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宇宙艦隊オッパリオン  作者: 桐生スケキヨとYOM
【第2部】【第7章】宇宙艦隊オッパリオン「王の軌跡編」
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【第7章】宇宙艦隊オッパリオン459話「大海賊の杯」

いつも応援ありがとうございます!!

本日も宇宙艦隊オッパリオン更新です。


今話は「大海賊の杯」

大海賊と言えばあの人、そしてあの人の杯。

一体誰があの人と杯を酌み交わすのか!?

まだ見ぬ明日の向こう側、未来で待つものは?そして、彼女は何を思うのか!?

【四五九 大海賊の杯】


 奈菜が北天基地のシャトル発着場につき、シャトルから降りると、ひとりの長身の女性が出迎えに来ていた。


「ナナ様ですね?」


 眼帯をつけた女性に迫られ、奈菜は思わず後ずさる。


「は、はいっ。あの、アルテナさんに呼ばれていて」


 すると長身の女性は背筋を伸ばした。


「失礼しました。わたしはリアンジュと申します。アルテナ海賊団所属、ユースカティア艦長をしています。アルテナの命により、お迎えにあがりました」

「え、艦長さん自らですか?」


 思わぬ人選に奈菜は驚いた。眼帯のリアンジュはそんな奈菜に笑顔を向ける。最初の印象と違い、優しそうな笑顔だった。


「ちょうど手が空いていたんです。それに、船長は礼を尽くせということで、わたしに行けと」

「そうだったんですね。艦長さん自ら、ありがとうございます」

「いえ。重要な客人の招待とあれば当然のこと。船長はユースカティアで待っています。ご案内します」

「恐れ入ります」


 リアンジュの後ろをついていく。もう慣れてきた北天基地、基地の広さは相当あるものの、行く場所は限られている。シャトル乗り場からリアンジュが向かっているのは特務艦ドックだなと、奈菜は予想がついた。

 なにか話した方がいいのだろうか、奈菜はそう思い、声をかける。


「アルテナ海賊団の艦隊はいつ到着したんですか?」

「それが、まだ着いたばかりなんです。艦は母乳の補給と装備のメンテナンスをはじめました」

「それでは、艦長さんはお忙しいのでは?」


 リアンジュは肩越しに奈菜を見て、ふふっと笑った。


「わたしたちは海賊です。正規の軍じゃないので、指示だけ出したら自由です」

「そ、そうなんですか?」

「――と言っても、いい加減にやってるわけじゃないんですよ。わたしたちは正規の軍じゃないですが、正規の軍より仕事ができる。ただ少し、大雑把なだけなんです。それが、アルテナ海賊団のやり方です」

「な、なるほど、そうなんですね」


 軍隊の中にあっても、自分たちのやり方を変えない、そのスタイルに海賊らしさを感じつつも、そのまとめ役でもあるアルテナは相当に怖い人なのではないだろうかと、そんな考えが膨らむ。

 特務艦ドックへ続く通路のゲートを越えると、フレイアの姿があった。フレイアもすぐに奈菜に気がつく。


「ナナ」

「フレイア」

「どうしたの、海賊と一緒とはめずらしい」


 するとリアンジュが応じる。


「船長の招待客をご案内しています」

「船長? あぁ、アルテナね。ナナに用事だなんて」

「うん。大事な話があるって言われて」

「なるほど。ただの興味ってことじゃないのね」

「フレイアは忙しい?」

「ちょっとね。リネイ用の装備搬入に付き合わないといけなくて」


 リアンジュと違ってフレイアは正規の軍人。海賊のように自由というわけにはいかないようだった。


「ね、ちょっと聞きたいんだけど……」


 奈菜がフレイアの耳に口を近づける。


「アルテナさんって、怖い?」


 奈菜の質問を聞き、フレイアはニヤッとした。


「そりゃ、宇宙一と言われる大海賊だからね。怖い人だよ、アルテナは」


 フレイアが笑顔でそう応じると、聞いたリアンジュは誇らしげな笑みを浮かべた。


「やっぱり怖い人なんだ。翔平から少し聞いてるけど、すごい度胸のある人だって」


 フレイアが頷く。リアンジュも頷く。


「うちの船長を越える度胸のある人をわたしは知りません。もし並ぶ人がいるとすれば、それはオッパリオンではアーリア提督くらいでしょう」


 アルテナに会ったことのない奈菜は、なんだか恐ろしくていかつい人物像を思い浮かべる。

 フレイアが近づき、奈菜の肩をポンポンと軽く叩いた。


「大丈夫、海賊だから悪い人だけど、話が通じない人じゃないよ。いきなりナナにひどいことするとか、そういうこともないから安心して」

「ほ、本当?」

「本当だって。行っておいで。リアンジュ艦長、ナナをお願いします」

「それはもちろん。では、行きましょう」


 手を振るフレイアに見送られ、奈菜はリアンジュの後を追った。

 少し進むと解放ドックに出て、ユースカティアが見えた。


「これが大海賊の艦……」


 大柄の艦であるが、オッパリオンやマーラの艦艇とは違ったシルエットを持つ、独特の形をしている。


「ユースカティアはマーラで建造された艦ですが、独立した設計思想から造られた艦なのです。船長の理念と哲学、戦術が反映されてこの形になったのです」

「すごい……」


 個人の思想がひとつの艦を作り上げたと聞き、奈菜は感嘆が漏れた。アルテナという人物はそこまでにすごいのだと、改めて実感する。

 搭乗ゲートから艦内に入ると、艦内は思いの外手狭な空間となっていた。中を進み、ひとつの部屋にたどり着く。


「リアンジュです。お連れしました」

『ご苦労。入れ』

「どうぞ」

「失礼します」


 アルテナの部屋と思わしき部屋に入ると、そこには卓の上に足を投げ出して座る、小柄な異星人の姿があった。アーリアの被っている帽子とよく似た帽子を被っているが、奈菜の想像していたいかつい姿ではなかった。


「な、奈菜です」

「よく来たね。あたしがアルテナだよ。まぁあまり人目につかないように使いのものを出したんだ、そこは勘弁してくれ」

「い、いえ」


 部屋は狭く、リアンジュが入ると三人でほぼいっぱいのスペースだった。


「座ってくれナナ。この艦は狭いんだよ。トリアルダみたいなお高いやつらがくつろぐ艦じゃないからね」

「し、失礼します」


 奈菜がアルテナの向かいのイスに座ると、アルテナは足をどかした。


「リアンジュ、ご苦労。例の準備をしてきな」

「わかりました。ではナナ様、ごゆっくり」


 リアンジュが部屋を出ると、アルテナはふうと息をついた。

 この小柄な人物が大海賊とは意外だった。翔平もアルテナの容姿についてはなにも言ってくれていなかった。


「そう緊張しなくていいぞ。おまえさんをどこかの星に売り飛ばそうとか、そういうことをやるつもりはないよ」


 アルテナは立ち上がり、棚から金属製のカップを取り出した。そして、ベッドのような台の下からなにか瓶のようなものも取り出す。

 奈菜の前にカップを置くと、そこに瓶から液体を注ぐ。飲み物のようだった。


「もてなしなんてしたことないんだ。だからこれはあたしのやり方さ。こいつはこの宇宙で一番の酒だよ」

「え、お酒はちょっと……」


 言った瞬間、アルテナの視線が鋭くなる。


「い、いただきます……」

「いい子だね」


 アルテナは笑顔になり、自分のカップにも酒を注いだ。


「この杯はふたりの出会いに捧げる」


 アルテナが乾杯のような仕草をしたので、奈菜もそれに合わせた。そしてアルテナに合わせてひと口飲む。


「っ!? こ、これ!?」


 香りはなんとも言えない品のある豊かな香りだった。だが、奈菜が驚いたのはこの酒の強さだった。ひと口飲んだだけで、喉が焼けるように熱くなる。胸まで熱くなる。


「ははは、強いだろう? 宇宙で一番の酒、それは宇宙で一番強い酒さ」


 アルテナは笑う。


「驚きました」

「ひと口飲めばもう仲間さ。無理して飲まなくてもいいよ」

「あ、ありがとうございます」


 フレイアの言うように、アルテナは話の通じる人かもしれないと思えた。


「地球にも海賊がいるんだってね。ヴァツルドの坊ちゃんから聞いたんだ。おかしいと思わないかい? これだけ離れた星で同じ文化がある。これをどう考える?」

「それは……収斂進化のように、ある程度の知能を持つ生命体は、似たような文化を作り、文明を作って行くのではないかと思います……って、これはわたしの考えですが」

「いいさ、あんたの考えが聞きたかったんだ。ふむ、賢い見解をするじゃないか。オッパリオンで勉強もしていると聞いたよ」

「それほどのことはありません」

「もうひとつ聞かせて欲しい。これを見な」


 そう言い、アルテナは帽子を取った。すると、そこには動物のような耳がある。


「ケモミー星人……なんですか?」


 思わず聞いてしまった。アルテナは頷く。


「そうさ。隠すことじゃないんだけど言いふらすものでもないってところだよ。あたしやマーラ人、オッパリオン人が地球人と似てるのはどう説明するかね?」

「それは……」


 アルテナの瞳には好奇心の輝きがあった。これは自分が見定められようとしているのだ、奈菜はそう思った。だから、少しだけ勇気を出して言葉を続けた。


「宇宙に存在する文明、文化、もっと言えば生命はもともとひとつの起源からはじまったのではないか考えています」

「なるほど。続けてくれ」


 アルテナは酒を飲みながら奈菜を促した。奈菜は続ける。


「オッパリオンの古文書に、宇宙のすべては母乳からはじまった、という一文がありました。それが本当かはまだ調査中ですが、生命はすべてひとつからはじまっていて、地球人とオッパリオン人だけじゃなくて、マーラ人も、ケモミー星人も、ラメルのガン=カニア人だって、元を辿れば同じかも知れないと考えています」

「ふむ……」


 アルテナは神妙な顔になり、ぐいっと酒を煽った。この強い酒をよくこんなふうに飲めるものだと、奈菜は驚く。


「賢い子だね。自分を特別だって思わないところも気に入ったよ。自分を客観的に見れるってことは、状況もよく見える。なにかを探求するにはもってこいじゃないか」

「お、恐れ入ります」

「値踏みするようなことを聞いて悪かったね。不器用な海賊なんだ、許してくれ」

「い、いえ」


 アルテナのカップは空っぽになっており、自分で酒を注ぎ足した。こんな強い酒をそんなの飲んで大丈夫かと思ったが、アルテナは顔色ひとつ変わっていない。


「先に言うとね、ラメルのマシはあたしの妹だ」

「えっ!? マシ長のお姉さん!?」


 そう言われると、マシ長と似ているようにも思えた。


「そうだよ。ラメルはいい星だが海賊にうるさくってね。あたしは近寄れないのさ」

「そう言えば、ラメルは海賊の出入りは禁止って」

「あぁ。まぁそれはいいんだ。些末なことさ。なんでそんなことを言ったのか、そこだろう? あたしもね、マシほどじゃないけど、予言者みたいなことができちまうことがあるんだ、たまにだけどね」

「なにか……見えたのですか?」

「見えたものとね、見えてるものがある。見えてるものは現実さ。今、こっちに敵が向かってるのは知ってるだろう?」

「はい」

「このままぶつかったらあたしたちは負ける。精一杯準備しているが、このままじゃ勝てっこない。これがあたしが見てる現実さ」


 アルテナは笑いながら言う。この笑顔は自棄になっている笑顔ではない、奈菜はそう感じ取った。アルテナは、見たものもあると言ったからだ。

 奈菜がそう思いアルテナを見つめると、アルテナは酒をあおった。


「わかってるよ。それにしちゃ諦めてないって言いたいんだろう? その通りさ。あたしが見たのはZリーヌンスだ。これがありゃ、あいつらにも負けない」


 アルテナのその言葉に、奈菜は今まで自分の肩に力が入っていたことに気がついた。アルテナに負けないと言われ、はじめて肩の力が抜けた。


「あたしが見たのはZリーヌンスの目覚めだよ。あれが目を覚ます時、そこには思いの通じた母乳力と、あんたがいたのさ」

「わ、わたしですか?」

「そう。目覚めるZリーヌンスの一番近くには、あんたがいた。だから目覚めた」


 アルテナは卓に肘をつき、奈菜に顔付ける。


「ショウヘイの近くから離れるんじゃないよ。あたしらは必死の抵抗をする。それにZリーヌンスが加わるからなんとかなるんだ。どっちが欠けても未来は消える。その片方が、ナナ、あんたにかかってる。ずっと、そばにいるんだ」


 アルテナの言葉は重みを持って奈菜の胸の奥に響いた。


「わ、わかりました。翔平のそばにいます」

「頼んだよ」


 そう言うと、アルテナは背もたれに身を投げ出すように座り直す。


「おいリアンジュ、そこにいるだろう。話は終わった、持ってこい」

『ただいま』


 そういうと扉が開き、様々な料理の盛られた大皿が卓に置かれる。そして酒瓶らしきものも何本か置かれる。


「あの、アルテナさん、これは……?」

「アルテナさんなんて他人みたいな呼び方するんじゃないよ。同じ酒を飲んだ仲じゃないか、船長って呼びな」


 言っているそばから、アルテナは骨付き肉を手に取りかじっている。


「せ、船長、これは……」

「堅苦しい話の時間は終わりだよ。ここからはまだ見ぬ星、地球の話だよ。ナナ、あたしは水平の銀河には行ったことがないんだ。そこにどんな星があるか、どんなやつがいるか、どんなお宝があるかを聞かせてくれ」

「そ、それはかまいませんが……」

「聞かせてくれるか! それは最高だ! あたしはね、まだ行ったことのない星の話を聞くのがなにより好きなんだよ。その話を聞くのに欠かせないのがうまい酒と食いものだ。さぁナナ、最高の時間にしよう。なに、心配いらいないよ。あたしもあんたも、この基地でできることなんてたいしたものはないんだ。さぁ飲もう、食おう、そして聞かせてくれ、地球の海賊がどんな宝を求めていたのかを!」


 言うアルテナの瞳は子どものように輝いている。

 これはすごいことになってしまった、奈菜はそう思いながら、今日はアルテナにとことん付き合おうと決めた。


迫りくる宇宙の終わり、ケレブルム。

この宇宙は、アルテナや預言者シア、マシ長の見たように終わってしまうのか?

戦いのときは近い。

翔平の目覚めは!?


桐生スケキヨ次回予告。

オッパリオンは万全の布陣で迎え撃つ。

全員が、その覚悟を決めた!

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