【第7章】宇宙艦隊オッパリオン443話「現場の懸念」
宇宙艦隊オッパリオン443話の始まりです!!
いつも応援ありがとうございます。
今回のオッパリオンは講和会談を目前に控えたラメルへ向かう皇女親衛隊のお話。
ラメルで開かれているボタンのライブ。
そんな沸き立つラメルの裏側では、テロリストによるライブ会場へのテロ行為があった!?
その事件を解決する為に、レーナ隊長率いるミルアティルス皇女親衛隊が動き出す!!
【四四三 現場の懸念】
「補助ブースターは大気圏突入前に破棄する。ラメル側にこのことは通達してあるから大丈夫だ」
レーナは親衛隊機動兵器センシィアムの中から、外で機体に補助ブースターを取り付ける作業員にそう伝えた。
『二回しかテストしていないものですよ。加速性だって限界値を超える可能性があるんです』
「わかっているよ。それを承知で使うんだ。この機体も、我々も、このくらいに耐えられないわけではないさ」
作業員はこの補助ブースターを使うことを渋っていた。理由はテスト不足であり、テスト中に何度か想定外の加速を出していたため、まだ実用段階に行くには尚早と判断していたからだった。しかしレーナはこれを使い、素早くラメル降下ポイントまで移動することを提案していた。
『……わかりました。でもリミッターはつけさせてもらいますよ。機体がバラバラになったらおしまいですからね』
「そこの見極めは任せる。センシィアムも柔な機体じゃないんだ。少しくらいは無理させるくらいがいい」
『レーナ隊長は時々思い切られますよね。わかりました。機体強度限界までは出せるようにしておきます』
「助かる」
親衛隊全員のセンシィアムの腰部後ろには一基の大型ブースターが接続されている。全機、この固定と出力の安全装置調整に追われていた。
「親衛隊各員へ。確認する。ラメル降下地点及び目的建造物の地図は把握できているか?」
『フィルシュです。以下隊員把握完了できています』
フィルシュが代表して返事をする。任務が通達された時から、全員は素早く目的建造物の構造を把握していた。
「目的建造物ではライブイベントが行われているらしい。まだはじまったばかりだが、中止はしないということだ。テロリストの脅しには屈しないという判断による。任務は現地での爆発物の発見が第一目的、第二目的はテロリストの排除だ」
『爆発物か……』
クライヴの声が通信に入る。
「クライヴ、なにかあるのか? そういえば爆発物には詳しかったな。なにか予想があるのか?」
『予想、というほどではありませんが。建物の構造を見るに、かなり頑強な建物なので、これを完全に崩壊させるにはかなりの威力のある爆弾と、相応に数も必要になるはずです。建物の破壊を考えた場合の設置予想箇所はこのあたりになるかと』
そう言うと、全員にデータが送信される。それは建造物であるスタジアムの見取り図に爆弾設置予想箇所を書き込んだものだった。
「かなり広範囲だな」
レーナが思わず言ったように、予想箇所は広範囲なものだった。
『はい。これは、この建物が頑丈に作られているため、致命的なダメージを与えるのはこのくらいの場所を同時に、あるいは連鎖的に破壊しないといけないからです』
『へぇ、しっかり建てられてるのね。そう言えば、できてまだ新しいって聞いたから、耐久性も最新の設計なのかも』
フレデリカが言うように、この建物、ラメル中央アリーナはまだできて間もない、最新の建造物であり、強い地盤に頑強な建築をしたことで、高い収容人数を誇る建物になっていた。ラメルとしては宇宙中の興行事業の中心となるべく作ったとのことだった。
『建物の破壊ではなく、中央のホール区画の市民に被害を与えるなら、予想される設置箇所はここになります』
クライヴから再度データが送られてくる。それはまた違った予想パターンであり、こちらは中央の十五階層抜きホール部の周囲に分布されていた。こちらも広範囲であるが、予想範囲は少なく、場所は絞られている。
『さすがクライヴ。これだけ絞れていれば発見は早いんじゃないの?』
『それがそうでもないんだアナ。爆弾の威力や大きさでも設置場所は変わってくる。会場のセキュリティーチェックがあるからそんなに大きなものは持ち込めないとして、小型のものなら数が分散する。どう持ち込んだかにもよるが、警備側に内通者がいたら、数は持ち込めるだろうからな』
『な、なるほど……どういう爆弾なんだろう』
『わたしの予想だと、ラメルで手に入りやすい爆弾ならシ・ルー爆弾だな。これは機械的な起爆をする爆弾で、ナノマシン制御じゃない。こういう人が大勢集まる場所で起爆にナノマシンを使うと、もしなにかあって混線した場合誤作動するからナノマシン制御の起爆は避けるんだ。その代わり無線制御か、有線で起爆を行う。有線は使用者も巻き込まれるから、おそらく中継機を噛ませた無線制御だろうな。そうなると電波を感知しての探索が可能になる』
「見事な見立てだなクライヴ」
『いえ』
『これなら、ラメルの警備と連携を取ればすぐに見つかりそうですね』
リディルがそう言ったが、レーナはそれには素直に頷けなかった。
「そうだ……と言いたいところだが……」
『なにか懸念があるのですか?』
フィルシュがすかさず聞いてくる。
「アリーナにも専属の警備隊がいる。そこに今回派遣されてくるであろう外の警備もいる。そこにさらに我々も加わる。現場には現場の派閥意識があるからな。外部の人間が入るとなにかと揉めるんだよ、こういう時は」
『そ、そうなんですか?』
フィルシュは意外そうな反応をした。
「考えてみろフィルシュ。我々が皇女殿下の警備をするのに、外部からのものたちが来て仕切り出したらどう思う?」
『それは……正直言ってしまうと煩わしさがありますね』
「そうだろう? まぁ皇女の警備に関しては我々親衛隊が最高指揮権を持っているのでその心配はないのだが、今回のような現場では内輪の衝突が起きやすいんだ。覚えておくといい」
全員がわかりましたと返事をする中、レーナはこれもいい経験になるかとも思っていた。幸いにして、爆発物に詳しいクライヴの予想が大方的中すると考えられた。
だが、楽観視はできない。
「まぁ、ラメルの警備隊には一応知り合いもいる。多少は……なんとかなるかもしれない」
『さすが隊長、交友が広いですね』
フレデリカの声には安堵が込められていた。
「あまり期待しないでおいてくれ。その、少々癖のある人物でな。頭も固いやつだ」
『大丈夫です、みんな協力してできますよ。あ、楽観視しているわけではないですよ?』
リディルはそう言ったが、レーナにはどうも楽観視しているように思えた。
すると――。
『艦橋より機動兵器各機、ミルアティルスは安定軌道に移行。ハッチ開放します』
「親衛隊了解した。各員発進に備えろ」
『了解』
カタパルトが開放されると、眼下にはまだ少し遠いラメルが見えていた。
『全機補助ブースター固定完了です』
「よくやってくれた」
『ご無事を祈ります』
作業員にもお礼を告げると、レーナは機体をカタパルトへと移動させる。
すると、再度艦橋からの通信が入った。
『アティルーンです。親衛隊の皆さん、急な任務ですみません』
「いえ、そのようなことはありません。これも務めです」
『どうか皆さんのご無事と、ラメル市民の皆さんのご無事を最優先にお願いします』
「わかりました。みんな、アティルーン皇女殿下の言葉を忘れるな」
『了解です!』
やる気に満ちた全員の声が揃う。
『それでは、どうか任務が達成されますことを――』
アティルーンはそう言うと通信を終える。
「親衛隊発進する。補助ブースターはカタパルト射出後に点火だ。かなりの加速になるから気を引き締めておくように。機体の姿勢制御にも慎重にな。レーナに、先に出るぞ」
隊員に注意を促し、レーナのセンシィアムがカタパルトから射出される。ミルアティルス本体から一瞬で遠ざかり、それと同時に補助ブースターを点火する。機体には猛烈な負荷がかかるが、加速は機体が耐えられる範囲にとどめられていた。だが、それでも体には負担を感じる程度にはすさまじいものだった。
レーナはふと、頭の片隅にラメルで警備隊を仕切っているであろう、旧知の人物を思い浮かべた。
「あいつも今頃は主任らしいが……お互いに出世したものだな」
ひとりそうつぶやく頃、親衛隊の六機は編隊を組み、補助ブースターを使った加速を行っていた。ラメルの大気圏までは、数十分とかからないはずだ。
親衛隊の実力は如何に!?
そして、ラメルでの講和会談は予定通り開かれるのか!?
オッパリオンとマーラ、そしてラメルが宇宙の存亡の為に未来を目指す!!
戦いの舞台は、ラメルのライブ会場へ!!
桐生スケキヨ次回予告。
ラメルでは現地の警備隊も動き出していた。
現場を任された警備主任は、レーナ隊長のことを知っているようなのだが……




