【第7章】宇宙艦隊オッパリオン441話「親衛隊のあこがれ」
今日のオッパリオンはコメディ回。
桐生スケキヨ氏による他人数プレイをご覧ください。
いつも応援ありがとうございます。
本日もやってきましたオッパリオン。
親衛隊の面々とレーナ隊長、そしてアティ皇女がやらかす回です。
最近のオッパリオンは真面目な話も多かったので、今話は重要な癒しになりそうな予感!?
【四四一 親衛隊のあこがれ】
ラメル向かうミルアティルスは最初のニュートレースジャンプに入っていた。アティルーンはジャンプ中であるし、艦内ではそう厳重な警護は必要ないとして親衛隊にも少し休んでおくように達しを出していた。
ひとしずくの一件もあったので慎重になっていたが、アティルーンに推されてしばしの休息を取ることになっていた。とは言え、親衛隊控え室はアティルーンのいる部屋のとなりであり、アティルーンが移動する時は親衛隊にひと声かけることになっていた。
その親衛隊控え室ではリディルがひとり、卓の上に置かれた資材コンテナの前でうなり声をあげていた。
「ま、まさか本当に届いてしまうなんて……」
大きめのコンテナの前でリディルは文字通りに頭を抱える。
「いや、注文してしまったのはわたしなのだけど……どうにかしていたとしか……。これはこのまましまっておくのがいいと思うけど……せっかくだから一度くらいは……い、いや、それはなにか一線を越えてしまうような……あぁ……どうしたら!」
抱えた頭を振り、リディルはつぶやくのだか、それは今日、このコンテナが運ばれてから数回繰り返された文言だった。
何度目かわからない繰り返しをした時、リディルの背後からひょっこりと顔を覗かせるものがいた。
「どうしたのリディル?」
「ひゃいっ!?」
リディルは驚きの声をあげてばっと振り返り、すぐさまコンテナを隠そうとするも、コンテナはリディルの体で隠れる大きさではなかった。
「なにぶつぶつ言ってるのよ?」
「フレデリカ!? いつからそこに!?」
「今来たところ。一応ノックはする礼儀だからしたけど、反応ないから入ったらあなたがなにかうめいているんだもん」
「そ、それは……ま、まぁそうだけど……」
リディルは動揺していたが、フレデリカはコンテナについては言及しなかった。親衛隊にはいろいろな試験装備などが届くため、資材コンテナがここにあるのはめずらしいことではなかった。
だが――。
「あ、このコンテナはなにかな?」
「フィルシュ!?」
フレデリカに次いで部屋に入ってきたフィルシュはリディルを見るなりそう切り出した。
「なんで隠そうとしてるのよリディル」
「そ、それは……なんでもない。たいした資材じゃないわ、これは。片付けましょう」
「……あやしい」
すぐに片付けようとしたリディルに、フィルシュはジト目を向ける。思わずリディルの手が止まる。
「新しい装備?」
フレデリカがコンテナのラベルを確認しようとリディルを避けて顔を近づける。
「ちょっとフレデリカ!?」
「えーっと、え、これリディルの個人発注になってるじゃない。ははーん、さては抜け駆けして新装備を注文したのね」
「そ、それは……」
「……あやしいわねリディル。我ら親衛隊に隠し事は厳禁よ。白状なさい」
「フィルシュ、これはその……」
じっと見つめるフィルシュに対して、リディルの目が泳ぐ。
「なんなのよリディル? 別にやばいものってわけじゃないでしょ?」
「そ、そうだけど……そうじゃなくて……」
「言いなさい」
フィルシュに詰められ、リディルはため息をついて肩を落とした。
「わかった。白状する。って、言うより、見てもらった方が早いわ。けどお願い、レーナ隊長にだけは内緒にして欲しい」
そう言うと、リディルはコンテナを開ける。そして中から取りだしたのは、一着の服だった。それを広げ、ふたりに見せる。
「こ、これは!?」
「あなた、なんてものを!?」
その服に、フレデリカとフィルシュは大げさとも言える驚き方をした。
リディルが広げて見せたそれは、リマが着ているものとよく似た、ほぼ同じのメイド服だった。
「こ、これ、リディルが頼んだの!?」
フレデリカは震える手でメイド服を指さす。
「そ、そうよ。資材部にデータを渡して聞いてみたら……そうしたら簡単にできるって言われたから……。最初は冗談のつもりだったんだけど、作れるって言われたから、つい……。でも本当に作ってもらえるなんて思っていなくて――これはこのまましまっておくわ。今見たことは忘れて」
早口でまくし立てるリディルに、フレデリカとフィルシュは頬を膨らませる。
「リディル、あなたこんなことをひとりで黙ってやっていたわけ?」
フィルシュは詰めるようにそう言った。リディルは思わずビクッとしてしまった。
「ご、ごめんなさい。親衛隊にあるまじきことよね。しまうなんてしない、すぐに処分する」
するとフレデリカとフィルシュは申し合わせていたように両手を前に突き出す。
「ちょっと待ったリディル!」
「待ちなさいリディル」
「はい?」
「なんでこんな話を抜け駆けするわけよ?」
「そうよ、ひとりでなんて」
「え?」
「リマさんにあこがれているのはリディルだけじゃないでしょ?」
「そうよ。わたしだって、一度くらいあの服を着てみたいって思って……」
「え? え?」
「リディルだけずるい!」
「頼むならわたしも頼めばよかった!」
予想外の発言に、リディルはきょとんとしてしまった。
事態を理解するまで数秒要したが、そういうことなのかと理解したリディルは恥ずかしそうに手に持ったメイド服で顔を隠して言う。
「じ、実は……みんなで着られたらいいなと思って……みんなの分も頼んであって……全員分あるの……」
「えぇっ!?」
フレデリカとフィルシュが同時に驚く。そしてダダっとコンテナに近づく。
「ちょ――」
「リディル! 頭につけていたフリフリもあるじゃない!」
「だから全部だって」
「あなたリマさんを盗撮したのね」
「うぅ……射撃姿勢が見たいという理由で撮影したデータがあって……それを転用したのよ……盗撮とは言わないで」
「そ、そうね。それはそうしておきましょう。それで、わたしたちの分はどれ?」
「待って、今出すから」
リディルはコンテナの中から、フレデリカとフィルシュの分を取りだし、一式をふたりに手渡す。ふたりは感極まった表情でそれを受け取った。そして、フィルシュは一度首を振り、真剣な顔で言う。
「――で、着てみるでしょう?」
「えっ!?」
今度はリディルとフレデリカの声が重なった。
「なに驚いてるのよ。リディルだって、まさか眺めて終わらせるために注文したんじゃないでしょう?」
「そ、そうだけど……」
「き、着てみようよ。せっかくだし。サイズも合ってるか確認しないといけないし」
フレデリカの提案はいかにもというようないいわけだった。しかし、この三人にはもはやそれだけで十分だった。
「そ、そうね、確認しないといけないものね」
「着てみましょう。異国の服を着るなんて……わたしたち、前衛的なことをしているわ」
そう言いながら、各人は服を広げる。
「この服の上から着られそうね」
「こんなに多くの布を着るなんてはじめて」
「意外と簡単ね……」
三人はメイド服に身を包む。頭のブリムもつけると、そこにはマーラ様式のメイド姿の三人が誕生していた。
控え室には身なりを確認する大鏡があり、三人は無言でその前に立った。そして、誰に言われるでもなく、三人ともスカートの端を持って広げる。
「わ……あ……」
「ひゃ、あ……」
「こ、これは……」
鏡に映る三人は小刻みに震えながら顔を紅潮させていた。
声にならない声が、感動として発音されるが、まさに言葉にならないという感激だった。
「こんな気分になるだなんて……!」
震えながら言うリディルは鏡の中の自分を食い入るように眺めている。
「胸を覆い隠すなんて不自然に思えるし少し窮屈だけど……それでもこれは……」
フレデリカはスカートを持ったままゆっくりと一回転する。
「これは言葉にならない感動が……!」
フィルシュも含め、三人はかつて経験したことのない未曾有の興奮を覚えていた。
そんな中、不意に部屋がノックされる。
『アナスタシアだよー』
『クライヴだ。入るぞ』
「ちょ――」
突然の訪問に三人は揃って制止の声をあげるも、扉は容赦なく開き、なにも知らないアナスタシアとクライヴが現れる。
「……え?」
アナスタシアとクライヴは一瞬で真顔になり、その場に立ち尽くした。
「あ、え、えーっと……」
リディルがなにかを言おうとした時、アナスタシアは早かった。
「クライヴ、早く入って」
「わ、わかった」
アナスタシアはまだ通路にいたクライヴを急かして部屋に入れ、自動の扉を閉めた。
「これはその……」
リディルが説明に窮していると、アナスタシアは輝く目を見開いてリディルに詰め寄る。
「なにこれリディル!? フレデリカもフィルシュも! すごい! なんであなたたちだけ!? これ支給品!?」
アナスタシアは興奮した様子でぴょんぴょん跳ねながらリディルの衣装のスカートを触る。そのアナスタシアの質問に応えたのはフィルシュだった。
「支給品なわけないでしょう。リディルが個人的に発注して資材部に作ってもらったそうよ」
「リディル、そんなことをしたのか……」
クライヴはどこか呆れた様子だったが、アナスタシアはぴょんぴょんと興奮したままだった。
「すごいすごい! いいないいな! なんで三人だけなの!? わたしのは!? ないの!?」
「あ、あるわ。当然、クライヴの分も……」
「やった!」
「わ、わたしのもあるのか!?」
リディルはコンテナからそれぞれの衣装を取り出し、手渡す。
「すごい……まるで本物じゃない……!」
「資材部は優秀だな。異国の衣服まで作れるのか」
「クライヴ! わたしたちも着てみようよ!」
言い出したアナスタシアはすでに着はじめている。クライヴはすこしためらいながらも着はじめる。
「アナスタシアたちはともかく、わたしはこういう華やかなものはあまり似合うとは思えないのだが……」
クライヴは遠慮しがちだったが、自分の体に合わせて作られたメイド服をきっちりと整えて着る。
そして、新たにふたりのメイド服姿が誕生する。ふたりも大鏡の前に立ち、その全貌を確認すると、やはり感激に震える。
「すごい……すごい!」
興奮するアナスタシアはもはや言葉の語彙が消滅していた。
クライヴもスカートを広げながら感激する。
「なんという華やかさだ……それに、なんだか強くなったような気がしてくる……!」
「ちょっとリディルにフレデリカ、フィルシュ! 五人並んでみようよ!」
「アナスタシアはしゃぎすぎよ」
「堅いこと言わないでよフィルシュ。こんなに気持ちが昂ぶることなんてそうそうあるものじゃないって! ほら早くっ! やっぱりリマさんと言えばこのポーズ!」
アナスタシアはスカートの端を持ち、目を閉じて少し腰を落とすポーズをする。他の四人もそれに倣ってポーズを取る。
リディルが片目を開き、鏡を見ると、そこには五人の清楚なメイドがいた。
「なんか……すごいものを頼んじゃったわね……」
リディルは自らの行為に、恐怖に近いものすらを覚えた。
「これはこれでいい……のかな?」
フレデリカにはまだためらいがあるようだが、ずっと鏡を見ている。
「オッパリオンでは長く異国の服を着るなどという試みはなかったが……まさかマーラ帝国の服を着るとは……これも時代の変化ということか……」
そんなことを言っているクライヴもメイド服を着た自身の姿に見蕩れていた。
「今度は銃を構えるポーズをやってみようよ!」
「こんなに布があれば小さい銃なら隠し持てるわね。機能性もいいということかしら」
フィルシュは関心していた。
「布がいっぱいで重いかと思ったけど、心地よさもあるわね。胸は少し窮屈だけど」
「そう? この締められてる感じもなんだか癖になりそうだよフレデリカ」
アナスタシアとフレデリカはそんな言葉を交わしている。
五人が鏡の前でそれぞれに感激していた、その時――。
「なにを騒いでいるんだ?」
部屋の扉が開き、突如レーナ隊長が姿を現した。
「レーナ隊長!?」
五人が一斉にそう呼ぶ。驚き固まる五人を見たレーナも固まる。
五人の脳裏によぎった言葉、それは――終わった、だった。親衛隊という名誉ある職に就けた期間、意外と短かったな、と。
「お、お、おまえたち……」
レーナは眉間を指で押さえるとぷるぷる震え出した。
「せっかく皇女殿下がくださった休息時間になにをしているかと思えば……」
「これは自分の発案です!」
リディルが前に名乗り出る。
「服を注文したのはわたしの独断です!」
リディルが姿勢を正し、敬礼して言う。すると、他の四人も敬礼して口々に叫ぶ。
「いえ!」
「リディルだけの責任ではありません!」
「着ようと言ったのはわたしたちです!」
「わたしも提案しました!」
「罰するなら全員です!」
「みんな……」
「まったく……親衛隊にあるまじき行為だが、その連帯感は親衛隊に相応しいものだ」
「た、隊長……」
リディルが声を震わせると、レーナはやれやれと言うように首を振った。
「もう気が済んだろう。アティルーン皇女殿下に見つかる前に着替えておけ」
「あら? 誰に見つかるのですか?」
「アティルーン皇女!?」
レーナは突然の声に振り返ると、そこにはアティルーンがいた。
レーナは迂闊だと思った。自分が立っていた場所のせいで扉は閉まらず、開けっぱなしになっていた。しかも隣はアティルーンの部屋だ。いつ皇女が来てもおかしい状況ではない。
レーナ思った――終わった、と。
「部下の失態はわたしの失態です!」
レーナは姿勢を正すと、アティルーンは不思議そうな顔をする。
「失態? 一体なにが……あら?」
アティルーンが部屋をのぞくと、親衛隊の五人はもはや為す術がなく、メイド服のまま敬礼するしかなかった。
「こ、この親衛隊にあるまじき行為はわたしの監督と指導の不足のいたすところで――」
「素敵ではありませんかっ」
「は、はい?」
アティルーンはパンッと手を打ち鳴らし、控え室に入る。
そして五人の前に行く。
「これは、リマさんのお召しを真似られたのですね」
「そ、そうです」
リディルが応じると、アティルーンはマジマジと服を眺める。
「五人も揃うとより一層の華やかさがありますね。マーラ星ではリマさんの活躍が報道されて、メイド人気が出ているそうです。オッパリオン皇宮でも、これに倣ってメイドを募ってみてはどうかという意見も出ているんですよ」
アティルーンはそう言いながら興味深そうに五人を眺める。
「し、しかし皇女殿下、仮にも皇女親衛隊ともあろうものたちが異国の衣服を着ているなどとは――」
「レーナ隊長、ここは公式の場ではないのですから、堅いことはいいではありませんか。そうだ、みなさんで記念撮影でもしましょう」
「アティルーン皇女殿下……。皇女殿下がそう仰るのなら」
「あら、レーナ隊長は着ないのですか?」
「わたしの分は――」
「あります」
「は?」
即答したリディルに、レーナは思わず真顔になる。
「リディル?」
「レーナ隊長の分も注文しておきました」
「おまえというやつは……変なところまで律儀だな」
「ふふふ、いいではないですか。わたしもメイドに囲まれたらどうなるのか、これでわかるというものです」
そう言うアティルーンもどこか気持ちが昂ぶっているように見えた。
「これがレーナ隊長の分です」
リディルがレーナに服を渡すと、レーナも小刻みに震える。
「わたしも……着るというのか……!?」
「着ましょうリディル隊長。なにごとも経験です。マーラ文化を知るのも悪くはないでしょう」
「わ、わかりました。少々お待ちください」
アティルーンにそう言われては、レーナも避けられることではなかった。
レーナはマントを脱ぎ、それからメイド服を着る。
「これからはオッパリオンも異星との交流が増えるでしょう。そうなれば、このように異国の服も流行るかもしれませんね」
朗らかにそう言うアティルーンを見て、リディルたちは安堵した。
「着ました」
レーナもメイド服を着ると、同じものを着ているというのに貫禄のようなものが感じられた。五人はさすがレーナ隊長だと心で思った。
「うん、みなさんよく似合っています。では記念写真を撮りましょう」
「皇女殿下、これを使ってください」
アティルーンが携帯端末を取り出すと、アナスタシアは部屋の隅にあった三脚を持ってきて、端末をセットする。
「ありがとうございますアナ。では撮りましょう。あとでリマさんにもお見せしないと」
そう言って撮った写真の数枚は、どれもみんなよい表情で撮れていた。
――後日、この写真をメンバーに共有する際、アティルーンが艦内転送を経由したことで全艦に知れ渡ってしまい、アーリア提督も目にすることになったが、このことを知ったアーリア提督は笑っていたとのことであった。
楽しい回だった・・・!!
やはり、色々なキャラの活躍、これ重要ですね。
次回もお楽しみに!!
桐生スケキヨ次回予告。
ラメルにミルアティルスとトリアルダが到着する。
ラメルでは会談を前に歓迎会が行われるようだが、なにやら不穏な気配が……!?




