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宇宙艦隊オッパリオン  作者: 桐生スケキヨとYOM
【第2部】【第7章】宇宙艦隊オッパリオン「王の軌跡編」
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【第7章】宇宙艦隊オッパリオン453話「講和会談の裏表」

宇宙艦隊オッパリオン第453話の更新です。

いつも応援してくれている読者の皆さんありがとうございます。


桐生スケキヨの宇宙艦隊オッパリオン最新話がやってきました!!

本日のお話は、ラメルのテロリストであったインディアガーナ人と宇宙傭兵のゴルベット星人を倒したオッパリオンとマーラのお話。

遂に始まる講和会談の調印式。

無事に会談は終了し、二つの星は新たなる未来へと向かえるのか!?

【四五三 講和会談の裏表】


 アティルーンを乗せたミルアティルスとヴァツルドを乗せたトリアルダは、ホログラム投影されたボタンのステージに迎えられるように入港した。

 ボタンの曲が終わるころ、ふたりは護衛の親衛隊とメイドたちに先導され、空港に降り立つ。

 そこには、ふたりを迎えるマシ長がいた。


「ようこそ、アティルーン皇女殿下、ヴァツルド殿下。いや、ヴァツルド殿下は代理皇帝陛下とお呼びするべきか」

「歓迎に感謝しますマシ長。私は皇太子待遇でかまいません。代理皇帝とは国内向けの地位にすぎません」

「ふふふ、そうかそうか」


 アティルーンの後ろには親衛隊のレーナと、アーリアがいる。マシ長はアーリアの存在を確認するように視線を送ると、アーリアは頷いた。


「長旅のところすまないが、さっそく調印式に入ろう。皆がこの瞬間を待っているよ」


 空港の周囲にはラメル市民が集まり、この大イベントを近くに感じようとしていた。ラメルは熱狂の中にあった。

 マシ長に誘導され、それぞれが送迎の車に乗り込み、中央タワーへと向かう。マシ長の車には、サッとアーリアが同乗した。

 車中、マシ長が笑う。


「提督、さすがに少し疲れているように見えるぞ?」

「そうですか? マシ長の目はごまかせませんね。でも、大丈夫です」

「講和の内容が揉めたのか?」

「母乳解禁の反対派が根強くて、皇女殿下の説得にも応じない強硬派もいました。ですが、ほとんどの賛同を得られています」

「ふむ……。せっかくの講和でも国が割れたら残念だからの」

「皇女殿下も心配されていましたが、反対派の皆も様々な条件を提案してくれて、平和利用に限るための案を出してくれています。大丈夫でしょう」

「そうだな。しっかりと管理、監視していくしかあるまい」

「わたしもそう思います」


 マシ長の見るアーリアに感じられた疲弊感の根幹は、そこではないとマシ長は見抜いていた。アーリアはこれから訪れる危機を知っている、と。それに備えて動いているからこそ、アーリアともあろうものが疲弊しているのだと。

 マシ長はその姿を知りたかった。同時に、アーリアもそれを伝えたかった。だが、今は報道関係者も周囲に多く、それを言葉で発することは軽率だった。だから、アーリアは自分の姿をマシ長に見せることで備えの進捗を伝えようと、こうしてさりげなくマシ長の車に同乗したのだった。

 中央タワーにつくと調印式の会場へと向かう。

 アティルーンの同行者の中にはリルトとラムテグの姿もあった。対し、ヴァツルドの同行者の中にはパルムクがいる。

 講和会談と言っても、実務的な話し合いはすでに終わっており、式ではただ内容を発表して書面にサインするだけとなっていた。

 式場には多くの報道関係者が集まっており、熱気があった。アティルーンとヴァツルド、マシ長が壇上に上がる。


「両者、講和内容を確認し、ここに署名を」


 マシ長がそう言うと、アティルーンとヴァツルドは講和内容の書かれた書面を確認した。そして、ふたりの署名が必要な調印書を、マシ長がヴァツルドに手渡す。


「このような日が来るとはな。感慨深いものだよ」

「私もです」


 マシ長に微笑みを返し書類を受け取ったヴァツルドは、しっかりと丁寧にサインをした。その調印書は再びマシ長に手渡され、今度はアティルーンへと手渡される。


「オッパリオンの次代を担う皇女殿下の手で調印されることを、嬉しく思うよ」

「ありがとうございます。わたしも光栄です」


 アティルーンもサインをすると、その書類はマシ長が受け取る。そして報道陣に向けられる。


「ここにオッパリオン、マーラ帝国双方合意の停戦協定がなされた。同時に、二カ国間は国交も成立するものとする。ラメル代表、このマシ=ユシが第三者として、それらを認めるものとする」


 報道陣からの拍手が起こる。

 すると、マシ長は緩んだ顔を見せた。


「さて、すまないがラメルの皆がこの時を楽しみにしていたのだ。質疑応答だ。アティルーン皇女殿下、ヴァツルド殿下、しばしお付き合いいただきたい」

「時間の許す限りお答えします」

「もちろんです、わたしにお答えできることであれば、なんでも」


 ラメルに集まった報道陣はラメル在住のものたちだけでなく、オッパリオン人やマーラ人もいる。さらにはラメル以外の星系の記者たちもが集まっていた。

 報道陣の前にはチェルピックの姿があった。


「質問者は私が指名させてもらいますことをご了承ください。なお、アティルーン皇女殿下、ヴァツルド皇太子殿下のご配慮により、質問者は挨拶を省略してよいとのことです。記者たちに代わり、両殿下に改めて感謝いたします」


 チェルピックがそう言うと、複数人の記者の手があがる。チェルピックはひとりを指さす。


「ラメル交運報道です。アティルーン皇女殿下、ヴァツルド皇太子殿下にお聞きします。講和の内容にはオッパリオンより母乳の輸出解禁が盛り込まれていると伺いました。主にマーラ星に限っての輸出となるとのことですが、この運搬に関してはどのような経路、設備をご利用になる予定でしょうか?」


 一瞬、会場が静まり返る。ラメルの人々が、もっとも聞きたい質問だった。アティルーンは穏やかな表情をしてマイクを手に取る。そして一度ヴァツルドを見ると、ヴァツルドも穏やかな表情で頷いた。アティルーンが応じる。


「ご質問ありがとうございます。オッパリオンより輸出される母乳は、当面はここ、ラメルを経由する中立ルートにてマーラ帝国へ運ばれるものとなります。またその運搬に携わっていただける業者はラメルの企業も頼らせていただくことになっております」


 アティルーンのその発言に、報道陣が歓声を上げる。これは、ラメルの業者に限らず、大きな利益をもたらす事業になるため、全ラメル人が待ち望んでいた回答だった。

 歓声の中、ヴァツルドもマイクを持った。


「私から補足させてもらうと、母乳の運搬は厳重な管理下で行われなければならないと思っている。その関係もあり、母乳運搬の護衛にはオッパリオン軍、マーラ帝国軍がそれぞれに専用チームを発足して当たることを予定していることも知っておいてもらいたい」


 記者は大きく頷く。


「アティルーン皇女殿下、ヴァツルド皇太子殿下、ご回答感謝いたします。母乳運搬の業務はラメルに活気をもたらしていただけることとなります。また、両警護隊もラメルに駐留することもありましょうから、よい産業の刺激になると思います。両国の平和が、交易の星ラメルの発展と、しいては全宇宙のさらなら発展に寄与されることは大きいと思います。ありがとうございます」


 記者が席に腰を下ろすと、また複数人の記者が手をあげた。


「次の方はそちらの」


 チェルピックが指名したのは辺境星ボザリブの記者だった。ボザリブは鉱山惑星だが、マーラ資本が入っている半植民的な惑星であり、近年はマーラほどではないが環境汚染や、それに伴う病気も出始めている星だった。


「ボザリブ星の国営通信社です。母乳輸出が解禁されたことですが、母乳由来の技術、具体的には宇宙の距離を変えたと言われるニュートレース技術は広く解禁されないのでしょうか?」


 アティルーンはボザリブ星の状況を知っていた。その上で、質問に応じる。


「ご質問ありがとうございます。母乳の運搬は効率化の観点から、ニュートレース技術を用いた艦船をラメルでも建造していただく予定であります。――ですが、これはまだ協議をしている最中の事項なのですが、わたしはニュートレース技術は広く解禁されるべき、という考え方を支持しています。これは、ニュートレースジャンプによる運送が行われれば、資源の他、医薬品の運搬なども迅速に行えるようになります。医療が十分ではない場所も多くあると存じています。そういった方々にも、母乳技術ができることは多くあり、ニュートレースジャンプを用いた迅速な運搬の他、母乳由来の医療品などの解禁も急ぐ必要があるとわたしは考えています。これは早急に実現していくべきであると」


 アティルーンの回答に、ボザリブ星人の記者は震えていた。自分の星の問題を解決できる具体策を、アティルーンが示してくれたからだった。


「あ、ありがとうございます。ボザリブ星全員がその日を待ち望んでおります。どうか、お願いいたします。ありがとうございます」


 ボザリブ星人が着席すると、式場には拍手が起こった。ここにいる多くの人々が、ボザリブ星の状況を知っており、また、ボザリブ星以外にも、このような問題を抱えるところが少なくないことを知っていたからだった。

 全宇宙に向けられたこの報道により、アティルーンはその慈悲深さを広く認知されることになった。

 そして質疑は進み、時間いっぱいとなったので終了となる。マシ長がマイクをとる。


「では質疑はここまでじゃ。後に詳しい発表は公式に出るのでな。この後は晩餐になるが、その前に少し休憩を取らせてもらうよ。ふたりとも長旅で疲れているんでな。ではアティルーン皇女、ヴァツルド殿下、お下がりを」

「失礼する」

「ありがとうございました」


 拍手に見送られ、ふたりが下がると、護衛とマシ長も下がる。

 アティルーン、ヴァツルド、マシ長が戻った控え室には、アーリアとレーナ、アルセメイド長、そして、アルガノスの姿があった。


「ふぅ、公式の場は疲れるの。アティルーン、ヴァツルド殿下、見事だったぞ」

「恐れいる」

「ふふふ」

「――だがな、ここからが本題だ」


 報道陣のいない密室で、全員が円卓につく。

 調印の場にラメルが選ばれたのは航路と中立性を考えてのことでもあったが、それとは違う理由もあった。


「どうしても、直接伝えておきたいことがあって、皆に集まってもらった」


 マシ長が神妙な口調でそう言うと、全員が頷いた。


「先だって伝えておいたが……宇宙の危機が迫っている。それも目前に。具体的に言えば、ケレブルムの兵が動き出している。連中は大きく、多く、果てしなく強い存在……母乳力を持つオッパリオンと、科学力を持つマーラ帝国が組まぬ限り、我々は蹂躙されるだろう」


 これこそが、マシ長が直接伝えたいことだった。

 決して明るくない予言であるが、差し迫った危機はもはや予言という枠を越え、確定している事実に近しいことだった。

 オッパリオン側も、マーラ側も、そう認識している。

 応じたのはアーリアだった。


「オッパリオン軍とマーラ帝国軍は水面下で連携し、この調印に先立って動いています。両軍の再編も、共闘戦を念頭においたものになっています」

「そうだ。だがな――」


 アーリアの言葉に補足を加えるのはアルガノスだった。


「新造艦に新型機動兵器と、生産と配備は順調だ。だがな、それを扱うものの練度にはまだ不満がある。現状、兵器の運用や連携などが完全にできているかと言われると頷くことはできない……とまぁ、それを言ったらこれが満足することなんてないんだがな。どうあっても、限られた時間の中でできる最善を尽くすしかないんだがな」


 アルガノスの表情には諦めとも、ある種の覚悟ともとれる表情があった。それを見たヴァツルドが言う。


「キャプテンの言う通り、できる限りの中で最善を尽くすしかない。私から懸念を言わせてもらえば、Zリーヌンスの不在が気がかりになる。ケレブルムという難敵を前に、Zリーヌンスなしで立ち向かうにはあまりにも無謀すぎると言わざるを得ないが……現状でショウヘイの容態はどうなのだ? アルセを経由してリマから容態は順調だと聞いているが、目覚める目途はあるのかどうか」


 ヴァツルドの懸念はもっともなことだった。


「わしの予言でも、Zリーヌンスの目覚めは見えておらん。あの力は予測するにはあまりにも強すぎる。未来が大きく変わる力だからかのう」


 マシ長でも、翔平の目覚めは予知できるものではなかった。

 不意に不安な空気が場に広がる。しかし、アティルーンだけは違った。


「ショウヘイは……必ず目を覚まします。必要な時に、必ず」


 アティルーンの言葉は力強く、自信に満ちていた。


「説明はできませんが、わたしはZリーヌンスを感じられています。それは途切れることなく、日を追うごとに鮮明になっています。マーラ星を再生させた時よりも強く、Zリーヌンスを身近に感じられるのです。おそらくは、眠っているショウヘイも迫る脅威を感じているのだと思います」


 アティルーンの言葉は単なる気休めではないという気迫が込められていた。

 Zリーヌンスを感じ取っているということは間違いないと、この場の誰もが思い、アティルーンの言葉は信じるに値するものとなった。

 マシ長がアーリアに目を向ける。


「アーリア提督、ここから戻ったら急ぎ水平の銀河を目指してもらいたい」

「それは皇女殿下からもうかがいました。ショウヘイも眠りにつく前に伝えていたそうなのですが……水平の銀河になにがあるのでしょうか?」

「わしにもはっきりとは見えんだが……水平の銀河にある地球という星、その衛星の月には、古代Zリーヌンス王がゼータリオンで使った槍と、王の騎士たちが使う剣があるということだ」

「それは……ケレブルムと戦うための武器があるということか?」


 アルガノスの言葉にマシ長は頷く。


「それなら、早めに取りに行った方がいいですね。しかし、ショウヘイが不在でもその武器は持ち帰れるのかどうか、懸念はありますね」

「そうだのう……できることなら、ショウヘイには早いところ目覚めてもらいたいものだ」


 マシ長がため息まじりにそう漏らした時、部屋の呼び出し音が鳴る。アルセが通信機を取る。


「……はい、ここに。どうぞ」


 同時にレーナがぴくりと顔をあげた。生体通信が来ているのだとマシ長は思った。そして、このアルセとレーナが受けた通信の内容に、マシ長は予想がついた。


「きおったか……」


 マシ長は小さくつぶやく。

 アルセがヴァツルドに近づき、レーナがアティルーンに近づく。


「アルセメイド長、おそらく同じ連絡です。どうぞ」


 レーナがそういうと、アルセは頷いた。


「どうしたアルセ?」

「マーラ本国よりトリアルダにフルニュートレース通信で短文が届きました。コード〇八一です」

「なに?」


 ヴァツルドは顔を強ばらせ、レーナを見る。レーナは頷いた。


「こちらも、オッパリオン本星より同じくコード〇八一が発令されたと。暗黒宙域より離脱中のアルテナ海賊団よりの発令となっています」


 アティルーンが思わず立ち上がる。


「すぐに戻らねば――」

「お待ちなさい」


 マシ長の手がアティルーンを制する。


「しかしマシ長、これは宇宙の危機――」

「講話会談の主役が晩餐を辞して帰国したとなれば、皆不安に思う。予定通り晩餐をこなしてから、帰路につくのだ」

「アティルーン皇女、私もマシ長の言う通りだと思う。お互いの国民に不安を与えてはいけない。我々が落ち着いたところを見せねば、不安と混乱を生んでしまうことになる」

「そう……ですね。そうです、わかりました」


 アティルーンは落ち着き、納得した様子だった。

 するとアルガノスが立ち上がり、アーリア提督の肩を叩く。


「キャプテン?」

「アーリア提督も人気者だ。晩餐には出た方がいい。双方への初動指示は俺がやっておく。ミルアティルスにはその設備もあるしな。任せておけ」

「……わかりました。頼みます」

「やっかいごとにも慣れたもんだ」


 アルガノスはにやりと笑み、先に部屋を出て行った。


「協力の時は、思ったよりも早かったな」


 マシ長はそう言うと、目を閉じた。

 なにか未来が見えるか――そう思ったが、まぶたの裏に見えたのは漆黒ばかりだった。


この宇宙の存亡をかけて、戦いは始まる!?

地球、そして月に眠るとされる謎。

宇宙を守る為に、彼女達は再び地球を目指すのか?


桐生スケキヨ次回予告。

迫る危機!

しかし晩餐会も出なければならないこのもどかしさ!

しかし、そこではひとつの小さな、でも重要な出会いがあった!!!!

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