【第7章】宇宙艦隊オッパリオン456話「ひとり、搾乳中に思い、感じる」
宇宙艦隊オッパリオン本日も始まります!!
いつも応援頂いている読者の皆さんありがとうございます。
今回のオッパリオンはアーリア提督の回。
アーリアは搾乳の為にスタティアの搾乳室へと足を運ぶ。
新たなる大いなる力を持った敵ケレブルム。
彼らへ対抗する為に必要となるのは提督の母乳なのか?
宇宙を巡る母乳力の搾乳回にご期待ください。
【四五六 ひとり、搾乳中に思い、感じる】
ニュートレースジャンプ中のスタティア、その通信室にはフルニュートレース通信を行うアーリアがいた。
『送った画像じゃほぼ判別できんだろうけど、星雲のように見えるこれが全部敵だね』
通信の相手はアルテナであり、画像についてアーリアは聞いていた。アルテナが送ってきた画像は遠くの星雲を写したようなものであり、アーリアはこれが最初なにを意味しているのかわからなかった。
「大規模な侵攻があると予測はしていたけど、この規模となると予測を大幅に上回っているわね」
『マーラ全軍をあげてもここまでの規模にはならんね。これはまさに宇宙を喰らい尽くす勢いだ』
「怖いのかしら?」
『生まれてはじめて怖いというものを感じたよ。けど、ここで悪あがきをしなかったらするところがなくなる。だから最後まで付き合ってやるよ』
「それはとても心強いわ。オッパリオンへ戻ってくるんでしょう?」
『この数相手に単独じゃできることはないだろうからね。合流するよ。北天宙域に入る予定でいる。防衛線は北天ベースで予定通りにやるのか?』
「そのつもりよ。今、南天方面の艦隊も移動してもらっているわ。北天方面の前哨艦隊は基地ごと移動させて防衛線を厚くしているところ」
『ははっ、大仕事だな。マーラ侵攻の時でもそこまではしなかっただろうに』
「今回は事情が違いすぎる。なにもかも、すべてを出し尽くして使いきらないとどうにもならなそう」
『その見立ては合ってると思うよ。――さっきノルヅ機関から打診を受け取った。例の兵器も配備が間に合いそうだとさ』
「それはよかった。いや、よかったと言っていいのかしらね」
『使えるものはなんでも使うしかないよ。この際、生き延びてからじゃないと文句も言えないからね』
「そうね。――じゃあアルテナ、気をつけて戻って来て。たぶん、そちらと同じ頃合いにこちらもオッパリオンにつくわ。あなたもユースカティアも、イーヴァナも、防衛には欠かせないわ」
『自覚はあるよ。イーヴァナに敵のオッパリオン到達進路を予測させたんだ。アーリアの読み通りに北天方面からで間違いない』
「退けない戦いになるわね」
『そうなるとみんな案外踏ん張れるもんさ』
「あら? わりと楽天的じゃない?」
『悲観するのは主義じゃないんでね。なるようになるなんてまっぴらさ。あたしはやりたいようにやるだけだよ』
「そうね。そうしましょう。それじゃオッパリオンで」
『あぁ、無茶して急いで艦を壊すなよ?』
「そんなことしないわ」
『ははは、そりゃそうだな。じゃあな、先についたら一杯やってるよ』
そう言い、通信は切れた。
切迫した状況だというのに、アルテナはどこか上機嫌にも見えた。やはりこの大海賊は覚悟が決まっていると、アーリアはあらためて感じた。そして、この相手が敵ではないということを今日ほど心強く思えたこともなかった。
通信機の前から立ち上がると、アーリアは胸の張りを感じた。そう言えば、しばらく母乳を出していなかった。
「……少し搾ったほうがよさそうね」
アーリアは乳房を掴んでみて、そう感じた。
ミィアルーン博士からはなるべく母乳を貯めておくように言われていた。新型機に使われる母乳金属の予備を作る都合もある上に、新型機に搭載される母乳機関はアーリアの母乳力専用設計になっているため、アーリアの母乳はいくらあっても足りないくらいの需要が生じていた。
通信室を出て、搾乳室へと向かう。
搾乳室は空いていた。中に入り、手で搾ろうかとも思ったが、時間短縮のために搾乳機を使うことにした。
ニップルアーマーを外し、搾乳機を取り付ける。動作させると、搾乳機は機械的にアーリアの母乳を搾りはじめる。
「…………」
決戦を前にしているのに、気持ちは思いのほか落ち着いているものだとアーリアは思った。この時のために備えをしてきたので落ち着いていられるのかと自問する。
「それは半分ね」
思わず声に出る。半分は自信。もう半分は諦めのような境地だと思い、アーリアは自嘲するようなかすかな笑みがこぼれる。
「アルテナの言う通り、やりたいようにやる――自分が思う結果になるように、今できることをやるだけよ……」
そうつぶやく部屋は静かで、搾乳機の作動音だけが響いた。
その静けさの中、アーリアはふと搾乳機の機械的感触を冷ややかに感じた。搾乳機を使った搾乳はいつものことなのだが、この冷ややかさのない搾乳も自分は経験していた。
「…………」
翔平に搾乳してもらった時だった。
人の手のぬくもりを乳房で感じるのは、今思えば悪い感触ではなかった。なにかどこか、今までからっぽだった部分に温かい血が通い、生命が宿ったような感触を感じることができた。
また――してもらいたいのだろうか。
なにげなく耳に入ったことなのだが、アティルーンやフレイアは翔平に搾乳してもらうことがめずらしくないらしいとのこと。奈菜も含め、アティルーンとフレイアたちの翔平との関係も聞き及んでいる。
自分が翔平に搾乳を頼むことは相応しくないか? あるいは、自分もアティルーンやフレイアのように――。
皇妃の言葉を思い出す。アーリアも誰か頼れる人を作りなさい、と言っていた。
翔平が? いや、翔平は守るべき人だ。Zリーヌンスは頼りになるが、過信してはいけない。
搾乳機のタンクに母乳が貯まっていく。それを見ながら、アーリアはふうとため息をついた。
「我ながら堅すぎるのかしらね」
思えば自分の楽しみと言えば食後のテラーマと、お茶の時間のケーメルくらいだと思った。長期休暇中にフレイアたちは翔平を誘って海焼きをやったらしいが、自分は休暇をうまく使うこともできなかった。
もし、今度休暇を取るようなことがあったら翔平を誘ってみるか? それにはアティ皇女の許可もいるか? 自分がそこに踏み入っていいものか。そもそも提督業があるのに平穏などを求めてよいものか。
そんな考えが逡巡する。
機械的な搾乳は気持ちの高揚もなく、ただ母乳を出している、という感覚だった。これが翔平の手による搾乳だったら、もう少し気持ちの高揚もあるのかもしれない、そんな考えもよぎる。
「わたしも……案外弱いものね」
搾乳機の冷ややかさが、急に疎ましく思えてきた。
体温が感じられる搾乳が恋しい。
「…………」
アーリアは搾乳機を停止させる。
「こちらの方がまだマシ……かな」
母乳タンクを外し、胸の前に置くと、アーリアは自分の手で乳房を揉み、母乳を搾る。
「んっ……」
母乳が出てタンクに注がれていく。
自分の手で搾乳をするのは久しぶりのことで、なんだかいつもより弾力があるように感じられた。母乳が溜まり張っているせいかとも思った。翔平も自分を搾乳した時、このような弾力を感じたのだろうかとも考える。
乳房を揉む指にはなめらかな感触があり、やや不規則な生活になっていたものの、肌は荒れていないなとも思った。これなら、人に触られても恥じることはない、と。
少し強めに力を込める。搾乳機は直接乳首から吸い上げる感触はあるが、乳房そのものを揉むような刺激はない。アーリアは母乳をよく出すには乳房をよく揉むことが大事だと思っているので、そのようにする。
気のせいか、手で搾った方が母乳もよく出るような気がした。これが誰か他人なら、例えば翔平の手ならもっと出ただろうか、そんなことを考える。
今は快楽をほとんど感じないが、翔平にされた時はたしかに心地よさと快楽とがあったと思える。
自分は――あの感触を望んでいるのだろうか。
「たぶん……」
望んでいる。
すべてを終えたら、翔平にまた搾乳してもらおう。口実はどうする? 新しい技術開発や母乳力の利用、いくらでもあるかもしれない。でも正直に、気持ちがいいからと言えたのなら……いや、自分の立場でそれはできない。職権濫用になってしまう。
「ま、また……」
乳房を揉む手にさらに力が入る。いつもより気持ちも高揚してくる。はっきりとしていた意識がどこかふわふわと浮き足立つようにも感じてくる。悪い気ではない。冷たい搾乳機の感覚ではなく、自分の手ではあるが、有機的な感触は悪くない。
「久しぶりの搾乳だからか……気持ちが……」
気持ちが上ずる――そう思った瞬間、アーリアはハッと顔をあげた。
「なにっ!?」
不意に頭の中を触れられたような感覚がする。この感覚は覚えがある。エクスタシアだ。エクスタシアに至る時に感じる感覚に近い。だとすればこの感覚は――。
「Zリーヌンス!?」
思わず立ち上がりそうになるのをこらえる。
Zリーヌンスのようなものを感じる。同時に、この気配は翔平の気配でもあった。
「……目覚めが近いということね。脅威が迫る中、ショウヘイも戻りつつあるということ……」
母乳タンクがいっぱいになり、搾乳機が自動停止する。
戦いの時は避けられない。眠っている翔平もそれを感じている。アーリアはそう確信した。自分ですらZリーヌンスを感じられたのだから、アティ皇女たちはもっとはっきりと感じられているだろうと思った。
「次の戦い……総力戦になる……負けられない」
搾乳機を外し、ニップルアーマーを取り付けながらアーリアは覚悟を決めた。
なんとしても勝利する。だが、ひとつ懸念もあった。それは月に行く時間だった。襲来の時間を考えると、その時間はない。
月にあるという武器が切り札になると思っていたが、それは間に合わなそうだ。だが、それでも状況を打開せねばならない。
「ありったけを使わせてもらう」
遠慮はなしだ――アーリアはそう思い、搾乳室を出た。
一度北天基地に連絡を入れ、状況を確認する必要がある、そう思った。
遂にケレブルムは静かに侵攻を開始していた。
それは星雲のように巨大で、大いなる影となって宇宙を喰らう。
戦いのときは静かに、そして確実に迫っている。
この宇宙を守る為、翔平はいつ目覚めるのか!?
桐生スケキヨ次回予告。
コード081が発令された北天基地はどうなっているのか!?
パイオーレ提督が提案する防衛策とはどんなものなのか!?




