることなく広がり、湖の跡を照らし出す。
「この湖を元に戻す――できるはずだ」
翔平が開いた手を湖の方へと向ける――すると光はその方向に向かい流れ出し、干上がった湖の中央へと向かった。
「う、うそ……」
フレイアが驚いたその視線の先では光が集まり、それが湧き上がる水柱となった。
光が、水に変わる。
「これがZリーヌンスの力……」
間欠泉のように吹き上がる水柱を見ながら翔平は呟いた。
しかも今自分には確実にこの力を制御できるという実感があった。ただ熱として感じられていたZリーヌンスが、今では駆動する機械のように、なにかを行える力として実感することができた。
そんな中――。
「うくっ……」
フレイアが不意に胸を押さえた。
「フレイア?」
「だ、大丈夫、思ったより母乳力が吸われてるだけ。機動兵器に乗ってる時にも時々あるけど、いきなり来るとちょっとびっくりするから」
フレイアは大丈夫と言わんばかりに翔平に笑んで見せた。
その間にも水は溢れだし、湖をみるみるうちに復元していった。
水面と呼べるものができはじめると、勢いを持って水面が持ち上がってくるのが見てわかった。
翔平とフレイアを覆っていた光は徐々に収まりはじめてはいるが、湖の勢いは衰えない。
「Zリーヌンス融合を確認しました。おめでとうございます」
気付くとロボットが近くまで来ていた。
「なんとかできたよ、フレイアのおかげで」
「やったのはショウヘイでしょ」
「Zリーヌンスと母乳力とは密接な関係があります。この成果はふたりのものです。それでは、次のステージに進みましょう。Zリーヌンスを完璧に、自在に操れなければ返って危険になります」
「わかった。教えてくれ。たしかにこの力は制御できなければ危険だ。それは実感できるよ……」
いつの間にか湖の復元は終えており、目の前には光る衛星を映す水面が広がっていた。
これほどのことを短時間に終えてしまえる力に、翔平は内心で畏怖の念のようなものを抱いていた。
これはとんでもない力だ、と――。
するとフレイアの手元でアラームのような音が鳴った。フレイアは慌てて手を離す。
「どうした?」
「クァードからの緊急通信。なにかあったのかも。シェアトス経由でこっちに回線を回してもらうわ」
「わかった」
「シェアトスフレイア機、クァードからの回線をこっちに。中継できる? お願い」
フレイアがそう言うと、しばらくして翔平の耳にもノイズ音が聞こえた。
『こちらクァード。アリメルです……聞こえますか?』
「艦長? 聞こえるわ。機動兵器経由だからちょっと音質は悪いけど」
「聞こえます」
『先ほど強力なZリーヌンス反応を感知しました。なにかあったのですか?』
その言葉に翔平とフレイアは顔を見合わせた。
フレイアはどこか得意げな笑みを浮かべる。それを見て、翔平は頷いた。
「あったわ。Zリーヌンスが次のステージに進んだってところね。詳しくはあとで報告するけど、すごいよ、これ」
『そうですか。それはわかりましたが、この反応はかなり強力なものなので、もしかしたら海賊たちにも感知された可能性があります。だとしたら――』
「こっちの所在がバレたってことね」
『そうなります。ラメル宙域からここまではかなり時間がかかりますが、これで時間制限ができたことになります』
「わかったわ。まだやることはあるみたいだけど、なるべく急ぐから」
『お願いします。ですが無理はしないように。こちらも周囲の警戒を強化して当たります』
「頼んだわ。こっちもがんばるから」
「やってみます」
『わかりました。それでは幸運を祈ります――』
通信が切れると周囲には静寂が訪れた。
ランタンの明かりだけが煌々とふたりと水面を照らしている。
「さて、急がないといけなくなったってことね。案内係さん、教えて。次はなにをするの?」
フレイアは脱いでいたグローブを付ける。
「次は力を制御していただき、広範囲ではなく集中してもらいます。この森にある樹を一本、再生してもらいます」
淡々と応じるロボットに、フレイアは胸を張って見せる。
「わかったわ。なんでもやってやろうじゃないの。今ならなんでもできる気がするわ。ショウヘイもそうでしょう?」
「ああ、やってみよう」
「わかりました――が、本日はふたりともお休みになった方がよろしいです。不慣れな力を使ったせいか、バイタル反応が少々乱れてます」
無機質にそう言うロボットの言葉に、翔平とフレイアはドキリとした。
言葉ではできると言ったものの、たしかに全身には疲労感のようなものがまとわりついていた。
「そんなことまでわかるのね」
「……無理は禁物、か」
「そうです。奇跡の力も代償なしではありません。多様すれば命にも関わります。そこも含めて、制御を覚えてもらわねばなりません」
「わかったわ。今日はもう寝させてもらいしょう。いい、ショウヘイ?」
「ああ、そうしよう。フレイアだって母乳力をかなり使っただろうし」
フレイアからかなり力を引き出したことは翔平にはわかっていた。自身の力も使ったが、フレイアに依存した部分も少なくはない。
「ではお休みになられてください。私は小屋に戻っておりますので」
そう言うとロボットは先に森を引き返して行った。
フレイアはランタンを手に取る。
「じゃ、今日はここまでね。すごいじゃない、ショウヘイ」
「もっと練習が必要みたいだけどね」
「でも――この力がどうオッパリオンを救うんだろう? オッパリオンの環境は安定してるんだけどな」
「それは……どうだろう。そのうち戦闘にも応用できる使い方を教わるのかもしれない」
「そうね。けど……なんだろう、Zリーヌンスは戦闘向きの力じゃないような気がしてきたかな。ここまで使って来ておいて言うことじゃないけど」
「そうなのか?」
「そんな気がするってだけ。深い理由も確信もないことよ。さ、戻りましょ」
「あ、ああ」
フレイアの予感には翔平も少なからず通じる部分があった。
Zリーヌンスの全貌がわかるにつれ、その力の特異さもまたわかるようになってきている。
この力はなんのためにあるのか――自分はそれをどう使おうとしているのか、それを見極める必要があると、枯れ木の森を進みながら翔平はひとり思った。
宇宙艦隊オッパリオンをいつも読んで頂きまして誠にありがとうございます。
オッパリオンを気に入って頂けましたらお気軽に、感想・コメント・評価・ブクマ等お願い致します。
スケキヨ氏とYOM、皆様の反応を楽しみにお待ちしております。
次回は059話!!
あの子がフォーカスされる回になる予定!!
お楽しみに。




